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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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再会……だよね?

「んおわぉう!?」

「キャッ!?」


 俺が声を上げて飛び起きると同時に、すぐ近くから可愛らしい悲鳴が聞こえる。


「ん?」


 声に反応してそちらを見ると、怯えたような顔をしたソラがこちらを見ていた。


「…………ソラ?」

「えっ? あっ、はい、ソラです」

「ソラ……ソラ……だよな。うん、ソラだ」


 何度かその名を口にしてみたが間違いない。俺の目の前に数日ぶりに見るソラの愛らしい顔があった。


 ついと視線を横にずらしてみると、俺は木が複雑に絡まった円形の不思議な空間にいることに気付く。



 そこにはあの黒い竜巻もなければ、消え去っていく荒野もない。


 おそらくだが、ソラが修行しているという世界樹の中にワープしたようだ。

 ということは、今度こそ無事にソラの召喚魔法は成功したということだろうか。


「…………」


 つい先程まで見ていた世界の破滅のような映像とのギャップに呆然としていると、俺の袖が遠慮がちに引かれる。

 そちらを見ると、ソラが不安そうな顔で尋ねてくる。


「そういうあなたはコーイチさん、ですよね?」

「あっ、うん、そうだけど……」


 まだ少し頭は混乱しているが、俺の名前は間違いなく橋倉浩一である。


「ああ、よかった」


 ソラは大きく安堵の溜息を吐くと、手を伸ばして俺に思いっきり抱き付いてくる。


「わっ、ソ、ソラ?」

「コーイチさん……会いたかった」


 首筋に顔を埋め、スンスンと鼻を鳴らしながら匂いを嗅ぐソラに、俺は心臓が高鳴るのを自覚しながらも手を伸ばして彼女の背中をポンポンと叩いてやる。


「俺もソラに会いたかった……もう会えないかと思ったから、こうして再会できて本当に嬉しいよ」

「すみません、もっと早く連絡できればよかったのですが」

「ソラは悪くないよ。今回の件は俺も迂闊だったし、結果としてこうして召喚魔法もできるようになったじゃないか」

「召喚魔法……成功したんですよね?」

「うん、したはずだよ」

「よかった……」


 ソラは俺から身を離すと、浮かない顔をして召喚魔法が成功した時の話をする。


「コーイチさんに会いたいと強く願ったら、私の中から青白い光が出て来て、その中からコーイチさんが出てきたんです」

「へぇ……」


 そこだけ聞くと、ソラの体の中から俺が出てきたみたいでちょっとしたホラーだと思う。


 だが、どうやらソラが気になっているところは、そこではないようだった。


「コーイチさんを召喚できたのはよかったのですが、現れたコーイチさんは意識がなくて、いくら呼びかけても、叩いても起きて下さらなくて……」

「えっ?」


 今にも泣きそうな声で呟くソラの言葉に、驚いた俺は思わず彼女に尋ねる。


「俺、ソラの前の現れた時から意識を失っていたって? どれくらい?」

「五分か……十分かそこらです。とにかく、どうしてコーイチさんが目を覚まさないのか見当もつかなくて……」

「そうか……」


 どうやら先程の黒い竜巻は召喚されている途中に見た一瞬の幻かと思っていたが、見ていた時間だけしっかり意識を失っていたらしい。


 これまで気にしたこともなかったが、もしかしてレド様と出会ったあの謎の空間の出来事も、その分だけしっかり時間の経過はあったのだろうか?


 あれが夢だとしても、どうしてこのタイミングで混沌なる者と邂逅するような夢を見たのだろうか?


 召喚魔法だという青白い光と混沌なる者は、何か因果関係があったりするのだろうか?


 もし、召喚される度に混沌なる者とエンカウントするようなことになるなら、この魔法を乱用するのは危険なんじゃないだろうか?



 色々と考えを巡らせていると、



「……コーイチ」


 静かな、それでいて凛とした声が聞こえ、俺は声のした方に振り向く。

 そこには、フィーロ様を一回り成長させたようなとんでもない美女がいた。


 思わず目を奪われるほどの美女の登場に、俺は心臓がドキドキするのを自覚しながら確認するように声をかける。


「あの、ラピス様……ですよね?」

「いかにも、よく来ました自由騎士コーイチよ。積もる話もあるでしょうがまずは……」

「まずは?」

「あなたの体を診せてもらえますか? 召喚魔法による体への弊害を調べさせて下さい」

「わ、わかりました」


 確かに今後のことを考えた場合、俺の体を診てもらうことは悪いことではない。

 俺はその場に寝なさいというラピス様の指示に従い、世界樹と思われる木の上に寝転がって美しいエルフにその身を委ねた。



 てっきりじっくり体を調べられると思ったが、ラピス様の診察はほんの数分で終わった。


「結果からいえば、コーイチの体には何の問題もありませんでした」


 全身を舐めるように俺の体を指で触りまくったラピス様は、最後に俺に目を覗き込んでくる。


「ただ、そうなるとコーイチ。あなたが目を覚まさなかった理由がわからない」

「そんなにですか?」

「ええ、ソラが泣き付いてくるので、私の方でもいくつか目覚めの魔法をかけさせてもらいました。ただ、その全てが見えない力によって阻まれたのです」


 ラピス様はこんなことは初めてだと嘆息すると、切れ長の目を細めて射貫くように俺を見る。


「コーイチ、あなたが目を覚ました時の様子から何か見ていましたね?」

「は、はい……」

「では何を見ていたのか、正直に話なさい」

「わかりました」


 別に隠し立てすることでもないし、俺としても先程の夢の正体を確認しておきたいという気持ちもある。


「聞いてもらえますか?」


 俺はそう前置きをすると、夢で混沌なる者と思しき存在と出会ったことをラピス様に話していった。

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