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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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赤く燃える竜巻

 レオン王子を包む赤い光はどんどん強くなっていき、直視できないほどの(まばゆ)い光になる。



 このまま太陽になるかと思われた次の瞬間、


「うおっ!?」


 いきなり光が弾けたかと思うと、続いてやって来た衝撃波に俺の体が宙に浮く。


「や……やばい……」


 このまま吹き飛ばされたら、何処まで行くかわからないし、下手したら空高く舞い上がってそのまま地面に叩きつけられて死ぬ恐れすらある。


 必死に手を伸ばして地面を掴もうとするが、俺の手は虚しく空を切る。


「しまっ……」

「コーイチ!」


 全身から血の気が引く気配がすると同時に、シドが俺の体にのしかかってきて、そのまま地面へと押し倒される。


「バカ、気を付けろ!」

「あ、ありがとう。助かった」


 顔に思いっきりシドの柔らかい胸が当たっているが、流石にこの状況で照れている場合ではない。

 俺はシドと身体を支え合うように手を取ると、吹き荒れる嵐の中を地面を這うように移動する。


 どうにか大きな瓦礫の影へと移動した俺たちは、首を巡らせて泰三を探す。


 すると、同じように瓦礫に隠れている泰三を見つけた俺は、風に負けない声量で彼に話しかける。


「泰三、無事か!」

「大丈夫です。浩一君こそ無事でよかったです」

「何とか……うわっ!」


 互いの無事を確認していると、俺のすぐ脇を巨大な木片が掠めていき肝を冷やす。


「コーイチ、ここじゃダメだ。もっと下がろう」

「あ、ああ、そうだな」


 俺は泰三に手振りでもっと下がろうと提案すると、背にしている瓦礫からそっと前の様子を確認する。


「――っ!?」


 その瞬間、俺は雷に打たれたかのような衝撃を受ける。


「コーイチ?」


 すると、俺の異変に気付いたシドが、俺の肩越しに覗いてくる。


「な、何だあれは……」

「あれが……混沌だよ」


 シドの息遣いを耳にしながら、俺は口内に溜まった唾液を嚥下して話す。


「間違いない。あれは混沌なる者だ」


 そう呟く俺の視線の先には、巨大な赤い竜巻が周囲を巻き込み、火の粉を撒き散らしながらみるみる大きくなっていくのが見えた。




 混沌なる者の分体が誕生してしまった。


 この世界を滅ぼすと言われている存在の復活を阻止するために動いていた俺たちだったが、奴が復活してしまった以上、やることは一つしかなかった。


 そう……撤退だ。


「コーイチ、大丈夫か!?」

「だ、大丈夫」


 俺は流れてきた汗を拭いながら、飛び込んだ先の壁に背を預けて息を吐く。


 撤退すると言ったが、逃げるというには口で言うほど簡単ではない。


 逃げる時は当然ながら敵に背を向けるので、こちらからは攻撃することはできないが、向こうがこちらを狙いたい放題なのだ。

 故に逃げる時は可及的速やかに移動することも大切だが、同時に背中に最大限の気遣いをする必要があるのだ。


 と言っても、混沌なる者の分体となったレオン王子から特別な攻撃が来るわけではない。


 だが、今も成長を続けている赤い竜巻は、周囲の物を無差別に取り込んでは上空から雨のように降らしたり、カタパルトのように射出して驚異的な破壊をもたらしたりと、少しでも気を抜けば一瞬で死んでしまいそうな危機的状況にさっきから冷や汗が止まらない。


 こんな時こそヴォルフシーカーの出番かと思うかもしれないが、スキルを使おうとしたら、シドに激しく止められてしまった。


 確かに安易にスキルに頼るべきではないかもしれないし、それヴォルフシーカーで一緒に行動できる人数は一人が限界なので、シドか泰三のどちらかは取り残されてしまう。


 そんなわけで、三人揃って逃げるべきだというシドの強い主張に推される形で、俺たちは徒歩での退却をしていた。


「よし、コーイチ。今だ!」

「わかった!」


 シドが手招きすると同時に、俺は隠れていた壁から飛び出して飛来物に注意しながら彼女がいる次の物陰へと全力で走る。


「クッ……」


 既に普通に立っているだけでも困難な強風の中、俺は姿勢を低くして一気に駆け抜けてシドの下へと辿り着く。


「よし、よくやった」

「あ、ありがとう」


 まるでおんぶにだっこという状況に不満を覚えないことはないが、搦め手がメイン主力の俺としてはこういう力押しはどうしてもシドたちに頼るしかない。


「浩一君、次はこっちです」


 一息つく間もなく、さらに先を言っていた泰三から声がかかり、俺は腹に力を籠めてもう一度飛び出す準備をする。


 すると、


「コーイチ、待て」


 シドが手を伸ばして来て俺の肩を掴むと、首を巡らせながら耳をピクピクと動かす。


「……何か、変な音がしないか?」

「変な音?」

「何て言うか、何かが落ちる音なんだけど……岩や木が落ちる音とは違う、もっと軽い音なんだけど……」


 シドが首を傾げると同時に、俺たちのすぐ脇に彼女が言う軽い音と共に何かが落ちてくる。


「そう、こんな感じの音が……」


 そう言うシドが指差す方を見やると、赤く燃えている一メートルほどの丸い物体が見えた。


 明らかに建材とは違う物体を注視していると、丸い物体が小さく揺れ出す。


「……な、何だ?」


 不気味な挙動をしている物体は、表面が大きく裂けたかと思うと、


「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 おぞましい叫び声と共に、中からゴブリンが姿を現した。

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