節分の半分は優しさでできています
玉子に干瓢、胡瓜に椎茸、それと桜でんぶ。
祖母から教わった昔ながらの巻き寿司は、1歳の娘、環にはちょうどいい。
「初めての、環の恵方巻、っと」
――巻くときは、崩れないようさっとね。
祖母の言葉を思い出しながら手早く巻き簾を返す。
環の口に合わせ、通常の半分の細さに仕上げた。長さも半分にカットする。
興味津々に見ていた環が、覚えたての言葉で、
「はんぷんこ?」
「そうよ、半分こ」
半分こ、か。そういえば……
――『わたしの豆七つしかないよ。おばあちゃんいっぱいでいいなあ。ねぇ半分ちょうだい?』
祖母は笑って『はいはい、半分こね』と、ふっくらした手で私の升へ豆を移してくれた。その香ばしい粒をぽりぽりと噛みしめながら、祖母が恵方巻を作るのをじっと見ていたっけ。
今は九十半ばを超えて、施設に入所中の、表情も乏しくなってしまった祖母。
ふと、祖母がこの恵方巻を口にしたら、もう一度笑ってくれる気がした。
「環、ひいばあに会いに行こっか! 一緒に、恵方巻食べよう!」
風を切って進む自転車の籠で、恵方巻を入れた袋が軽やかな音を立てる。
環は冷たい北風にきゃっきゃとはしゃぐ。
施設が近づくにつれ、冷えきって痛いはずの私の耳は、じんじん、じんじん、と熱くなっていった。
(了)
今回の作品は、ショートショートというより、掌編です。
ふとしたワンシーンを切り取ったような作品になりました。
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