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信長との出会い

尾張に話が飛びます

1549年


「景直様、どうして尾張に来たのですか?」


「引き抜きがメインだね。」


景直は口にお団子を放りながら、護衛明智光秀に答えた。


「家臣ならば、家中から迎え入れる事が出来ますが.....。」


光秀の指摘は最もである。朝倉家には多くの家臣団がいる。そして、現朝倉家当主は景直の兄であるから彼に頼めば、簡単に家臣を得ることが可能である。次男であるが直系だから有能な人材を得る権利は保有しているのだ。


「わかってないね〜。昔ながらの体質の家臣を朝倉景直四天王や十本槍に加えたくないのさ。ああ、もちろん光秀と一益は四天王だよ。」


朝倉景直四天王、十本槍を持つために尾張まで来たのだ。織田信長家臣団や徳川家康家臣団などを引き抜き、後の朝倉景直軍の指揮官に抜擢しようとしている。まだ、桶狭間の合戦で家臣から支持を得られていない今の織田家嫡男に不満が溜まっていると有能な人材は簡単に朝倉家当主実弟の家臣となるだろう。


織田信秀が存命しているから家臣達の心は尾張にあるかもしれない。しかし、織田信長の家臣に任命された者は大層不満があるはずだ。尾張の大うつけ、それが今の信長の別名だ。景直の別名、越前の猫よりの方がよっぽどマシに思える。


一応、景直は奇行な行動は目立つ所でしていないからだろう。反対に信長は堂々と恥ずに行っている。景直は記憶が戻っていなくとも、性格や行動パターンが前世とソックリであったから好奇心があっても周囲の目を気にして、コソコソと行っていたから多くの者は知らない。景直はいつも忽然と消え、気付いたらいる存在なのだ。


「有り難き幸せ。.....それで.....、滝川殿に織田家内部を探らせているにですな。」


そう、護衛滝川一益は現在織田家内部を探っているから景直の隣に光秀しかいなかった。景直は文官を引き抜こうと考えていたのだ。四天王は武官が二人、文官が二人であるべきだと感じ、明智光秀、滝川一益が武官と見なされる立場にいるから文官が残りの二人となるのだ。


景直は気付いていないだろうが、1548年に史実で名の知れる武士の20歳以上の者が限りなく少ないことに。この年代はよくて10代悪くて、幼子であるのだ。徳川四天王や織田家臣団はまだまだ幼いから、一益が見つける事は困難を極めるだろう。


【余裕で武将なんて見つかるだろう。】


景直の考えは現実になる事が難しい。景直が有能な人材を得ようと尾張に深く介入すると大きな問題へ巻き込まれてしまうからだ。


尾張には大うつけと呼ばれる問題児とそれを大いに嫌う弟の当人同士の亀裂とそれぞれを持ち上げ争う家臣団同士の派閥闘争が水面下で起こっている。織田信秀がいるから、大きな荒波とならないのだ。だが、織田信秀は1551年に没する。史実同様、信長、信行の兄弟対決の尾張織田家の御家騒動が発生するのかもしれない。


「おう!尾張なんて小国だから大丈夫!」


景直が言った言葉に馬に乗る少年が反応した。


「あの〜お客様。そろそろ逃げたものがいいよ。ほーら、尾張の大うつけ様がこちらに向かって来ているよ。」


容器を取りに来た店員が織田家の暴言を吐いている景直に注意を促した。景直は店員が見る視線の先へと目を動かした。


そこには、馬に乗り山賊かと見なされる腰に豹柄の羽織を巻き付けチョンマゲの少年が向かっていた。道行く人々が彼を避けるように歩く為、景直までの道が出来上がっている。


短髪で着物と袴を着用している何処かの武士を漂わせる景直であったが、腰に刀がなかった。刀でなく、木刀を腰に携帯していた。木刀ならば、そこら辺に置き忘れても大した問題とならないから通常は木刀が景直の愛刀である。護衛の明智光秀と滝川一益は刀を持っているし、外出時に何方かが景直と行動を共にしているから問題なかった。


「光秀、目の前に立たないで。前が見えない。」


「景直様、私は景直様の護衛です。」


「いいの、二度と見る事もない顔かもしれないよ。ヤバイと思ったら任せるよ。」


景直の前に立ち護衛の働きをした光秀であったが、景直が信長を見れないため止められた。光秀の判断で危険とみなしたら抜刀の許可が得られたこともあり、光秀は景直の横に移動した。


