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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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みんなで仲良く

 俺の地味ではあるが最高だと思っているスキルに、一人でも喰いついてくれるお客さんが現れたのは僥倖だった。


「あ、あの、コーイチさん、動物とお話しするところ見せてくれる?」

「ああ、いいよ」


 期待の眼差しでこちらを見ているルルちゃんに、俺は笑顔で頷いてみせると、こちらを伺うように見ているこんな時にピッタリの相棒に声をかける。


「うどん、こっちに来てくれるかい?」

「ぷっ?」

「うん、そうだよ。ちょっとこっちに来てくれる?」

「ぷぷぅ」


 俺の呼びかけに、うどんは「わかった」と頷いて、とてとてとこちらに向かって駆けてくる。

 一番長い付き合いの相棒と言えばロキだが、彼女の大きな体では子供たちを怖がらせてしまうと思うので、ここは見た目が抜群に可愛いうどんの出番だということだ。



 俺がしゃがんで手を差し出すと、うどんは手を伝って肩へと乗って「何?」と可愛らしく頬擦りしてくる。

 俺は茶色い毛玉のふわふわの頭を撫でながら、既に十分なリアクションを見せてくれているルルちゃんにうどんを紹介する。


「ルルちゃん、この子は俺たちの旅の大事な仲間、オスのトントバーニィで、うどんって言うんだ。ほらうどん、こっちはルルちゃん、挨拶してあげて」

「ぷっ、ぷぷぅ」


 コクリと頷いたうどんは、俺が胸の前に差し出した腕の上まで移動して、ルルちゃんに向かって「よろしく」と深々とお辞儀する。


「ふわあああぁぁぁ……凄いです。うどん君、ちゃんと挨拶出来てる」


 俺の言葉通りに挨拶するうどんを見て、ルルちゃんは興奮したように頬を紅潮させる。


「あ、あのあの、うどん君って撫でても大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ……うどん、ルルちゃんがうどんの頭を撫でたいんだって。撫でさせてあげてもいい?」

「ぷっ」


 うどんは「いいよ」と快く承諾してくれると、ルルちゃんに向かって頭を自らずいと差し出す。


「ぷぷぅ」

「どうぞ、だって。あっ、うどんの頭を撫でる時は、耳は触らないであげてね……敏感なところだから」


 本当はうどんの耳には鋭利な刃物が入っていて危ないからなのだが、必要以上に怖がらせる必要はないので、黙っておくことにする。



「わ、わかりました」


 俺から撫で方の説明を聞いたルルちゃんは、おそるおそる手を伸ばしてうどんの頭に手を乗せる。


「わわっ、ふわふわで柔らかい……」

「フフッ、気持いいから、もっと撫でていいよだって」

「本当ですか? フフフ、うどん君可愛い」


 ルルちゃんは嬉しそうに双眸を細めると、気持ちよさそうに口をもごもごさせているうどんの頭を尚も撫でて続ける。



「お、おい、そんなに気持ちいいのか?」

「僕にも……僕にも撫でさせて」


 ルルちゃんの様子から自分も撫でたくなったのか、バド君とモス君の二人も俺へと詰め寄って来る。


「なあ、兄ちゃん。俺たちは狸人族(たぬびとぞく)のバド、こっちは弟のモス、俺たちもウサギを撫でていいか?」

「い、いいですか?」


 そう言いながらチラチラとルルちゃんを見る目は、もう早く撫でたくてしょうがないといった感じで、耳と尻尾を見るだけでも如実に現れていた。


 というか、この子たち狸人族ってことは、タヌキの獣人なのか。


 丸い耳と細くて短い尻尾、一見すると熊人族(くまびとぞく)と区別がつかないのだが、そんなことを口にしようものなら、またウォル爺さんからどやされてしまうだろう。



 ちなみにだが、多くの人はタヌキとアライグマを勘違いして覚えているということをご存知だろうか?

