買い物とか……
「お姉ちゃん、起きてー。」
幸の声で意識が少しだけ戻る。……眠い、寝たい。
「ん……もう少し……」
「ダメだよ、起きてー!」
「んむぅ……あと五分……お願い……」
昨日寝るの遅かったから……
「あーもー、お姉ちゃん可愛いなぁ! でも、起きなきゃダメ! 起きて!」
「うぅ……仕方ないなぁ、起きるよ……でも、なんで起きなきゃダメなの……?」
めっちゃ眠い……
「え、だってお姉ちゃんの服買いに行くんだもん。」
当たり前でしょ?とでも言いたげな顔で言う幸。
「……今から?」
「うん、今から。ご飯食べて。」
今、まだ8時だぞ? こんな早くから買い物って……
「……寝る。適当に買ってきて。」
休日なのに8時に起きるなんて嫌だ。二度寝したい。
「んーとね……それでもいいんだけど、そうすると、お母さんと光花お姉ちゃんが、すごいの買ってくるよ……?」
それは不味い。まともな俺の普段着が無くなってしまう。
「……行くか。」
仕方ない、と体を起こした時、
「あうっ!」
体に激痛が。
「ど、どうしたの!?」
「こ、これは……」
「これは……?」
そう……
「凄まじい筋肉痛……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
何故、こんな筋肉痛になったかを考える。
心当たりは……きっと、最高神にもらった飴だ。あんだけすごい身体能力発揮すれば、これだけの筋肉痛を引き起こしても分からなくはない。だけど、
「こうなること分かってて渡しやがったなあいつ……」
「あいつって?」
「最高神。あいつが身体能力上げてくれる飴くれたんだけど、そのせいで筋肉痛になったっぽい……」
「へぇー……だからあの時すごく早く動いてたんだ……」
「そーゆー事。しっかし、どうしよっかなー……」
相当酷い筋肉痛だ……これじゃ買い物なんか無理だ……そうすると俺の服が……
「とりあえず、神様の力の関係なら、直矢さん達に聞くのがいいんじゃない?」
「そうするか……悪いけど、呼んできてくれねえ?」
動けない……
「はーい。」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「呼んできたよー。」
幸が直矢と澄也、エディを連れて部屋に入ってくる。
「ありがとなー。」
「幸は朝御飯食べてくるね。」
部屋から出て行く幸。
「おう。」
「どうしたんだ?」
直矢が聞いてくる。どうやら幸に説明を受けてはいないらしい。
「それがさー……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「成る程な……あいつは本当に……」
直矢がため息をつく。
「大変ですねー……でも、直矢さん並の身体能力って……一回体験してみたいですね……」
「そうだねー、直矢並かぁ……凄まじいだろうなぁ……」
エディと澄也が言う。
「すごいよ、アレはホントに。」
ハンパなかった。
「てか、これなら直矢の得意分野じゃない?」
「そうだな。」
「え、何で?」
筋肉痛を和らげるのが得意分野……?
「俺は、いつも運動してるから、どこをマッサージするといいか、とか詳しいんだよ。」
「なるほどー。じゃ、お願いしていい?」
「いいぞ。じゃあ、痛いのはどこだ?」
「えーと……背中と二の腕、肩とふくらはぎと……まあ、このくらい。」
ほぼ全身。
「多いな……かなり痛むか?」
「うん、結構。」
「うーん……そうするとネクタルなんかを飲むのが一番いいんだが……酔うよな……よし。エディ、ネクタル取ってきてくれ。」
「はーい。」
エディが部屋を出て行く。
「直矢、ネクタルをどうするつもり?」
澄也がにやにやしながら聞く。
……何かあるのか?
「ん? 手に擦り込んでマッサージする。てか、なににやついてんだ。」
「……そうすると、直接マッサージしなきゃじゃない?」
「……あ。」
……なるほど。手に擦り込んでマッサージするなら俺の肌に直接擦り込まなきゃいけないワケだ。
てことは……
「楓ちゃん、脱がなきゃ。」
「……どうする?」
直矢が心底困った顔で聞いてくる。……女の子に直接肌にマッサージしてっつわれりゃそりゃ困るか。
「えーと……うん、いいよ、仕方ないし。マッサージお願い。」
「……おう……」
困ったように頬を掻く直矢。
「取ってきましたー。」
エディがネクタルの入った小瓶を持って戻って来た。早い。
「ありがとな。……ホントにいいのか?」
「うん。頼む。」
「はぁ……よし、悪いが全員出て行ってくれないか?」
照れくさいもんなー……
「はーい。」
「分かりましたー。」
「お、なんだ? 二人きりの密室でナニをする気だ?」
「死ね。」
「うごっ!?」
直矢が澄也を蹴る。
うわー、容赦ねぇなー……
「……で、ホントにいいのか?」
「大丈夫。直矢も気にしなくていいから。」
一応言っておく。気にしないわけがないが。
「お、おう……じゃ、脱いでもらっていいか……?」
「……ん。」
パジャマの上を脱ぐ。
……やっぱ超恥ずかしい……顔が火照る……
次は12日~