大国越前朝倉家直系だから出来る提案であった。例え、信長を殺してしまっても尾張織田家に朝倉家を滅ぼす手段は皆無であるからだ。


「話は終わったか?」


「えーと、どちら様?尾張に知り合いはいないけど。」


「尾張織田信秀の嫡男、織田信長である!貴様の名は?」


「越前朝倉孝景の次男、朝倉景直。」


二人の若い少年の名乗り出に多くの見物人達はひどく驚いた。馬に乗る少年が織田信長、尾張の大うつけだと知っていたが、座って団子を食べている少年が大国越前朝倉景直、越前の猫と知ったからだ。


雲の上の人が目の前で団子を食べている事と、尾張の大うつけ信長と同じ種類の人間がいた事に驚いているのだ。しかし、朝倉と織田では様々なことが違う。朝倉は越前の列記とした大名であるが、織田は尾張の守護大名斯波氏の家臣。信長は嫡男、景直は次男、同じ種類の人間だとしても次男の直義ならば大きな問題とならないのだ。嫡男の信長は周りの信用を得らなければならない立場なのだ。


二人の名乗り出に光秀は泡を吐いて失神しそうであった。斬ってよいと許可をもらった相手が尾張の事実上支配者織田信秀の嫡男、織田信長。たとえ相手に非があったとしてもここ尾張で斬ってしまえば、主君朝倉景直が無事に越前へ戻れる保障はないと思っていた。ことは穏便かつ慎重に済ませるべきだと思っていたのにこちらも名乗り出をしてしまった。相手にこちらの身柄がわかってしまったのだ。


「であるか!して、ここ尾張に朝倉が何の用じゃ。」


「観光だよ。実家は寒いから温暖な尾張に住める君が羨ましいよ。」


「そうであろう!尾張は肥沃な大地があり、尚且つ住みやすい気候でもあるのだ!!ぬはははは!!!!」


景直の言葉に大変満足したのか信長の機嫌はうなぎのぼりによくなった。尾張の大うつけと呼ばれ周りから避けられて誰からも羨ましがられることがなかった。そもそも、信長を認めてくれる存在は父親である織田信秀しかいなかった。教育係の平手政秀も信長のよき理解者であったが称賛してくれる存在ではなかった。故に自己承認欲求が激しくなり、暴走してしまったのだろう。


そんな中、景直の言葉は純粋で信長が求めていたものであった。1533年誕生の直義と信長。同世代の偏見を持たない人は初めてだったのだろう。信長の家臣となった者にはどこかしら遠慮があったから純粋な言葉として受け取れずにいた。立場の違いからも友と呼べる存在は限りなく少ない。


しかし、景直の場合、立場の問題は全くない。素直に心の思いを打ち明けられる可能性がある友に出会えたからだろう。


[こんな奴が、本当に今川義元を桶狭間の合戦で破るのかね?心配になってきた。]


単純な思考回路しか持たない自己承認欲求が強い人物であると景直は見抜いていた。15歳ぐらいのお年頃だと馬鹿なことをやったりして周りからの注目が得られることで自分の存在の確認をする年齢だと改めて認識していた。


前世の中学時代の時、友人たちが女子の注目を得ようと大人になってアホらしく感じることを平気でやっていた記憶に辿り着いたからだ。信長もそれと似たような行動だろう。


一応、織田家が桶狭間の合戦で勝利しなければ、朝倉家の滅亡は回避できるかもしれないけど、ある程度未来がわかっている状態でこれからの対策をしていくという考えを根本的に見直す必要があるからだ。


「そうだ!最近、儂に妹ができたんじゃ!!たいへんかわいいぞ!」


「へー、名前はなんて言うの?」


上機嫌な信長は明らかに興味がなさそうな受け答えをしている景直が眼中にない様子だ。


「市じゃ!名は市姫じゃ!!」


「ふーん、えっ!市姫って、お市の方ぁぁぁ!!!行きます!会わせてください!!!」


「お、お市の方だとぉぉぉ!!!誰が貴様の嫁にやると言ったぁぁ!!」


お市の方という呼び方が誰かの妻となった女性を意味することもあるから信長が大声で否定しているのであった。絶世の美女と後世でも有名な彼女を一目見るまたとない機会である、史実通り織田家と朝倉家が敵対してしまうともう見られないかもしれない。


お市は織田信秀正妻土田御膳の実子として1547年に誕生したとされてる。史実では北近江浅井家と織田家の同盟関係構築の為に浅井家に嫁いでしまうから、景直が直接に見ることはこれが最初で最後のチャンスだろう。ただし、市姫はまだ1歳の赤子であるが。


