世界一しょぼいタイムスリップ
世界初のタイムスリップを成功させた研究者の時任は、時間旅行会社を起業。
それに目をつけた大手企業は同業会社を次々に設立し、「フランス革命を堪能する二泊三日の旅」などが富裕層に大人気となった。
しかし時任は大手の嫌がらせで資金難に。長い時間軸は大金がいる。
仕方なく数分から一日前後の時間軸で滞在時間も短い商品、
「忘れ物を取りに30分前へ!」
「抜き打ちテストある? 明日で確認!」
――などを提供した。小遣い程度の価格で需要はまあまあ。
だが業界からは「人類の夢のタイムスリップを開発したのにしょぼすぎ」と嘲られ、ひどく凹んだ時任は会社をたたむべきか悩んだ。
が、さんざん悩んだ結果「しょぼいからこそ良いのだ!」を合言葉に胸を張って仕事に邁進した。
その後世間ではタイムスリップ客のマナーの悪さから歴史干渉が深刻化し、大手企業は撤退。
一方、時任は大ヒットを連発。
「その合コン行くべきか見極めよう!」
「失言取り消せます!」
「別れ際に言えなかった想い届けませんか?」
結局は人々の暮らしに根差した商品が必要とされたのだ。
*
業界世界一の会社会長の時任が引退挨拶をしていると、ドアからそっと覗いているよくよく知る若い男に気がついた。
「最後に会社理念であるこの言葉を贈る」
時任は昔の自分を凝視した。
「しょぼいからこそ良いのだ!」
(了)
ショートショート面白いな、と思っていただけたら幸いです。
★やブックマークでの応援していただけたら嬉しいです(*´▽`*)
広告のさらに下の子猫のバナーにて、あき伽耶他作品にリンクできます。
真面目から不真面目までいろいろ書いてます。よかったら遊びに来てくださいね♪













