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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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???⑤

 レド様には聞きたいことが山ほどある。


 レド様が封じたはずの混沌なる者が、どうして再び姿を現そうとしているのか?


 万が一再び混沌なる者が現れたとして、奴を倒すことができるのか?


 そもそもどうしてこのタイミングで俺と泰三がこの場に呼ばれたのか?


 色んな疑問も、全てレド様に話を聞けば解決するかもしれない。

 そう思いながら赤いつぼみが開くのを待つが、


「おっと」


 あることを思い出した俺は、隣に立つ泰三の肩を掴んで後ろを振り向かせる。


「えっ? な、何ですか?」

「いいから、ノンデリ野郎と思われたくなかったら後ろを向いていようぜ」

「は、はぁ……」


 自分一人ならともかく、俺も一緒に後ろを向くならと、泰三は渋々ながら頷いて後ろを振り向く。


 レド様は登場する時いつも裸だったから、きっと今回も裸に違いない。


 奇しくも既に何回かレド様の肌かを見てしまっているが、流石に何が起こるかわかっているので、散々デリカシーがないと言われてきた俺だが、少しは紳士なところがあると思っていただきたい。



「あの、浩一君……」


 誰ともなく言い訳じみたことを考えていると、泰三が俺の手を引いてくる。


「その……いつまで後ろを向いていればいいんですか?」

「えっ? 何時までだろう」


 考えてみれば、赤い花が開いてからレド様の衣服に変わるまで、どれくらいの時間が必要だっただろうか?

 今でこそ体感で時間を計ることはできるが、それでも下手に振り向いてレド様のあらぬ姿を目撃してしまうのは避けたい。



 そんなことを思っていると、


「クスクス……」


 背後から耳をくすぐるような笑い声が聞こえてくる。


「お気遣いありがとうございます、浩一さん。もうこちらを向いて大丈夫ですよ」

「あっ、はい。ほら、泰三もう大丈夫だぞ」

「わかりました」


 泰三を伴って後ろを振り向くと、赤いドレスを見に纏ったレド様が穏やかな笑みを浮かべて立っている。


「あれっ? ソラちゃん?」

「そう思うよな」


 予想通りのリアクションを取ってくれる泰三に、俺は何度も頷いて目の前の女性を紹介する。


「泰三、この方はレド様。俺たちをこの世界に来るきっかけとなったルミナシステムを搭載した召喚魔法を作った人で、ソラに似ているのはシドたち三姉妹の母親だからだよ」

「えっ、この方が!? ちょ、ちょっと待って下さい……」


 レド様の詳細を聞いた泰三は、こめかみに手を当てて考え込んでしまう。


「ええと、この方はソラちゃんたちのお母様で、僕たちを呼んだ召喚システムを作った人で……ル、ルミナスシステム?」

「ついでに言えば、かつてノルン城で混沌なる者を封印した実績もあるんだ」

「ま、待って、これ以上、情報を増やさないで下さい!」


 いきなり与えられた情報の多さに、泰三は頭を抱えて悶絶する。


「ハハハ……」


 確かに泰三が混乱する気持ちもわからなくはない。


 俺だってライハ師匠から聞かされたルミナスシステム絡みの話については、まだよく理解できていないし、泰三に説明を求められても上手く説明できる自信はない。

 ただ、そのどれもが世界を破滅させようと企む、混沌なる者からこの世界を救いたいという純粋な気持ちからであることは間違いない。


 イクスパニアに来ておよそ二年、この世界の住人としてはまだまだ新米だが、それでも今は最初に来た時の消極的な気持ちとは違う、心からこの世界を救いたいと思っている。



 とりあえず混乱中の泰三のことは置いておいて、俺は穏やかな笑みを浮かべているレド様に話しかける。


「お久しぶりです。こうしてお話するのは二度目ですね」

「ええ、浩一さんも……」


 そこでレド様はニヤリと笑うと、下から覗き込むように見上げてくる。


「シドのこと、気にかけて下さってありがとうございます」

「えっ? あ、ああ、どうも……ってもしかしてシドのこと?」

「見てはいませんよ。ただ、ソラの……ね」


 レド様は自分の胸に手を当てると、目を伏せて小さく笑う。


「ソラの気持ちが流れてきたんです。胸を貫くような切なさと悲しみと……それを上回る大きな喜び。それで何となく察しただけです」

「それは……凄いですね」

「母親ですから……見えないかもしれませんけど」

「そんなことありませんよ」


 儚げに笑うレド様に、俺はハッキリと否定の言葉を投げかける。


「シドもソラも、レド様のことが大好きですよ」

「そうでしょうか?」

「はい、俺が保証します。ミーファは母親のことはよくわかっていないようですが、きっと一目見れば全力で甘えてきますよ」

「フフフ、そうだと嬉しいですね。ミーファのことは殆ど抱いてあげられなかったから」


 レド様はそっと自分の両手で自分の胸を抱く。


 きっと架空のミーファのことを抱き締めているのだろう。


 レド様と三姉妹の仲睦まじい姿を想像し、俺は思わず溢れて来た涙を拭うと、本題を切り出す。


「レド様、俺と泰三がここにいるということは、俺たちに何か用があるんですよね?」

「あっ、はい……そうですね」


 レド様は静かに頷くと、佇まいを正して俺の顔を真っ直ぐ見据える。


「浩一さんと泰三さんをここに呼んだのは、大切なことを伝えるためです」

「大切なこと……ですか」

「はい、次に現れる混沌なる者……その分体の真の目的についてです」

「混沌なる者の……」

「分体!?」


 思わぬ言葉に、俺と泰三は思わず顔を見合わせた。

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