風変わりな連中とは?
ルルちゃんたちを昼食を誘ったところ、三人は快く俺からの誘いを受けてくれた。
色々思うところはあったが、ミーファたちが揃って空腹を訴えてきたので、何はともあれ昼ごはんを食べることにした。
ソラとネイさんが用意してくれたのは、ココナッツミルクが入ったお子様向けの辛さマイルドでほんのり甘く、それでて肉がたくさん入ったまるでクリームシチューのようなワミーだった。
「わぁ……いい匂い」
部屋中にクリームの優しい匂いがし出すと、ルルちゃんが嬉しそうに双眸を細める。
「凄い凄い。こんな凝った料理食べるのなんて、どれくらいぶりだろう」
「あのね、ソラおねーちゃんがつくってくれるごはん、とってもおいしいんだよ」
「そうなんだ。それはすごく楽しみだな」
僅かな時間ですっかり仲良くなったようで、ミーファはルルちゃんとニコニコ嬉しそうにおしゃべりしている。
「おい、こりゃ見た目は悪いけどめちゃくちゃうめぇな。モス、お前も食べてみろよ」
「兄ちゃん……いくらご馳走してくれるって言っても、少しは遠慮ぐらいしてよ」
バド君とモス君の兄妹は、うどんのご飯である熟成オリーブの実を分けてもらったようで、困惑するウサギを無視して次々と黒い実を口に運んでいる。
「……ぷぷぅ」
思わずこっちを見てくるうどんに、後で追加をやるから勘弁してやって欲しいと目で訴えた俺は、鍋を火からおろして子供たちに声をかける。
「さあ、できたぞ」
俺が声をかけると同時に全員の期待に満ちた視線が一斉に向くのを感じて、俺は思わず苦笑を漏らしながらホスト役を買ってもらうためミーファに声をかける。
「ミーファ、皆の分のお皿と食器を出してくれるかな?」
「うん、わかった」
「あっ、私も手伝います」
ミーファが勢いよく立ち上がると、ルルちゃんもすぐさま反応して立ち上がる。
「コーイチさん、私もお手伝いしてもいいですよね?」
「うん、お願いできるかな? 食器の場所は、ミーファが知ってるから」
「はい、じゃあミーファちゃん。いこっ」
「うん、ルルちゃん」
やはり女の子同士だと気が合うのか、二人は仲睦まじく食器を用意していった。
後は全員分のクリームワミーを用意して、付け合わせのサラダと作り置きしてあったパン代わりのエモを用意すれば完成だ。
そうして始まったお昼ご飯は非常に好評で、充分用意されていたはずのクリームワミーが綺麗に無くなるまでそう時間はかからなかった。
食後、食事のお礼に片付けをしたいと申し出たルルちゃんたちと、彼女を手伝いたいというミーファに後片付けを任せ、俺はうどんに追加のオリーブを与えながらのんびりお茶を飲んでいた。
「……楽しそうだな」
キッチンから聞こえてくる子供たちの楽しそうな声を聞きながら、俺は漫然とした態度でわずかに残っているお茶を飲む。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
すると俺の表情から何か察したのか、追加のお茶を持ってきてくれた狸人族の兄妹の弟、モス君がこちらを見上げながら話しかけてくる。
「表情がすぐれませんが、何かよくないことでもあったのですか?」
「えっ? あっ、そんなことないよ」
鋭い指摘に俺は反射的に否定すると、愛想笑いを浮かべる。
ミーファより些か大きいとはいえ、こんな小さい子を不安にさせてどうする。
せっかくの楽しい雰囲気を、俺の余計な感情で壊さないようにしないと考えていると、
「大方、ウォル爺さんに俺たちのこと聞かされて、同情してんじゃないのか?」
ただ一人、皿を割るからと、片付けに参加させてもらえなかったモス君の兄であるバド君が、俺の心情を見透かしたように苦笑する。
「図星だろ?」
「あっ、うん……そうだね」
ここで嘘を吐いてもどうせ表情で読まれると思った俺は、諦めて諸手を上げる。
「突然のことで驚いちゃったのは事実だよ。だって皆の……」
「だから、そんなこと気にしなくていいって」
思わず顔を伏せる俺に、バド君が殊更明るい声で話す。
「別に親がいないことなんて、ここに住んでいる奴からすれば当たり前のことだからさ」
「当たり前?」
「そう、当たり前」
バド君は大きく頷くと、窓の外を指差して調度近くを通りかかった人たちを指差す。
「あそこにいるファンさんは片足がないし、隣のミミさんは目が見えないんだ」
「えっ?」
バド君が指差す方を見やると、互いを支え合うようにゆっくりと歩く二人の人影が見える。
まだ若い、俺と同じ年ぐらいと思われる男女の二人はカップルなのか、男性の方が俺たちと目が合うと、照れくさそうに笑って会釈してくる。
だが、バド君が言う通り男性の方は片足がなく杖がないと立つのもままならなそうだし、隣の女性も急に男性が止まったので困惑した表情を浮かべていたが、耳打ちされて事態を理解したのか、女性も続けて会釈してくる。
つられるように俺も会釈をすると、二人は再び頭を下げて何処かへと消えて行く。
もしかして、これがターロンさんが言っていた地下に住む風変わりな連中の正体ということだろうか?
そのことに気付いた俺は、隣に立つバド君に探るように尋ねる。
「バド君、もしかして地下に住む人たちって……」
「そうだよ。気付いた?」
十分配慮したような態度を見せる俺に対し、今さらなのかバド君は呆れたように肩を竦める。
「そうだよ。この地下には地上に住むことができなくなった吹き溜まりが集まっているんだよ」
「吹き溜まりって……そんなこと」
「あるんだって。ここは強さが全ての獣人の国だぜ。弱い奴、戦えなくなった奴が表を歩く権利なんてないんだよ」
「そんな……」
吐き捨てるように告げられたバド君の言葉に、俺は愕然とするしかなかった。




