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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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ここが天国ですか?

 目を開けると、真っ暗な世界にいた。

 上も下もわからない……全身がまるで水中を漂っているような感覚で、目を開けていると思っているが、それが本当に開いているのかどうかもわからない。


 ああ、そうか……、


 そこまで思いついたところで、俺は自分に何が起きたのかを理解する。


 サンドウォームに追いかけられ、地響きに足を取られて転倒し、そのまま奴に押し潰されたのだ。


 ということは深く考えるまでもなく、俺は死んでしまったということで、ここは死後の世界だというやつだろうか?


 全身が押し潰され、見るも無残な死体になったであろうが、痛みも感じる間もなく即死してくれたのはありがたかった。

 いや、きっと脳が潰れてなくなってしまったから何も見えないし、痛みも感じることがないのかもしれない。


 ならばどうして水中を漂うような感覚があるのだろうか?


 上下左右の感覚は曖昧だが、さっきまでは下、そして横に移動している感覚があったが、今は上に向かって移動しているような気がする。


 もしかしてこれが、天国に行く感覚というやつなのだろうか?


 果たしてこれまでの行いで俺が天国に行けるかどうかはわからないが、できることなら地獄には落ちたくない。

 しかし抗ったところで何かが変わることもなさそうだから、流れるままに身を任せよう。


 そうこうしている間にも俺の身体はどんどん上へと登っていき、何か壁を抜けたかと思うと、目の前が真っ白になる。



「うっ!?」


 余りの眩しさに反射的に目を閉じるが、続けてやって来た肌をジリジリと焼くような感覚に、俺は手で日よけを作ってゆっくりと目を開ける。

 最初に目に飛び込んで来たのは、雲一つない吸い込まれそうな真っ青な空に、名前も知らない太陽のように燦々と照らしてくる陽の星。


 顔を横に向ければ、これまで幾度となく見て来た砂だらけの不毛の大地が見える。


「あの世って……カナート王国そっくりなんだな」


 おかしい……死んだはずなのにこれでは生きていると勘違いしてしまいそうだ。



 そんなことを考えていると、


「わん! わんわん!」


 遠くから「いた、良かった!」と嬉しそうな声が聞こえてくる。


「……あれ、ロキ?」


 あの世にはいるはずのないロキの声に戸惑いながらそちらへと目を向けると、


「おごぅわ!」


 何かが物凄い勢いでぶつかってきて、俺は砂の上をゴロゴロと転がる。



「……あたた」


 死んだはずなのに痛いのはどういうことかと思っていると、


「わん、わふわふ! きゅん、きゅ~ん!」


 ロキが俺に馬乗りになって「よかった、本当によかった」と言いながら激しく顔を舐めてくる。


「わっ、ロ、ロキ……本当にロキなのか?」

「わふ~ん」


 ロキは「そうだよ」と言いながら嬉しそうに俺に頬擦りをしてくる。


「きゅんきゅ~ん」

「もう離れないって……えっ、もしかして俺、生きてる?」

「わん!」

「……マジか」


 他の者なら疑ったかもしれないが、ロキから「そうだよ」と言われては、無条件で信じるしかない。


「でも、どうして……」


 俺の足では、あの時のサンドウォームの突撃を避けることなど到底無理だった。

 となると何かしらの手助けがあったのだろうが、あの時、俺の周囲には誰もいなかったはずだ。


 一体誰が俺を助けてくれたのだろうと思っていると、


「んっ?」


 誰かに背中をツンツンと遠慮がちにつつかれて俺は背後を見る。


「あっ……」

「キュイ」


 そこには砂の上から半分だけ顔を出した砂イルカが「こんにちは」とズラリと並んだ尖った歯を見せて挨拶してきた。



 俺を助けてくれたのは、カナート王国に来る途中で最初に餌をあげた砂漠イルカだった。


 たまたまこの近くで泳いでいた砂漠イルカたちは、サンドウォームを見て心配になってカナート王国へと向かっていたところ、必死に逃げる俺を見つけて地中から助けてくれたのだ。


 かつて鶏肉のたくさん入った袋を持っていった方法で俺を運び、さらには地中でも息をできるように魔法をかけてくれたという。

 以前、別れ際に自分たちが魔法が使えると言っていたが、砂漠イルカは思った以上に魔法の扱いに長けている種族のようだった。


 荷物と同じ扱いで運ばれたのは驚いたが、そのお蔭で俺は生き延びることができたというわけだ。


「キュイ?」


 身振り手振りを交えながら一生懸命に事の経緯を説明してくれた砂漠イルカは「わかった?」と可愛らしく小首を傾げる。


「うん、よくわかったよ」


 大きく頷いてみせた俺は、手を伸ばして期待した目でこちらを見ている砂漠イルカの頭を撫でる。

 まるでゴムのようなツルツルとした手応えではあるが、海洋生物と比べるとかなり温かいと思いながら、俺は砂漠イルカへと改めて礼を言う。


「ありがとう。君のお蔭で助かったよ」

「キュイ、キュ~イ!」


 アニマルテイムの効果が発揮されているのか、砂漠イルカは嬉しそうに「もっと撫でて」と甘えた声をあげてすり寄って来る。


「モチロン」


 撫でるならタダなのでいくらでも撫でてやるのだが、生憎と今は他に何も持っていない。

 期待させ過ぎてはいけないと思い、俺は正直に砂漠イルカに話す。


「でも、ゴメン。今はあげられる肉とかは持っていないんだ。でも、無事に生き延びられたら、思う存分に肉をあげるからそれまで我慢してくれるかい?」

「キュイ」


 俺たちの現状を理解しているのか、砂漠イルカは「問題ないよ」と快諾してくれる。


「……よかった」


 ここでへそを曲げないでいてくれたことは助かったが、それでも依然としてサンドウォームをどうにかしなきゃいけないという問題は残っている。


「倒すことは無理でも、どうにかカナート王国から引き剥がすことができれば……」



 何か妙案はないかと頭を捻っていると、


「キュイ、キュイキュ~イ」

「えっ、サンドウォームを倒す方法があるって?」


 砂漠イルカから思わぬ話が飛び出した。

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