31話 重量
-----(大島視点)-----
方向だけを頼りに夜通し森を突っ切っている。
少しだけ森が薄明るくなった気がした。夜があけてきたのか。そう思った頃にようやく、部隊と合流出来た。
心配をしていたが、向こうは何もなく待機出来ていたようだ。俺たちが仏間を引いてくる音が聞こえ、魔虫が騒ぎ始めた時は少しだけ恐怖を覚えたそうだ。
しかし、清みんのスライム達がこの辺りの魔虫を蹴散らしたので、現在は安全だ。
待機していた隊員達が持っていた救助物資を仏間に運び込んでいる間、俺たち4人は仮眠をさせてもらった。夜通し移動していたからな。とは言え3時間だ。
仏間の隅に転がって寝ていたが2時間くらいで目が覚めると自衛官ふたりは既に起きて作業に参加していた。
清みんは熟睡中だ。本当なら8時間くらい寝かせてやりたいとこだな。
ポヨン氏は相変わらず清みんの腹の上で寝ている。仲がいいな。
再び寝る気にはなれず、清みんの横で軽くストレッチをした。その間荷物は仏間に運び入れられていた。自衛官達が背負っていた荷物は全て仏間に収納できたようだ。
仏間には荷物がみっちりと詰められているが、はたして清みんが持ち運べるのだろうか。
幸せそうな寝顔の清みんにエールおくった。
「頑張れー」
3佐が仏間へと上がってきた。清みんが起こされて寝惚けている。
「清見君、もうすぐ出発です。その前に仏間の持ち運びの検証をお願いします」
「え、あ? え、朝ごはん? アレ? 食べたっけ? 今日は何ご飯?」
「ははは。顔を洗ってさっぱりしてきてくださいと言いたいところですが、水は貴重ですので水場がみつかるまでは洗顔は我慢をお願いします」
キョロキョロと周り見回してようやく目が覚めた清みんは、ポヨン氏を抱えて仏間から出た。3佐促されて仏間の角へと移動している。
荷物が詰まりかなりの重量級となった仏間を運べるかの検証だ。
仏間の柱に取り付けられた取手を掴み数歩移動する清みん。どうやら普通に動かせたようだ。
自衛官のひとりが仏間の屋根の部分へと上がった。
例の実験だな。
『仏間は中に人が居ると動かせないが、外、屋根ではどうだろう』
自衛官が仏間の上から合図を出す。
清みんがどこか荒んだ顔を俯かせたままで柱を掴んで引く。
掴んで引く。
「んー、むぅぅ、重いんですけど!」
力んだせいで顔が真っ赤になっている。
嘘ではなくちゃんと引いたんだ。嘘のつけない清みんらしいな。
もしも引けたら皆を乗せてひとりで引いて歩かないとならないのに。
いや、自衛隊がそんな事をさせるわけないか。
もし動かせたとしてもきっと清みんと一緒に歩くはずだ。有事の際に民間人を乗せて移動出来るかを知るためだろう。
「ふぅ、はぁ。ごめんなさい、無理っぽい」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
「…………あの、ここに、居る人で……1番軽い人、に、もっかいお願いしても、いいですか」
何だ? どうした、清みん。いつになくやる気だな。
「その……何か、動きそうで動かないって言うか、重いっていうか……」
「それって……」
仏間……空間スキルは『人が乗ったら動かない』ではなく、もしかして『重いから動かせない』だったのか?
つまり軽ければ……。
「軽い……痩せているのは瀬古か上村か、お前ら体重は何キロだ」
「自分は先日の病院での健診で59.8でありました」
「自分は先週ですが57.2でした」
見た感じ55キロないように見えるが流石は自衛隊、筋肉はある細マッチョなのか。清みんは50キロ無いんじゃないか?
「えと、じゃあ、57の人乗ってもらっていいですか?」
絹田3佐や自衛官達も清みんの言いたいことが何となくわかったようだ。
清みんがウンウンと唸りながら柱の布を掴んで引く。
「すみません、誰か……一緒に引っ張って……」
近くにいた自衛官が清みんが持ってた柱の上の部分の柱を掴んで引いた。
ズズズっ
僅かだが動いた!
「おおお」
「動いたぞ」
「上なら乗っても引けるのか」
「でもこの距離しか進まないなら引く意味あるか」
清みんが息を切らして座り込んでいる。
「はぁはぁ、あの、はぁ、あの、俺、60キロの、荷物、持てないです」
清みんが切らした息のまま一生懸命話し出すと騒がしかった自衛官達が静かに耳を傾けた。
「えと、えと、はぁはぁ、仏間だけ、なら、重さ感じないです。けど人が乗ると、たぶん、体重分の、重さ、重いです」
「つまり、空間スキルは人が乗ると動かないんじゃなくて、人の体重は感じてしまうって事か」
「もしかすると屋根でなく、中でも引けますか?」
「ま、まって、もう、力出ない、待って」
「わかった。清みんはちょっと休め。瀬古さん? 上村さん? どっちかわかりませんが仏間の中に入ってもらえますか?」
「上村、お前が中に。瀬古は降りてこい」
「それから自衛官のかた数名は仏間の前部分でどこかを掴んで一緒に引いてもらえますか? 清みん、ちょっと立てるか? 柱に寄りかかっていいから柱を掴んで少しだけ歩いてみて」
「うえぇぇ、はい。ふぅ、はぁ」
流石は自衛官、清みんが立ち上がる間に皆がスタンバイしていた。




