61話 進むしか
-----(清見視点)-----
腕に抱えていたポヨン君がビヨンビヨンと腕の中で動いた。
何かを、敵を、探知したんだと思う。
ノッポリン(高身長ゴブリン)が出た時も、腕ウータンや裸ゴリラの時も教えてくれた。
「3佐、何か来ます。たぶん……ですが」
「清見君? 何かとは?」
「清みん、ポヨンさんが何か察知したのか?」
「そうみたい」
「全員、大島君のボックス内へ!」
3佐が素早く指示を出した。
俺達は壁側に寄ってから静かに立ち止まって様子を伺った。
遠くから、微かに響く音がする。
「こちらへ向かってくる感じではありませんね。どこかで戦っているのか……」
「魔物同士で? 仲間割れか?」
「いや、地上でも同種で食い合ったりとかありましたよ」
「そうでしたな。人間を狙い木から降りてきても魔物同士でやりあってましたね」
「……さっきのノッポリンとか二本足の猿系は、俺達がターゲットだった?」
「仲間割れする前にポヨン氏達が倒してしまわれましたから。そうでなければゴブリンやゴリラで揉めたかもしれませんよ」
「そっか……」
「とりあえず、静かに先へ進んでみませんか? 今度は何が戦っているのか、確認だけしてから引き返しましょう。そろそろリポップしているかもしれない」
4人が密着した状態で壁沿いに通路を進む。通路の洞窟はだんだんと天井が高くなり広くなってきた。
「嫌な感じがするな」
「ですね。広いと言う事は魔物の大きさもそれなりかもしれませんからね」
「大きい魔物……」
「清みん。ここでマンモスをテイムしても上には連れて帰れないからな」
大島氏に心を読まれた! 広い空間ならもしかしてマンモスサイズの魔物が居るかもと思い浮かべたとこだったのだ。
3佐からストップのハンドサインが出た。
手のひらをパッと開いたやつ。大島氏も止まったのでたぶん、当たってると思う。
先の空間からドカンドカンと何かが壁にぶつかる音がする。その度に地面が揺れた。そんなに暴れたら地下3階に落ちるんじゃないか?
薄暗かった空間が一瞬明るく照らし出された。大きな炎が壁に当たったのだ。
そこに居たのは巨大な塊。4本足の獣だった。
この地下2階層は『二本足の魔物の階層』と勝手に決めつけていた。違かった。
マンモスに似てる。いや、そこまでマンモスの知識はない。大きさはマンモスだが、ゾウよりも豚に似ている。体毛がある!
『薄毛の階層』と決めつけていたのも誤りだった。毛がある。
壁沿いで燃えているのは痩せゴリラか? 今まで見た痩せゴリラの中でも一番の大きさだ。
てか、この通路で見た痩せゴリラは2体しかいない。身長は3mくらいだった。あそこで燃えているのはもっと大きいやつだと思う。
ドガンッ!
燃えているゴリラから目を離して大きな音がした方へ目をやると、そこでは頭を突き合わせたマンモス……豚?がいた。
口から火がチロチロと出ている。
こいつ、火を吹くやつだ。
ドガン!ドガン!
ぶつかり合っているマンモ……豚は、一頭が体長10mくらいありそうで、もう一頭がそれより小さめだ。
同種同士でのぶつかり合いだ。薄暗さに目が慣れてくると、その広場には他にもマンモ豚が何体もいた。
2頭より小さめだが横からぶつかっていっては弾き飛ばされている。その度に洞窟が揺れる。
何、ぶつかり稽古? ここはマンモ豚の相撲の稽古場?
「まずいですね。ここから離れましょう」
「かなりやばい場所だな。壁沿いににかなりの数がいるぞ」
ドガガガガガガガっ!ドガン!
中央の2頭がぶつかるたびに、周りにいた小振りマンモ豚が狂ったように壁や仲間とぶつかりあう。
混乱しすぎでしょう。
「急いで離れましょう! こっちにも来る!」
3佐は俺よりもっと見えているのだろう。大島氏と3佐に腕を取られて走り出した。
が、その時、ダンプに弾き飛ばされた。大島氏のボックス内でなかったら即死していたと思う。
そして大島氏のボックスごと俺らを弾き飛ばしたのは巨大なダンプ……じゃなかったマンモ豚だった。
しかも、通路の先、少し狭くなったところでそのマンモ豚が嵌まっていた。
「だ、大丈夫、か」
「大丈夫ですか……、清見君」
「いたたた……」
俺は飛ばされる時は大島氏に抱きつくくせがついていたので何とか無事だった。
大島氏のボックスごと飛ばされたのは3佐と俺のふたり。自衛官はあっちの壁沿いに腰を抜かしたように座り込んでいたが怪我はないようだった。
「通路に栓をされたな」
大島氏の言葉に通路の先を見るとマンモ豚の尻があった。近くで見ると大きいな。でも尻尾はかわいいな。
もがいているが通路は先に行くほど狭くなるのだ。後ろに下がらない限りは抜けないぞ?
「こっちにこれるか」
3佐が自衛官を小声で呼ぶが首を横にふった。もしかして怪我をしているのだろうか。
「清みん、立てるか? あっちへ移動するぞ?」
大島氏に腕を引かれて、3佐の合図で通路の向かい側へと走り、自衛官と合流をした、その瞬間。
大きな炎の塊が、俺らの横を通り過ぎてマンモ豚の尻に直撃した。
ゴォォォォ
ギギャアアア
尻を焼かれたマンモ豚の断末魔。いや、死んだかはわからない、けど酷いな。通路にはまって抜けない尻に火をつけるなんて。悪魔かっ!
広場から、口からプスプスと黒い煙を出しながらニヤリとしたマンモ豚が顔を出していた。(ニヤリとは俺の私観だ)
「お、お、大島氏の、の、ボックスって、物理攻撃だけでなくて魔法攻撃も防げる? 火魔法防げる? 俺達丸こげ……」
「清みん、落ち着け」
「清見君、大丈夫だと思いますよ。こんな近くであの量の炎がすぐ横を通り過ぎてもさほど熱さを感じませんでしたから」
「ああ。だが、完全にロックオンされたな」
うわぁぁぁ、あのニヤリ、今度はこっちを見てニヤってやがる。
あれ?あいつって2番目に大きいやつだ。ってことは通路に尻を突っ込んでいるのが一番大きかったやつか。
「全員、立って俺の防御内にしっかり入ってください!」
怪我をしていると思った自衛官がスッと立ち上がった。炎の攻撃が来るかと思ったが、広場中から他のマンモ豚が炎攻撃をそいつに当てたようで、ブギャアとか叫び、振り返って広場の中へと突入していった。
中では阿鼻叫喚の大混戦が起こっていた。
大中小様々なサイズのマンモ豚、そこに二本足の薄毛猿も混入しての大混乱。
「この隙に逃げたいが通路が塞がっている」
「清みん、ポヨン氏らにアレを食ってもらえないか」
「そっかそか。ポヨン君! あれ食べれる? みんなも、アレ食べちゃって!」
「通路が開いたらそこの広場の魔物達がどっと出てきますね。どうしましょうか」
「どこかに隠れて数が減るのを待ちたいな。減ったところでポヨン氏らに片づけてもらいたいんだが」
「身を隠す場所か……」
「あ、大島氏のボックススキルで、フンッとやって壁に穴掘れない?」
「ええっ? いや、どうだろう。浅い穴は作った事はあるけど大きな穴は」
「4人が身を隠せる程度でいいです」




