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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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いざ砂の海へ

「…………委細、承知した」


 サンドウォームを倒す作戦を聞いたハバル大臣は大きく頷くと、俺たちから距離を取る。


「おじさん?」

「心配するな。依然として悪魔のささやきは聞こえないし、私は正気だ」


 思わず一歩詰め寄って心配するレオン王子を、ハバル大臣は手を上げて問題ないと笑ってみせる。


「だが、お前たちに余計な気遣いをされては困るからな。私は私で奴をけん制するために動こうと思う……自由騎士よ、それでいいな」

「はい、できるだけ注意を惹き付けていただけると助かります」

「わかっている。それこそ、今の私の役目だ」


 親指を立ててニヤリと笑ってみせたハバル大臣は、砂埃を盛大に巻き上げて日光浴という名の魔力補充をしているサンドウォーム目掛けて突撃していく。


 最初に現れた時のような砂の中を移動するのではなく、砂埃を大量に巻き上げながら疾駆していく。

 魔物としての力を完璧に制御しているのか、その速さは戦闘モードのうどんにも匹敵するほどだった。


 そのままサンドウォームに肉薄するかと思われたが、ハバル大臣が近付くと、巨大な虫はまるで逃げるように土の中へと潜っていく。


「あの野郎……逃げやがった!」

「いや、違うよ」


 砂の上で地団太を踏むレオン王子に、俺はアラウンドサーチで索敵しながら話しかける。


「奴は自分のフィールドに戻っただけだ。砂の中なら絶対に負けないと思っているんだ」

「なめやがって……だが、コーイチ」

「ああ、俺たちだってやってやろうぜ!」


 俺とレオン王子は拳を合わせて互いの健闘を祈ると、それぞれの役割へと移っていく。



「よし、野郎共。いくぞ!」


 レオン王子が部下の獣人の戦士たちに声をかけると、両手いっぱいに回収したクラスターランスを手にした男たちが威勢よく「応!」と応える。


 これはサンドウォームが大き過ぎて普通の武器ではまともに傷を付けられないので、今すぐに手に入る一番大きな武器であるクラスターランスを使うことにしたのだ。

 といっても、専用の装置で飛ばすクラスターランスは長さもさることながら、重さもかなりあるので俺が使うのは難しい。


 なので俺の手には、獣人の戦士の一人が使っていた木製の槍が握られている。


「すみません、無理言って借りてしまって」

「気にしないで下さい。コーイチさんは最も厳しい箇所をお願いするのですから……どうかご武運を」

「ええ、お互いに生きて帰りましょう」


 槍を貸してくれた優しそうな顔をした兎人族(うさびとぞく)の男性に礼を言って、俺は一緒に行動するロキと、集合した六匹の砂漠イルカたちに向き直る。


「俺たちも行こう。カナート王国を救うために、皆の力を貸してくれ」

「わんわん」

「キュイキュイ」


 ロキと砂漠イルカたちから「やろう」とか「頑張ろう」などの激励の言葉を受けながら、俺は最初にサンドウォームから助けてもらった砂漠イルカに話しかける。


「それじゃあ、お願いしてもいいかな?」

「キュイッ、キュイキュ~イ」

「あっ、うん……これでいい?」


 しゃがんでと言われたのでその場に膝を付くと、砂漠イルカが滑るように近付いてきて鼻先を額にピタリと寄せてくる。


 海洋生物とは違ってヌルヌルとはしていないが、それでも獣独特の臭いを感じながらジッと待っていると、


「キュイ」


 もう大丈夫、と砂漠イルカから声をかけられて俺は目を開ける。


「…………うん」


 パッと見た限り、特にこれといった変化は見られない。


 だが、今の俺は砂漠イルカによってある魔法がかけられた状態となっている……はずだ。


 それに、万が一魔法が上手くいっていなかったとしても、砂漠イルカたちとコミュニケーションが取れる俺なら問題ないはずだ。



「キュイキュイッ」


 自分の身体の調子を確かめていると、上半分を砂の上に出した姿勢になった砂漠イルカから「早く、早く」と楽しそうに声をかけられる。


「うん、それじゃあ失礼するよ」


 俺は一言断りを入れて、砂漠イルカのアイボリー色の背中に手を乗せる。


「……あっ」


 その瞬間、さっきまでなんだかんだで辛くて仕方なかった砂漠の暑さが、嘘のように消える。


「急に涼しくなったけど……これって君と繋がったから?」

「キュイ」

「そうなんだ」


 砂漠イルカからの「そうだよ」という答えに妙に納得しながら、俺は彼の背中の上から生えている三角形の背びれに掴まりながら跨り、そのまま腰を下ろす。


「おわっと!」


 砂漠イルカの上に乗った途端、足元の砂の感覚がなくなり、俺は砂漠イルカの背中の上に落ちるように乗っかる。


「ご、ごめん……大丈夫、重くない?」

「キュイキュ~イ」


 心配そうに声をかけると、砂漠イルカは「気にしてないよ」と歌うように言って、砂の上を滑るように動き出した。



「お、おおっ、これは凄い!」


 砂漠なのにまるで水の上にいるかのような感覚に、俺は砂漠イルカの魔法、砂の海を泳ぐことの凄さを知る。


 この力があるからこそ、砂漠イルカはこの死の大地でも餌を求めて自由に、広範囲を自由に行き来することができるのだ。

 この魔法を砂漠イルカは自分以外にも使うことができ、サンドウォームに襲われた俺を助けてくれたのは、正にこの魔法だったというわけだ。


 ちなみにこの魔法、別に砂漠イルカと額を合わせることをしなくても、対象にかけることができる。


 では、どうして額を突き合わせたのかというと、別の理由からだ。



「……ふぅ」


 俺は大きく息を吐くと、目を閉じてアラウンドサーチを発動させる。


 脳内に索敵の波が広がっていき、次々と赤い光点が浮かび上がる。

 集団で動く赤い光点はレオン王子たち、そして素早く動く赤い光点はハバル大臣など、目を閉じていても動きだけである程度は誰が誰だかわかる。


 その中で一つ、一際大きな赤い光点の反応が見えたところで、俺は目を開けて砂漠イルカへと話しかける。


「見えた?」

「キュイ」


 俺の問いかけに、砂漠イルカは「うん」と応えると、


「キュイキュイ!」


 仲間たちにサンドウォームがいる場所を伝達すると、隊列を組んで地中に潜んでいる奴をあぶり出すために砂の中へと潜っていった。

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