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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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熱々のキミとの再会を

 その日の夜、すっかり綺麗になった家の広間で俺たちを待っていたのは、思った以上に豪華な夕食だった。


「思ったより早くカナート王国に着きましたから、今日は奮発しました」


 そう言うのは、我が家の財布を一手に握るソラだった。


 ソラ曰く、徒歩で砂漠を踏破する予定で買い込んだ食材が、ダルムット船に乗れたお蔭で予定より多くあまり、下手に残しても悪くなるだけなので一気に消化してしまおうとのことだった。


「明日からはいつもの食事に戻りますので、今日は思う存分食べて下さいね」


 そう言ってソラは、ネイさんと協力して作った自慢の料理を並べていく。


 まずはサツマイモによく似た芋をふっくら蒸し、バターをたっぷりと盛りつけ、ピリッとするコショウのようなスパイスを振りかけた芋料理。


 色とりどりの野菜を串に刺して焼いたものは、特製のマスタードソースを付けて食べるもので、これだと野菜嫌いのミーファでも割とペロリと食べられるほどおいしい俺も好きな料理だ。


 他にも魚を干物をカラッと揚げた後、酢漬けにした南蛮漬けに似たような料理。


 そして待望のメインは、砂漠のオアシスで食べた以来のワイバーンの肉を使ったワミーで、俺の好みに合わせて小麦粉を使ってトロトロに煮込んだものを用意してくれた。

 ワミーの匂いだけでも十分に食欲がそそられるのに、さらにそこへ用意されたのは、大きな鍋で炊き上げられた純白のお米だ。


「ほわあぁ、すごい! すごいよおにーちゃん」

「ああ、そうだね」


 嬉しそうに跳ねるミーファじゃないが、俺も白いご飯が深底の皿に盛られていくのを見て、テンションが上がっていくのを自覚する。

 異世界に来て、名前こそ違うがほぼほぼカレーが食べられるだけでも幸せなのに、そこに付け合せるのが、白米となるとこれがどれだけ嬉しいか。


 エリモス王国ではワミーはナンのようなエモと合わせるのが普通で、ライスと合わせる料理もあったが、それでもスパイスで味付けされたライスであり、白米で食べる習慣はなかった。

 どうやらソラは、俺が白米で作ったカレーライスを食べたいと言ったことを覚えていてくれていたようだ。



「さあ、どうぞ。コーイチさん」

「ありがとう。ソラ」


 こんもりと盛られたカレーライスならぬワミーライスを受け取った俺は、思わず口内に溢れてきた唾液を「ゴクリ」と飲み込んでかぐわしい匂いを堪能する。


「ああ、これをどれだけ望んだことか……グスッ」

「おいおい、泣くほどかよ」


 思わず涙ぐむ俺を見て、シドが呆れたように笑う。

 だが、笑われたぐらいでは俺の今の気持ちは微塵も揺るがない。


 笑いたければ笑えばいい。

 俺にとってカレーライスという存在は、それだけ偉大で、かけがえのないものなのだ。


 全員にワミーライスがスプーンを取り出した俺は、両手を合わせてソラとネイさんに頭を下げる。


「ソラ、ネイさん、ワミーライス。ありがたくちょうだいします」

「はい、どうぞお召し上がりください」

「お口に合うといいのですけど……」

「大丈夫です。俺、カレーだけには自信がありますから」


 テンションが上がり、何が大丈夫なのか自分でもよくわからないが、俺は改めて手を合わせて元気よく言う。


「いただきます!」


 そうして口にしたワミーライスが、極上の味だったことは言うまでもなかった。



 用意されたワミーライスを何度もおかわりしながら、俺は今日の出来事をシドたちに話していた。


「へぇ、あの爺さんに孫娘なんかいたんだ」


 都合三杯目のワミーライスを頬張りながら、シドが不思議そうに首を傾げる。


「しかも、素直でいい子だなんて……ここには変わり者しかいないんじゃなかったのか?」

「変わり者なんて……上に住んだ人が勝手にそう呼んでいるだけだろ?」


 自分とは違う生き方をする人に対して、変わり者扱いすることなんてどこの世界でもある話だ。


「それにショコラちゃん、次代の巫女らしいからね」

「へぇ、じゃあそいつにエルフとの橋渡しをお願いすればいいんじゃないのか?」

「それが、そう簡単にいかないみたいなんだよね」


 巫女の仕事はエルフからの一方通行が基本で、巫女側からエルフ側へ何かお願いをできる雰囲気ではなさそうだった。


「もしかしたら今の巫女である女性、どうやらラーマ様という人らしいんだけど、その人ならもしかしたら……」

「じゃあ、当面はそのラーマ様とやらに会う方法を探すかね」

「探すってどうやって?」


 ターロンさんからは、暫くはこの地下でおとなしくしているように言われてるよね?


 そう思う俺だったが、シドは眼前でチッチッと指を振りながらニヤリと笑う。


「あのな、カナート王国でお尋ね者状態なのはコーイチだけだぜ」

「えっ?」

「獣人であるあたしたちなら、何の問題もなく動けるんだよ」

「えっ? あっ、そうか……」


 確かに言われてみれば、シドたちだけなら地上に上がっても問題なく動くことはできそうである。


「国の地理もネイの奴がある程度知ってるみたいだから、明日からは巫女の情報を集めようと思ってるぜ」

「そう……」


 シドから方策を聞いた俺は、ネイさんの方へ視線を向けて尋ねる。


「ということみたいですが、ネイさんは大丈夫ですか?」

「大丈夫です。それに、色々とお買い物もしたいですから」

「そうですね。お掃除の道具や替えのシーツや、後は薪や油なども買い足しておきたいですね」


 ネイさんの言葉に、すっかり主婦モードのソラもここでの暮らしを快適にするために何が必要なのかを次々とあげていく。


 どうやら女性陣が地上へ買い物に行くのは既に決まっているようだ。



「まあ、そんなわけだ」


 唯一やることのない俺に、シドがポンと肩を叩きながら明日以降の予定を告げてくる。


「コーイチはここで、ミーファたちとお留守番しておいてくれ」

「…………はい」


 全く反論の余地はないので、俺はおとなしく頷いておいた。

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