「いや、14年後には嫁がせるに十分すぎる人物になっているかもしれないだろう。」


「ならん!14年あれば、儂は尾張、美濃、三河の当主になれるわい!越前に縮か籠っている朝倉より大国になる!」


「おいおい、美濃は織田家の同盟国だろう?ましてや、市姫を美濃へ嫁がせることは越前朝倉が織田家の敵になることだからな!」


尾張と美濃は同盟中なのだ。だから、美濃を領有すること事態がおかしなことであり、同盟国に侵攻すると以降の他国との協定や同盟が締結しにくくなる危険性がある。他国が織田家の破棄を疑い中々交渉のテーブルに座ろうとしないだろう。誰だって平気で約束を破る人物を信用したくないはずだ。


「同盟国だが儂は後に貰い受ける。そもそも、美濃斉藤家なんぞに市はやらん。しかし、なぜそこまで市に拘る?」


信長の目が鋭くなった。織田家内部に朝倉家との内通者がいなければ、名前を聞いただけで過剰に反応しない。何らかの情報を得ているからこそ過剰反応したのだと。尾張の大うつけと呼ばれていても、史実で数々の猛者どもを打倒してきた織田信長の観察眼は侮れないかった。


信長は朝倉への内通者の把握をしておかねばならない。朝倉家の内通者を殺してしまい、朝倉家の対織田家感情が悪化しても今は対応できないからだ。


「尾張の大うつけとされる織田信長が褒める妹に会ってみたいと思うのは不自然かな?」


「であるか!朝倉宗滴が認める人物という父上の言葉は強ち間違いでないらしいな。」


「じいさんどもの戯言を信じるなんてまだまだだね。結論は自分で導くものさ。」


「やはり、儂の友となれる者じゃ!明日、那古屋城にこい!市をみせてやるわい!!」


信長は満足そうに去っていった。周りの見物人も面白いものが見れたと散らばっていった。



「護衛は増やしますか?」


光秀が景直に聞いた。明日、那古屋城に行くことを否定しないのは長い付き合いだからどんなに説得しても景直が曲げようとしないことをわかっていたからだ。光秀と一益の二人だけの護衛で他国の城へ乗り込むことが危険と思える考えためだ。


「護衛は光秀と一益だけで十分だよ。信長は何もしてこないさ。それに、俺の逃げ足について来れるのは二人だけでしょ。」


「それもそうですね。彼は朝倉家とのありもしない友好関係を織田家中に知らしめるつもりだと推測できます。織田家の派閥の均衡が崩れるやもしれません。」


「織田家の内部なんて興味ないよ。城内に入れば、一益からの候補の人材を抜き打ちでチェックできる機会があるだろう。」


信長が景直の那古野城訪問をアッサリと許可したのは信長に利となる事があると考えられる。第一に家中を掌握しきれているとは言い難たい状況の打破が目的と思える。尾張の大うつけと呼ばれているが、ただのうつけでないと一度思わせる事が出来れば、よいと信長は思っているのだろう。


対立派閥の勢力ダウンが目的ならその目論見に加担してやろうと景直は言っているのだ。ただで協力するわけにはいかない。対立派閥の中でも有能な人材を朝倉景直の家臣として迎え入れようと考えてもいる。


織田信秀がまだいるからどこまで出来るかわからないが、城内に堂々と入れるチャンスを逃すことは惜しい。それに、景直は魔王と恐れられる信長とある程度親しくなれば、朝倉家滅亡後も死罪だけは勘弁してくれると思ってもいた。


「今川家の忍が信長との話を聞いていましょう。今川家の積極的な尾張侵攻が開始されると思われます。」


「まさか、俺と市姫の結婚を回避するためか?おいおい、今川家がそこまで敏感か?一応、三河、遠江、駿河を統治する朝倉よりも大国だぞ。」


「15年後はどうでしょうか?朝倉家が近江、若狭を支配していれば、尾張織田家、美濃斎藤家の三国同盟で今川家に対抗する事は十分脅威をなりえます。」


「今川家の上洛が更に遠退く訳か......。」


「はい。そうなります。」


明智光秀が考える朝倉斎藤織田三国同盟が現実となれば、日本の中央を抑える巨大な勢力となり今川家の上洛を阻むだろう。


「その逆もありだな。織田が今川家に滅ぼされる前に市姫を側室に迎える。そうすれば、正妻の枠は政略結婚に使えるだろう。」


「しかし、今川家が巨大なになります。」


「大丈夫だって、その時は朝倉家が畿内の覇者になっているから。」





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