『こんなハズでは』 -すぐそこにある滅亡の危機-
本編が煮詰まってしまい、衝動で書いてしまった。
酷いです。
新産物である、江州畳、江州紙、江州瓦、小谷焼きを石寺や井ノ口に大々的に売り込みたい。
反応は、まちまちだが悪くは無いと思う。
小谷城下大谷市場や伊部・丁野の商人も「コイツはいける」と意気込んでいる。
「三上屋の反応も上々だな、友松」
「そうですね、これなら何とか軌道に乗りそうです。まああとは利権調整ですか?」
商人達との話合いも上々に終わり、俺と友松は意気揚々と雲雀丘の館に帰ってきた。
「お帰りなさいやし、若様!」
「雪風(愛馬)を頼んだ!!」
熊五郎に馬を預け、屋敷に入る。
「ん、えらく騒がしいな?」
「殿、茂吉が目通りを願いに来ています」と、勝太郎が嬉しい来客を告げる。
「そうか、茂吉が帰ってきたか~、すぐ会おう」
茂吉とは、浅井が抱える数少ない『忍者』だ。
とは言っても『貧相で目立たない普通のおっさん』である。
まあ少しばかり度胸があるのと、気が利いてるわりに辛抱強い。というぐらいか。
遠藤から紹介された時は、俺は『へっ?』と、あまりの驚きに間抜け顔をさらした。
「俺の『忍び』のイメージがああぁああっぁ。」
現実とはこんなもんだという事を知ってしまった。
……まあいい、茂吉には尾張へスカウトに行ってもらっていた。そう、あの『探偵さん』だ。
「良い人材が確保出来たかな?たのしみだ」
はやる気持ちからか、少しばかり小走り気味に接見の間に向かう。
そこには、茂吉とおっさん、おばちゃん連中がいた。
「えっ?」
『藤吉郎』は見当たらなかったとか。
『小竹』には、「田んぼがあるから」と、断られたようだ。
『前田』の人間は、こわくて引き抜けなかったらしい。
広間には、浅野長勝(32)、杉原定利(34)、杉原家定(15)、福(長勝夫人)朝日(家定夫人)が控えていた。
地味だ。
彼らは、下男下女とともに、近くの侍屋敷に入っているらしい。
仕事が早いな。
どうやら茂吉は、俺が指示した関係者に軒並み声を掛け、連れてきたらしい。
しまったぁ~っ、指示が曖昧すぎたか?
ヤレヤレ、本来の目的は達成出来ずか……。
できれば、秀吉、秀長、利家か慶次郎が欲しかった。まあ仕方がない、ズルしすぎだしな~。
それにしても、ずいぶんと奥が騒がしい、
「お雪、お~い、いったぃ……」
見慣れぬ女の子の姉妹がいる。
「ところで……、あの女の子達は誰ですか?」
「今日入ってきた足軽の娘と茂吉が拾った子だそうです」
少女達と戯れる祐子を横目にお雪が答える。
少女達は……、
寧々(11)、まつ(11)やや(9)、etcだった。
「え~と、なんだかな~」
『豊臣家、ジ.エンド?』
おいおい、これじゃあ秀吉の譜代となる身内がいなくなるぞ~。
いや、たぶん、秀吉は1560年の桶狭間の頃前後に寧々を見初めて、そして結婚して運気が上昇したはずだ。マズイ、太閤秀吉が誕生しないフラグが立つかも知れん微妙だ。
それに、まつはいかんでしょうまつは~、前田利家の許婚じゃないか~?拾って来だと~。
「も…も、茂吉~、お前は豊臣家を潰す気か~っ。うちでは飼えません、返してきなさ~い!!」
……、うわっ。
「夢か?」
恐ろしくリアルな夢だった、身体がイヤな汗でぐっしょりだ。
なんてこったい。
「俺が豊臣家を……、」
傍で寝ているお雪をおこさないように、そっと部屋を出て縁側で庭を眺める。
十六夜の月が西の空に白く輝いている。
「なんて夢を見たんだろう?俺が、豊臣家を滅亡させるという暗示か?」
ある意味イヤな夢だ。
自分が生き残る、浅井が生き残ることばかり考えて、他を無視していた。
仮に、俺が藤吉郎を雇ったらどうだろうか?
ダメだ、妄想ならばともかく、今の俺では彼の個性を生かすようなことは、出来ないかもしれない。
強烈な上昇志向がある藤吉郎は、信長みたいな者でないと使いこなせないだろう。
いま、雇っても家中に溝を拡げるだけだ。飼い殺しも無理だろう。
信長にしても、本当に俺が共闘が出来るのか?
仮に浅井勢が西美濃に進出したら…垂井か杭瀬川が限界点か?揖斐川以西は無理だな。
それ以上は、信長は敵対するだろうな。
道三の美濃譲り状が本当にあるかどうかは知らないが、信長は自分のモノと思っているだろう。
浅井が上洛経路を保証するとしても、流石に近江一国を浅井に渡しはしまい。
うかうかしていると食い殺されそうだ。
国替えで江北を離れるのは、……無理だ…国人領主の家臣団が壊滅してしまいそうだ。
やべ~っ。
……仮に、まだ勢力が弱い織田家を潰すとしたら…う~ん……
日本の歴史が変わりすぎて、無茶苦茶になりそうだ。
世界中を相手に戦う気力など俺にはないぞ。
ダメだ!どうすれば良いのかまるで見当がつかない。
歴史を変えてしまえば、その時点で歴史を知るアドバンテージはかなり減少するというか、
ヘタに知識に惑わされると命取りだな。
大変なことになった。これは、対策を立てねばならないな……。どうする俺?
気がつけば、俺は縁側で寝ていた。
風を引いてしまって、つらいよ。
なんだかんだ言って、
新九郎には、豊臣家を滅ぼすことは出来ないようです。
リアルは残酷なまでに厳しいです。
先のことを考えすぎて、足元がお留守になりそうですね。




