50話 クレーター
-----(大島視点)-----
森の中にぽっかりと広がる木のない広場。足場は乾いた土と石だ。
中央へ向かうごとに地面は緩やかな斜面となり下っている。
清みんがスタスタと進み、中央あたりでしゃがみ込む。
「ねえ、大島氏! 変な形の石がある!」
「待て待て待て! 触るな押すな! 振りじゃないぞ! 清みん、下がれ、こっち来いっ!」
「え……」
振り向きながら立ち上がった清みんの腕を素早く引いて、そこから離れる。
中央を見るが、特に何も起こらない。だが、ゆっくりと後ろへと下がる。
「何? どしたの? 何かあった?」
「はぁぁぁ。…………未知の物には迂闊に触るな、危険だ。……その変な石に触れたのか?」
「あ、そか。ええと、大島氏に声かけられたのでまだ触ってない。そうだった。石の下にスライムとか居るんだっけ」
良かった、触れる前か。いや、スライムよりも変な石に触れて何が起こるかわからない、そっちの方が怖い。
「地雷のスイッチって事もあるし、押したらボス戦が始まるとか、別の場所に転移する、なんて事があるかもしれないからな」
「ひええええ、押さなくて良かった……。ボス戦とかひとり転移とか絶対嫌だ。あ、ポヨン君ポヨン君! 頭に戻ってて!」
清みんが慌てて花笠を被り直した。そこにポヨン氏がおさまる。
いや、ポヨン氏が一緒なら転移しても大丈夫とかではないからな。
ガサガサガサ
突然、森から草木をかき分ける音がした。俺は慌てて自分のボックス内に清みんを入れる。
すると森から出てきたのはコアラパンダを連れた自衛隊の一団だった。
迷宮の位置を確認に行ったんだよな? 俺たちも同じ方向へ来てしまっていたのか。
「大島君、清見君……、どうしてここへ?」
「すみません。清みんの魔獣テイムをするために森に入ったんですが、方向がかち合ってしまいましたね。迷宮はみつかりましたか?」
「いえ、まだです。この辺りのはずなんですが……」
「あ、じゃあ、さっきのアレ、迷宮の目印かな」
「さっきのアレとは? この近くでそれらしい物が発見されましたか?」
「その緩やかな地面を降りた先に清みんが変な石を見つけたと、ただ危険なので今下がったところでした」
遠目だとよく見えない。ただの石が転がった地面だ。
「清見君、何を発見されたのですか?」
「あ、その、ここを下った中央の地面に、窪みがあって、その中に四角い石が飛び出てたんです。小さいから近くに行かないと見えないかも。まるでボタンみたいで、それで大島氏が、そのボタンを押したら危険かもって」
「なるほど」
絹田3佐と自衛官がひとり、坂の中央まで降りていく。俺たちは草の生えている地面まで下がった。
少しして3佐達が戻ってきた。
「確かに不自然なくらい形の整った石ですね」
「アレ見たら押したくなりますよね。プツンって」
「ただの石かもしれない。けど、押したら何かが起こるかもしれない」
3佐がしばらく考え込んでいる。
「ここが迷宮の地上であるのは間違いないと思います。あの石がただの石なのか、それとも何らかのスイッチなのか」
「スイッチだとしたら、押したら何が起こるのでしょう。デスエまで聞きに戻るべきか」
「あの……押して、みちゃいません? デスエの人に聞いても地下に住んでいるんだから地上のボタンの事は知らないかも。ここは思い切ってプツンと」
「なら、自分が、サブローに押させます!」
コアラパンダ持ちの隊員が声を上げてくれた。人間よりも強いコアラパンダだ。何かあっても人間よりサブローの方が危険は少ないかもしれない。
「サブロー、あの穴の中の石を押してくれ」
隊員が指示を出すとサブローは地面を下り、真っ直ぐに中央へ近づきしゃがみ込んだ。
ここからは見えないけど、おそらく穴に指を突っ込み石を押しているのだろう。
すると、地面が揺れ始める。震度1にも満たない揺れからどんどんと大きく揺れる。
「戻れっ、サブロー!」
隊員がサブローに声をかけた瞬間、サブローが視界から消えた。
「……瞬間、移動?」
清みんがボソリと呟いた。
「いや、穴に落ちた」
3佐が清みんに真実をスルッと告げた。
揺れがおさまり、地面が崩れないか気をつけながら中央へと進んでいった。
中央には直径3メートルほどの穴が空いていた。
「っと、少し下がった方がいい。まだこの辺は崩れやすい」
穴に近づいていた隊員が地面を踏み抜き崩れかける地面を避けながらも、後退してくる。
隊員達がそこらで拾ってきた太い枝で地面を叩きまわる。中央の穴が直径5メートルくらいの大きさに拡がったところで、地面の硬さは安定したようだ。
穴の深さは5〜6メートルくらいだろうか、3階から下を見下ろしたくらいの高さだった。
最初の崩落で落ちたサブローもピンピンしている。それどころか自力で壁に爪を立てて上がってきた。
隊員が怪我を確認している。
「ここが迷宮の地上部ですね」




