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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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あの人からアドバイスを

 用意された料理と酒を残らず平らげる頃には、殆どの者が満たされ、酔い潰れてしまっていた。


 間借りしている部屋へと戻り、子供たちを寝かしつけるというシドたちに断りを入れて俺は再び外へと出た。


 その理由は、宴が終わる前にある人から呼び出しを受けたからだ。


「うおっ、やっぱり夜は冷えるな……」


 砂漠の国と言うだけあって、カナート王国の日中は四十度を超える日が当たり前のように続くが、かといって夜は暑いというわけではなく、普通に十度以下が当たり前、日によっては氷点下まで下がるから迂闊に薄着で外に出るわけにはいかない。


 エルフの集落は砂漠ほどではないにしても、夜の冷え込みは中々のもので、俺は外套を身体に巻き付けて寒さから逃れるように早足で指定された場所へと向かう。


 暗闇の中を記憶を頼りに向かう先は、つい先程まで宴が行われていた広場だ。


 ネイさんたちの見事な手際もあり、あっという間に綺麗に片付いた広場の真ん中に誰か立っているのが見える。


「……来ましたね。今、灯りを点けましょう」


 囁くような声なのに不思議と耳に届く声の主は、こちらを振り向きながら右手を軽く振る。

 すると、何処からともなく小さな光がやって来て、やがて人の頭ほどの大きさの精霊となって辺りを照らしてくれる。


 そうして露わになった人物、集落をまとめる長、ラピス様は思わず見惚れるような美しい微笑を浮かべる。


「明日に備えて早く休みたいでしょうに、お呼び立てしてごめんなさいね」

「いえ、大丈夫です。少し夜風に当たりたいと思っていたところですから」


 久しぶりに酒を飲んだこともあり、寝る前に少し酔いを醒ましたいと思っていたのは事実なので、ラピス様から呼び出しを受けていなくても少し散歩をしていたと思う。


「そうですか、それを聞いて安心しました」


 俺が嘘を吐いていないと伝わったのか、ラピス様は安心したように大きく息を吐く。


「コーイチを呼んだのは、明日の戦いを前に話しておきたいことがあったからです」

「それは……混沌なる者の分体について、ですか?」

「話が早くて助かります」


 ラピス様は首肯すると、ゆっくり首を巡らせてカナート王国の方を見る。

 つられて俺も同じ方を向きながら、気になっていることをラピス様に尋ねる。


「ラピス様、あの赤い竜巻は今はどうなっているのですか? その……結界は?」

「結界の方は問題ありません……今は」

「今は、ということはやはり?」

「ええ、そう遠くない内に破られるでしょう」


 混沌なる者の分体である赤い竜巻は、森の入口となっている結界を破ろうと、何度も何度も結界に体当たりをしているらしい。


 俺の目では何も見えないがラピス様には状況が見えているのか、彼方を見ながら小さく嘆息する。


「結界が破られれば、森は火の海に包まれるでしょう」

「えっ? それってかなりマズいんじゃ……」


 エルフの森は言うまでもなくどこもかしこも草木で溢れており、火事になれば消火活動は困難を極めるだろう。


 山火事は完全に鎮火するまで数カ月かかることも珍しくないし、まともな消防施設がないこの世界では、全てが燃え尽きるまで火が消えないなんてこともあり得る。

 何よりここには、混沌なる者の最終目的であり、世界の命運を握っていると言っても過言ではない世界樹がある。


 あの大樹が燃やされるようなことがあれば、例え赤い竜巻を退けることができたとしても俺たちの負けである。


「その、ラピス様……もし火事が起きた場合の消火方法は?」

「そちらの方は何とでもなります。だからコーイチは、あの者を止めることに尽力して下さい」

「……わかりました」


 一体どのような方法で消化するのかはわからないが、エルフには魔法という奇跡の力があるので、それでどうにかするのかもしれない。


「では、俺は何をすれば?」

「それについては、あと二人の到着を待ちましょう」

「二人?」


 一体誰だろう? と思っていると、


「あれ? コーイチさん?」

「……ソラ?」


 やることがあるからと、間借りしている家には戻らず世界樹へと向かったはずのソラが現れる。


「コーイチさんもラピス様に呼ばれたのですか?」

「ということはソラも?」

「はい、世界樹で魔力を練って来るように言われたのです」

「なるほど……」


 ということはソラの力を……召喚魔法を使うということだろうか?


 一体誰を召喚するのか気になるが、それももう一人の到着を待ってからだろうか?

 あと一人、誰が来るのかと辺りを見渡してみるが、ソラ以外は誰かがやって来る気配はない。


 このまま待っててもいいが、明日のこともあるのでラピス様に質問する。


「あの……もう一人はいつ来るのでしょうか?」

「いくら待ってもあと一人は来ませんよ?」

「……えっ?」


 ど、どういうこと?


 何かの問答かと思って首を捻ると、ラピス様がクスクスと上品に笑い出す。


「そう難しく考える必要はありませんよ。二人目は、これからソラが呼び出すのです」

「あっ……」


 思ったより簡単な答えに至らなかったことに、俺は気恥ずかしさを感じながらも、二人目について尋ねる。


「それでラピス様、ソラに誰を召喚してもらうのですか?」


 召喚できる人はソラと深く繋がっている人だと聞いているので……現状では俺とシド、そしてミーファぐらいしかいないと思うのだけど……、


 そう思っていると、ラピス様が顔を上げて召喚する人物の名を告げる。


「ソラに呼んでもらうのは混沌なる者について最も詳しい者、あなたの母親のレドです」

「「えっ」」


 ラピス様の想わぬ提案に、俺とソラの驚いた声が重なった。

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