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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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新たな体制へ

 それからエルフの集落では、ちょっとした騒動になった。


 理由は当然、数百年もの間一度も破られることがなかった結界が破られたからだ。

 それはつまり、これまで森に張り巡らされた結界と、シンボルとなる世界樹を隠すことで隠蔽されていたエルフの集落が何処からでも見えるようになったのだ。

 森の結界はまだ健在とはいえ、世界樹を頼りに移動すればいつかはこの集落に辿り着くことができると、エルフたちは誰もが狼狽えていた。


 こんな時、頼りになるのは集落をまとめるラピス様なのだが、彼女は壊された結界をどうにか修復しようと試みているとのことで、世界樹に籠りっきりだった。

 ならばと次に白羽の矢が立つのはフィーロ様なのだが、彼女は彼女でスールに拒絶されたことのショックが大きく、とても大きな決断を下せる状況でなかった。

 こうなると何も結論が出ないまま、ズルズルと悪い方へと落ちていく可能性がある。


 だから俺は、フィーロ様にある提案をした。



 傷心のフィーロ様にお願いして、俺はカナート王国の王城にワープの魔法でお願いしてもらった。


「コーイチ!」


 俺が城内に姿をみせると、巨大な影が駆け寄って来てそのままの勢いで覆いかぶさって来る。


「無事だったんだな! 心配したぞ!」

「アハハ……すまない。心配かけたね、レオン」


 容赦なく抱き締めてくる力が強く、せっかく治った体がバラバラになりそうなので、俺はどうにか手を伸ばしてレオン王子の背中をポンポンと軽く叩く。


「レオン、気持ちは嬉しいけど、ちょっと痛い」

「あ、ああ、悪い……つい、気持ちが昂っちまってな」


 そう言って離れて照れくさそうに笑うレオン王子を見て、とりあえず俺は自分が女でなくて良かったと思う。


 この人との距離感を取り方が絶妙に下手なのが、実にレオン王子らしいと思う。

 それでも不器用なりに俺と仲良くしようと努力してくれるのを見ると、セシリオ王子とは違う意味で親友になれそうだった。


 だが、今はのんびりとレオン王子と友情を育んでいる場合ではない。


「レオン、もう気付いていると思うけど……」

「エルフの集落の結界が壊されたんだな?」


 流石にレオン王子たちも、既に情報を掴んでいるようだ。

 フィーロ様にカナート王城前まで飛ばしてもらった時も、視界の隅に必ず映る世界樹に気付かないはずがなく、何なら案内してくれた兵士もチラチラと巨大な樹の方を何度も見ていた。


「あんな巨大な樹がすぐ目と鼻の先にずっとあったなんて、今でも信じられないぜ」

「そうだな、俺なんかこの目で見た後でも信じられないよ」


 樹齢千年以上の樹を見たことは何度かあったが、世界樹はそんな巨木すら生まれたての赤子に見えるくらいに大きかった。

 それだけ雄大で壮大な世界樹だが、今はその大きさが災いとなっている。


 クラーラ様が命を賭けてくれたお蔭で、フリージア様と和解できたレオン王子なら問題ないと思うが、念のために確認を取っておこう。


「レオン、ちなみにだけどエルフの集落に攻めるつもりは?」

「もう、そんな気はねぇよ。ただ……」

「ただ?」

「叔父さん……ハバル大臣の行方が気になる」


 レオン王子によると、彼を裏で操ろうとしていたハバル大臣は、カナート王からの呼び出しにも応じず、屋敷はもぬけの空、それどころかカナート国内の何処にいるのかわからなくなっているという。


「あの人は力が強いだけじゃなく、頭の回転も速いから……きっと何処かで再起を図ろうとしているはずだ」

「そうか……」


 真剣な顔のレオン王子を見て、俺も危機感を募らせる。


 ハバル大臣か……レオン王子と闘技場で戦った時に、シドが怪しい目で見ている連中がいると言っていたが、その中にハバル大臣はいたのだろうか?


 実は一度もハバル大臣を見たことがないのだが、少なくともレオン王子の親族というくらいだから、彼と同じ獅子人族(ししびとぞく)なのかもしれない。

 ハバル大臣への対処も考えなければならないが、いつどこで現れるのかわからない大臣に意識を割き続けても仕方がないので、俺はここに来た目的を先に済ませようと思った。


「ハバル大臣の懸念は残るけど、カナート王国としてはエルフと事を構えるつもりはないと思っていいんだな?」

「ああ、それについては問題ない。結界が壊れて困っているのなら、可能な限りの支援は約束しよう」

「そうか、それを聞けてよかったよ」


 こっちから話を振るまでもなく色よい返事が聞けたことで、俺は密かに安堵する。



「早速だけど、エルフの集落から使者を連れてきているから、話に参加してもいいか?」

「使者? ああ、勿論だが……」


 レオン王子はキョロキョロと周囲を見渡しながら首を傾げる。


「コーイチの物言いからすると、その使者は既に来ているのか?」

「ああ、悪いと思ったけど、実は既にこの室内にいるんだ」


 と言っても、俺の目にもその人の姿は見えないので、虚空に向かって話しかける。


「というわけです。もう出て来ていいですよ」

「ああ、すまないな」


 すると、俺の斜め後ろから声が聞こえたかと思うと、誰もいなかったはずの空間に突如として長い耳を持った人、エルフが現れる。


「今さらこんな虫のいい話をして申し訳ないが、獣人の民たちよ。我々を助けてくれまいか?」


 そう言って白衣を着たエルフ、ラヴァンダさんはレオン王子に向かって深々と頭を下げた。

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