恋花粉
「見てよぉ春香! 私こんなに腫れちゃった」
日曜日の昼下がり、中学時代の友人咲がビデオ通話越しに嘆く。
目は潤み、瞼も頬も真赤。頭はぼうっとして胸も苦しいと言う。
「医者に行ったら重度の恋花粉症だって。ちょっと刺激強すぎちゃったねって」
そうかも。
咲は恋花粉症デビューした翌日に、咲の高校の先輩とつきあい始めたし。
恋に憧れる私は咲が羨ましい。
「私も早くデビューしたい、なんかコツとかある?」
咲はSNS情報だけどと教えてくれ、「かかったときは視界がピンク色になるからね」とはにかみ微笑んだ。
ちょうど恋花粉日和。
アドバイスに従って、初恋よろしくいそいそと前髪を上げ、アオハル代表の制服を着こみ、三月というのに自室の窓を開け放って外の空気を胸いっぱい吸い込む。
と、不意に向かいの家の窓が大きく開いた。
私の幼馴染、制服姿の颯太だ。
「うわ、何やってんだ?」
「べ、別にっ!」
久しぶりに交わすお互いの言葉は相変わらずのぶっきら棒。
もうじき窓枠に届きそうな少し大人びた颯太を見上げた瞬間、視界が色鮮やかなピンクに染まった。
(了)
今回は449字。
「初恋」は島崎藤村の「まだあげ初めし前髪の~」です。
すてきな詩ですよねえ(〃´∪`〃)
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真面目から不真面目までいろいろ書いてます。よかったら遊びに来てくださいね♪













