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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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搦め手が通じない⁉

 俺が振り下ろしたナイフは、割り込んで来た緑色の巨人の腕に受け止められていた。


 だが、切れ味に自信のあるナイフは緑色の巨人の腕を切り裂くことなく、 その逞しい腕の表皮すら削れないでした。


「……チッ」


 攻撃が弾かれたが、ここで驚いて動きを止めるわけにはいかないと、何も考えずに大きく後ろへ跳ぶ。

 同時に、俺がいた場所に二匹のゴブリンが左右から挟み込むように突っ込んで来て、互いの額をぶつけ合う。


「「ギギャッ!?」」


 額をぶつけ合ったゴブリンたちは、同時に悲鳴を上げながら仰け反る。

 状況が状況なら、コメディ映画のようなシチュエーションに思わず気が緩んだかもしれない。


 だが、俺も既に何度も死地をくぐり抜けて来た身である。


 何が起きても大丈夫なように、後ろに下がると同時に調停者の瞳(ルーラーズアイ)を発動させて置いたことが功を奏した。


 二匹のゴブリンの向こう側から赤い光が見えたと思った途端、緑色の巨人がゴブリンたちを蹴散らしながら突撃してきた。


「キシャアアアアアアアァァッ!!」

「クッ……」


 唾液を撒き散らしながら振り回された手を、俺は絶対に浴びないように注意しながら冷静に回避する。


 まさか同じ種族……かどうかわからないが、同じ魔物であるゴブリンたちを吹き飛ばして緑色の巨人が突っ込んでくるとは思わなかったが、こうして接敵してしまったのなら仕方ない。


 まずは、この見慣れない魔物から処理する。


 やることを決めた俺は、さらに後ろに下がりながら腰のポーチへと手を伸ばす。


 緑色の巨人は他のゴブリンよりストロークが広いので、一人突出してきたところで、俺はポーチから取り出した目潰し用の瓶の蓋を開け、薙ぎ払うようにぶちまける。


 灰やトウガラシの粉等を混ぜた目潰し攻撃は、あらゆる生物に効果抜群で、初見の相手にはほぼ必中の必殺技といっても過言ではない。

 狙い通り顔全体を覆うように広がった粉に真正面から突っ込んだ緑色の巨人は、今にも苦しみに満ちた悲鳴を上げると思われた。


 だが、


「キシャアアアアアアアァァッ!!」

「なっ!?」


 緑色の巨人は怯むどころか、再び叫び声を上げながら腕を伸ばしてくる。

 相手の足が止まったら攻勢に転じようと思っていた俺は、僅かに反応が遅れて胸ぐらを掴まれる。


「しまっ!?」


 後ろに跳んで逃げようとするが、その前に物凄い力で持ち上げられ、足が地面から離れる。


「ぐっ……」


 首が締まって息ができなくならないように必死に両手でガードしながら、俺はどうして目潰し攻撃が効かなかったのかを見定めようと緑色の巨人の顔を見る。


「――っ!?」


 その瞬間、俺は自分の考えが間違っていたことに気付く。


 緑色の巨人の目には灰色の粉がびっしり付いていたが、奴はそれがどうしたと謂わんばかりに全く気にした様子はない。

 それどころか鼻や口の中にも粉が入っているにも拘らず、涙も出てこなければ、息が詰まっている様子もない。


 それは普通の生物では……まともに生きている者の反応ではない。


 それはつまり、この緑色の巨人は既に生きていない……ゾンビのような存在なのかもしれなかった。

 てっきりこの場にいるゴブリンたちも同じかと思われたが、他の緑の小人たちは、周囲に散った肺を浴びて苦しそうに咳き込んでいた。


 ゴブリンたちに囲まれてタコ殴りにされる可能性が少し減ったとしても、依然として窮地なのは変わらない。


「くっ……うくっ……このっ!」


 呼吸困難に陥る前にどうにか逃れようと、最後の力を振り絞ってナイフを緑色の巨人の掴んでいる手へと振り下ろす。


 だが、渾身の力で振り下ろした刃は、またしても緑色の巨人の硬質な表皮に阻まれてしまう。


「が……は…………」


 ナイフに力を割いた所為で首が一気に締まって、俺は堪らず肺に残った僅かな酸素を吐き出す。


 手足が痺れ、目の前が一気に暗くなっていく。

 影もないのでヴォルフシーカーで逃げることすらできない。


 これ…………は……や……ばい…………、


 こんな得体の知れない奴にやられて終わりなのか?



 目の前が真っ暗になり、意識が飛びそうになったその時、


「ディメンションスラスト!」

「――っ!?」


 泰三の必殺技を叫ぶ声が聞こえたかと思うと、俺の体が自由になって地面へと落下する。


「ガハッ! ゲホゲホ……」


 激しく咳き込みながらどうにか呼吸をしようと喘いでいると、


「浩一君、早く影に逃げて!」

「……あ、ああ」


 再び泰三の声が聞こえ、俺は必死に意識を集中させてヴォルフシーカーを発動させる。


 焦っているとスキルが発動しないこともままあるが、幸運にも俺の体は影の中へと沈む。


「…………ぷはっ!?」


 漆黒の海へと沈んだ俺は、大きく息を吐き出して深呼吸を繰り返す。


 泰三のお蔭でどうにか命を拾ったが、このままいつまでも影の中に身を潜めている場合ではない。

 もし、俺の思っている通り緑色の巨人がゾンビに近しい存在なら、奴を倒すのには俺のスキルが絶対に必要になるはずだ。


「はぁ……」


 大きく息を吐いてアラウンドサーチを発動し、周囲の状況を確認する。


 赤い光点が少ない場所を見繕って素早く移動した俺は、地面から顔だけ出して戦況を見る。

 油断して不意打ちを喰らった俺とは違い、シドも泰三も互いをカバーしながらゴブリンたちを次々と屠っていく。


 緑色の巨人も三体の内、既に二体が地面に伏していた。


 だが、俺の予想通りその内の首に穴が開いている一体がゆっくりと起き上がるのが見えた。

 しかも最悪なことに起き上がったのは緑色の巨人だけでなく、明らかに致命傷を受けているはずのゴブリンたちもが次々と起き上がり始めた。

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