 タヌキとアライグマを見分ける方法の一つに尻尾があり、タヌキの尻尾は短くて先端が黒く、長くて縞模様の尻尾はアライグマの特徴だったりする。


 だから実は国民的アクションゲームの髭のオッサンのタヌキスーツや、コンビニでお馴染みのタヌキの愛されキャラクターは、特徴的にはアライグマ寄りだったりする。



 まあ、そんなタヌキとアライグマの違いはともかく、俺はもう我慢できないといった様子の狸人族の二人の少年を諭すように手で押しとどめる。


「でも流石に三人同時に撫でるのはうどんにも負担があるから……」


 俺は首を巡らせると、もう一匹の大切な仲間を呼ぶ。


「ロキ、こっちにおいで」

「わんわん」


 ロキを呼ぶと、巨大狼は「待ってました」と嬉しそうに吠えて足取り軽やかにこっちにやって来る。


「――っ!?」

「ヒッ!?」


 自分の倍以上の大きさのロキの登場に、二人の少年の顔に恐怖の色が浮かぶ。


「大丈夫、怖くないよ」


 俺はうどんをルルちゃんの手に任せると、大股でやって来たロキを迎え入れて頭を撫でてやる。


「こんなに大きいけどロキはとっても優しいし、人懐っこいんだ。大丈夫、絶対に危険なことはしないから安心して撫でていいよ」

「わん、わんわん?」

「おっ、そうだね。じゃあロキ、二人のために横になってくれる?」


 ロキからの「横になった方がいい?」という提案に頷くと、彼女はゆっくりと横になって二人の少年の方を見る。


「わんわん」

「これなら怖くないでしょ? だってさ。頭が怖いなら、お腹辺りから撫でてみたらどうかな?」

「わ、わかった」


 こういう時、最初に動くのはお兄さんのバド君の役目なのか、モス君よりやや大きい熊人族の少年は、尻尾をゆらゆらと揺らしながらロキへと近付く。


「な、撫でるのは何処でもいいの?」

「何処でもいいよ。でも、あまり下の方は止めて欲しいかな? ロキは女の子だからね」

「この子メスなのか……わかった。上の方だな」


 ロキが女の子と聞いて下腹部に触るのは良くないと察したバド君は、ゆっくりと背後に回っておそるおそる巨大狼の背中へと手を伸ばす。


「あっ、温かい……それに凄くツヤツヤしてる」

「ロキはおしゃれさんだからね。普段から毛繕いには気を使っているんだよ」


 毛繕いを主にやっているのは、ロキとコミュニケーションが完璧に取れる俺だったりするのだが、その甲斐あって彼女は出会った頃よりずっと美人になったと思う。


 そんな手前味噌なことを思っていると、ロキの毛並みの良さを堪能していたバド君が弟のモス君に話しかける。


「おい、モス。凄いよ。こんなに大きくて綺麗なガルム初めて見た」


 どうやらバド君たちは、ロキがガルムという種類の狼であることを知っているようだった。


「温かくてすんごい気持ちいから、お前も撫でてみろよ」

「う、うん……」


 バド君に急かされたモス君も、兄に倣ってロキの背後に回って背中を撫でてみる。


「あっ、本当だ。フサフサで気持ちいい」

「だろ? ああ、こんなのもう我慢できるか」


 背中だけをおそるおそる撫でるのでは満足できなかったのか、バド君はロキの正面に回ってニッコリ笑うと、


「えい!」


 気合のかけ声を上げて、ロキの首に抱きつく。


「ああ……美しい。ロキ、何て綺麗なんだ」

「わ、わふぅ……」


 バド君の突然の行動に、ロキは一瞬だけ面食らったような顔をするが、彼に一切の悪意がなく、純粋な好意であることに気付いて「やれやれ」と小さく嘆息してされるがままに任せる。


 その後、モス君もロキに慣れたのか、より積極的に撫でられるようになり、三人の子供たちは俺のことを自由騎士として認めてくれたのだった。

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