51話 迷宮(の、上)
-----(大島視点)-----
「ここが迷宮の地上部ですね」
絹田3佐がそう言いながら持っていた地図に何かを書き込む。
隊員達はロープを張り穴へと降りていく。
直径5メートルほどに広がった穴を隅々まで調べるようだ。特に壁の部分をペタペタと触っている。
もしもここが迷宮の真上なら迷宮への入口が隠されているかもしれないからだ。
俺と清みんは穴へは降りずに崖の淵に居た。元々俺達は清みんのテイム目的で森に来たのだ。ここに居てもしかたがない。
3佐に声をかけて移動しようと思ったその時。
「大島氏、俺らも下へ行ってみない?」
いつもは後ろ向きの清みんが珍しい。
「迷宮の地上層に近い部分の魔物の強さをみたい。ポヨンさん達の力と比べたい」
『主、俺ら瞬殺しますよ?』
「で? 本音は?」
「虫の居ない場所で少し休ませて」
なるほど。それが本音か。
「自衛隊はこの後どうされる予定ですか? 迷宮の地上部の位置の確認をして避難所に戻られますか」
「踏破されていない迷宮と聞いています。確認のために中へ入る予定です。進めるところまで進み、迷宮通路の地図も作成出来ればと思っています」
「なるほど。では途中までご一緒させてもらおうか、清みん」
隊員のコアラパンダのイチロー、ジローを地上部の警戒に残した。いつの間に食事を終えたのか、シローとゴローも来ていた。
サブロー以下3体を連れて通路に入る隊員の後ろについて俺と清みんも進む。
この世界の迷宮は、地下100mあたりの魔物が一番弱いらしい。なので、通路や都市はだいたいそのあたりの階層に造られるそうだ。
どういう理屈かはわからないが、そこから下へ行くほど魔物は強くなる。それはゲームや小説でもありがちな設定だ。
しかしこの世界はそれだけでない。そこから上へ行くのも何故か魔物が強くなるそうなのだ。意味不明だな。
「大島氏。この世界の魔物ってさ、上に行くほど強くなって地上では激強になるって言ってたじゃん? それって地上にはパワーアップさせる魔力みたいなのが溢れているのかな。って事はさ、俺らが地上で暮らしていると俺らが最強なっちゃたりするかな」
「そうだなー。なるかもなー」
「大丈夫、俺はわかってる。最強になるかもしれないけど、頭から触覚が生えたり目や手が増えたりするんだぜ、きっと」
「そうかもなー」
いい加減な返事をしていたが、清みんの言葉を噛み砕いて想像したら、確かにそれもありうると納得させられた。この世界の昆虫や獣がそれを物語っている気がした。
小さいサイズ、地球っぽい見た目のものから、サイズアップしているやつ、変形しているやつなど。元からソレで生まれたのか、それとも地上で、その何かを浴びてそうなったのか。
「怖いね。早くニッポンへ戻りたいね」
清みんが言ったにっぽんははたして『ニッポン』だったのか『日本』だったのか。いや、押入れと書いてにっぽんと読むのかも知れない。




