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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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次代の巫女は不思議な子?

「次代の……巫女?」


 ウォル爺さんから得意気に巫女だと紹介された俺は、思わずショコラちゃんへと目を向ける。



 だが、


「コーイチさん、でしたっけ?」


 俺の顔を見たショコラちゃんは、困ったように笑ってみせる。


「ひょっとしてコーイチさん、巫女のことご存知ありませんか?」

「えっ? い、いや、全く知らないというわけじゃないよ」


 最初に聞いた時は何だっけ? と思ったが、すんでのところでセシリオ王から聞いた話を思い出したのだ。


「確か、エルフとの橋渡し役になってくれる人のことだよね? 確か今は、尻尾の無い猫人族(ねこびとぞく)の人が務めているって」

「あっ、はい、今はラーマ様がお役目に選ばれています。過去に辛いことがあったのに、とても気丈に振る舞う素敵なお方です」

「へぇ……」


 知ったかぶりじゃなかったことに、心の中で「セーフ」と呟いていると、



「ついさっき思い出したという様子だったが、合っていてよかったの」

「うぐぅ……」


 ウォル爺さんの容赦ない一言に、ぐうの音も出ない俺はがっくりと項垂れるしかなかった。


「クスクス……本当、確かにお爺ちゃんの言う通り悪い人じゃないみたいですね」


 だが、そんな正直なリアクションが功を奏したのか、ショコラちゃんの顔から緊張の色がすっかりなくなる。



 今ならこちらか質問してもよさそうだと思った俺は、せっかくだから次代の巫女だというショコラちゃんに、お役目について聞いてみようと思った。


「それで、巫女って具体的に何をする人なの? 橋渡し役というぐらいだから、エルフの集落まで入れたりするの?」

「いえいえ、そんな畏れ多いことできないですよ。精々、森の中にある祭壇までです」

「そう……なんだ」


 どうやら巫女になってもエルフの森へ入ることは許されても、集落まで入ることは許さないようだ。

 外側からちらと見ただけなので森の広さがどれくらいなのかは想像もつかないが、スールから貰った地図を見る限りはかなりの広さだったような気がする。


 まあ、砂漠を移動することに比べれば、森の中を移動するのはそこまで大変ではないだろう。


 考えても仕方ないことは置いておいて、話を元に戻そう。


「それで、結局巫女は何をする仕事なの?」

「あっ、はい、巫女は基本的にエルフの皆様からの託宣を、国の皆さんにお伝えすることです」

「託宣……じゃあ、それを聞きに祭壇へ?」

「はい、他にもエルフの皆様から要望を受けた時、それをお持ちするのも巫女の仕事です」

「要望なんてあるんだ。それってどんなものか聞いてもいい?」

「それは……」


 俺からの質問に、ショコラちゃんは戸惑ったように俺たちの背後へと視線を送る。


「ん?」


 一体何だろうと思い、ショコラちゃんの視線の先を追ってみるが、生憎と俺の目には何も見えない。

 それは同じように目線を追ったミーファやロキ、うどんも同じようで全員がショコラちゃんと同じ方向を見て首を傾げていた。


「フッ……」


 何だか全員揃って同じ行動するのがおかしくて、俺は小さく吹き出しながらショコラちゃんへと向き直って質問する。


「ショコラちゃん、もしかして俺たちの見えない誰かいるの?」

「い、いえ、そんなこと……ないですよ?」

「…………」


 最後の方はわざとらしく視線を逸らすのを見て、俺はショコラちゃんが明らかに嘘を吐いていると看破する。


 だが、かといってここで嘘を吐いていると指摘してもしょうがない。

 もしかしたら次代の巫女であるショコラちゃんにしか見えない何かがあるのかもしれないし、ここで下手に彼女を追い詰めても何もいいことはない。

 だから今日のところは、ここで話を切り上げようと思った。


「さて、本当は色々話をしたいところなんだけど……」


 それに、もし必要なことがあれば俺からわざわざ言わなくても、ショコラちゃんの方から話してくれるはずだ。

 そう判断した俺は、黙って事の成り行きを見ていたウォル爺さんへと向き直る。


「ウォル爺さん、船を地上へと運ぶ方法も興味はありますけど今日は……」

「そう……だな」


 ショコラちゃんを待たせるのも悪いので、俺が今日は切り上げましょうと提案すると、ウォル爺さんも頷いてくれる。


「どうやら夕餉の時間のようだからな。あまりショコラを待たせて怒られたら堪らんわい」

「もう、お爺ちゃん! 私、そんなことで怒らないよ」


 腹ペコキャラだと言われたショコラちゃんは、頬を膨らませてポカポカとウォル爺さんを叩く。

 だが、叩くといっても本気で怒っている様子はなく、どちらかというと孫娘が祖父とじゃれているという言葉が似合っていた。


「ホッホッ、悪い悪い……冗談だよ」


 ウォル爺さんは相好を崩しながらショコラちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でると、彼女の腰を抱いてニコリと笑う。


「というわけだコーイチ、続きはまた明日で構わないな?」

「はい、俺たちもそろそろ戻ってこいと言われるはずですから」


 ご飯という単語を聞いたからか、ぴったりと寄り添っているミーファの尻尾が俺の足をビシビシと叩いてくる。


 それが無言の「お腹空いたアピールであることを知っている俺は、苦笑しながらミーファに話しかける。


「ミーファ、俺たちも戻るから、ウォル爺さんとショコラちゃんにバイバイしようか?」

「わかった」


 年齢が近いからか、割と早い時間でショコラちゃんに慣れた様子のミーファは、二人に向かって小さく手を振る。


「おじーちゃん、ショコラちゃん……バイバイ」

「ホホッ、挨拶出来てえらいのう」

「うん、ミーファちゃんバイバイ、明日はちゃんとお話しようね」

「……うん」


 ミーファが小さく頷くと、ショコラちゃんはもふもふの尻尾を激しく振って嬉しそうに笑う。


「約束だからね。それとロキちゃん、うどん君も仲良くしてね」

「わんわん」

「ぷぷぅ」

「フフッ、いい子。それじゃあまた明日ね」


 ショコラちゃんは大きく手を振ると、ウォル爺さんと手を繋いで仲睦まじく帰っていった。



 二人が見えなくなるまで見送った俺は、ショコラちゃんたちに手を振っていたミーファに手を差し出す。


「それじゃあミーファ、俺たちも帰ろうか?」

「うん! ミーファ、もうおなかぺっこぺこ」

「そうだね、俺もだ」


 ご飯という単語を聞いてお腹が空いてきたのは俺も同じで、早く帰りたいと思っていたところだ。


「ロキとうどんも帰ろう」

「わん」

「ぷっ」


 こうして俺たちは、肩を並べて当面の住居となる家へと戻っていった。



 その途中、


「あれ? 俺、ロキとうどんのことショコラちゃんに紹介した時、性別まで言ったかな?」


 別れの挨拶をする時、ショコラちゃんはロキのことを「ロキちゃん」うどんのことを「うどん君」と言っていた。


「……まっ、いっか」


 もしかしたら何処かで言ったかもしれないし、ロキたちの性別を当てたぐらいたいしたことじゃない。


「おにーちゃん、はやくはやく!」

「はいはい、今行きますよ」


 それより今はご飯が食べたい。そう思った俺はぐいぐいと引っ張って来るミーファに急かされるように、新たな我が家へと向かって行った。

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