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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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黒き野望

「いやはや、やはりコーイチとの会話は楽しいな」


 わざとらしく拍手をしてみせながら、スールはニヤリと笑う。


「全てコーイチが言う通りだ。まさか襲撃のタイミングまで言い当てるとは思わなかったぞ」

「……ということは?」

「いいだろう。もう時間もないし、今のうちにコーイチの問いに答えてやろう」


 少し気になる物言いではあったが、どうやら俺の願いを叶えてくれるようだ。



「じゃ、じゃあ……」

「私がどうしてここにいた男を殺したか聞きたいのだろう?」

「あ、うん……そうです」

「うむ……」


 先んじて俺の質問を見透かしたスールは、鷹揚に頷いて話し始める。


「最初に言っておくが、私は過去を知るこいつを消すためやって来たのではないぞ」

「……違うのか?」

「違う、そもそも過去などいくら知られようとも私には些事だからな。この男がこの集落における重要な役割を担っていたからだ」

「重要な役割?」


 そ、それって……、


 何だかとてつもなく嫌な予感しかしない。


 ここに住んでいたエルフ……どうやら男性だったようだが、もし彼が集落の人々から嫌われているのであれば、こんなにも家の周りが手入れされているはずがない。

 そして、村の最奥に住んでいるという状況、一見すると端に追いやられているとも取れるが、逆に考えればある考えに至る。


 ここに住む者がいなくなると、村の防衛に関わる重大な問題が発生するのではないだろうか?


「フフッ、いい顔だ」


 俺の顔を見たスールが、クツクツと肩を揺らしながら嫌な笑みを浮かべる。


「コーイチ、君の読み通り、ここの男が死んだことでこの村のあるものがなくなった」

「なくなったって……それって」


 言われなくてもそれが何かを察した俺が、思わず天を仰ぐと、


「結界が……消えています」


 俺と同じように空を見上げたソラが、顔を青くして震える声で話す。


「集落を覆っていた結界が消えています。これでは、侵入者を防ぐことができない……」

「……やっぱり」


 俺の調停者の瞳(ルーラーズアイ)では見ることができなかったが、魔法を習得したソラの目には、先程と何が違うのかわかるようだった。

 だが、これでスールの目的がハッキリした。


「ここに来たのは、集落の結界を壊すためだったのか」

「何、少し風通しをよくしてやっただけだ。ここはカビ臭くて敵わないからな」


 冗談みたいなことを言いながら、スールは思わず背筋がゾクリとするような冷たい笑みを浮かべる。


「…………」


 その顔に、俺は背筋が震えるのを自覚しながら、気になることを尋ねる。


「いつからだ」

「うん?」

「いつからこの計画を立てていたんだ。まさか、俺たちがこの世界に来た時からこうなることを予期していたのか?」

「ハハハ、流石の私でもまさかそこまでは読んではいないさ……だが、そうだな」


 スールは薄ら笑いを浮かべて俺を射貫くように見る。


「コーイチ、君がグランドの地下で私に一杯食わせた時に思ったのは確かだ。君ならば、あらゆる困難を乗り越えて、ここまで辿り着くはずだとね」

「そいつは買い被りすぎだろ」

「そうでもない、私は君が思っている以上に君のことを買っているよ」

「そうかよ」


 明らかに敵であるスールに褒められても、全く嬉しいとは思わない。

 結果として、まんまとスールの策略に嵌ってしまったというわけだ。


 しかし、だからといってここに来たことを俺は全く後悔していない。


 スールの悲願を叶えてしまったのは事実だが、ここに来られたお蔭で、ソラは魔法を習得し、レド様が封じた世界にいるはずの混沌なる者からの攻撃に、耐えることができるようになったはずだからだ。

 エルフの森を覆う結界がなくなってしまったのは、確かに残念なことかもしれない。


 だが、それだけだ。まだ何かを……誰かの命が失われたわけではない。


 故に、


「……負けないからな」

「うん?」


 何事かと首を傾げるスールに、俺はラピス様にもした宣言を再び行うことにする。


「どうせこの先、混沌なる者の勢力による大攻勢とか仕掛けてくるんだろ? それがどんな巨大な力でも、俺たち皆の力で打ち倒してやるからな」

「そ、そうです。絶対に負けませんから」

「当たり前だ。あたしたちの力、舐めんなよ」


 俺の宣言に、ソラとシドも追従してくれる。

 今までは俺とシドの二人だけだったが、これからはソラの力も頼ることができる。

 本当は心優しいソラに戦って欲しくはないが、今回はきっとそんな甘いことは言っていられないだろう。

 流石にミーファも一緒に戦うことはないだろうが、それでも家族全員で戦っていくという意志は変わらない。


「なるほど」


 俺たちの顔を眺めながら、スールは満足そうに頷く。


「これは楽しくなってきたな」

「そうやって笑っていられるのも今の内だぞ」

「肝に銘じておこう」


 そう言って再び薄く笑ったスールは、俺たちに背を向ける。


「それでは近いうちに……今度は戦場でまみえようぞ」


 そう言って話は終わりだと、スールは立ち去ろうとする。



 すると、


「コーイチ!」

「……フィーロ様?」


 集落の方から慌てた様子のフィーロ様の声が聞こえ、俺たちは思わずそちらの方へと目を向ける。


「はぁ……はぁ……集落の結界が消えた様ですが、一体何が……」


 集落内の結界が消えたことで慌てて駆けてきたのか、額に玉のような汗を浮かべたフィーロ様は俺たちを見た後、その先へと視線を送り、


「………………お父様?」


 いきなりまさかの一言を口にした。

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