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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第三章 砂漠に架ける想い

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最後の自由騎士

 ライハ師匠の話を聞いてからずっと思っていたこと、それは俺と泰三以外の自由騎士の誕生だ。


 ルミナスシステムを脳幹に入れるのに頭を開かなければいけないのは怖いが、地下のメディポッドがあれば、手術後の容体も安定しそうだし、もしかしたら技術の進歩によってより早く、安全にルミナスシステムをトランシードする方法が生み出されているかもしれない。


 何より、皆揃って自由騎士の力を手に入れられれば、混沌なる者と戦える貴重な戦力になることには変わりない。



『……そうですね』


 俺からの提案を聞いたライハ師匠は、すっかり冷めてしまったお茶を一気の飲み干して小さく頷く。


『確かにトランシードは技術進歩によって、注射による注入が可能になり、最終的には劇的に安定するようにはなりました』

「じゃあ……」

『ですが、残念ながらこれ以上、自由騎士を増やすことは無理なのです』

「えっ?」


 思わぬ返答に、俺は愕然としながらライハ師匠に尋ねる。


「ど、どうしてですか? もしかしてイクスパニアの人には、ルミナスシステムが適合しないとか?」

『それはありませんよ。ルミナスとイクスパニア、星は違えど人としての差異はそこまでありませんよ』


 ライハ師匠はゆっくりとかぶりを振ると、どうして自由騎士をこれ以上増やせないかを話す。


『実はルミナスシステムを作成するための装置は、アーク・スペランサには搭載されていないのです』


 常人を歴戦の猛者へと変えられる魔法のチップは、それ一つ造るだけでもそれなりの時間を要するのと、装置そのものがとてつもない大きさと重量、そしてエネルギーの消費が余りにも大きく、アーク・スペランサの航行に支障が出るとのことでルミナスの本星に残してきたのだという。


『そして、本星から持って来たルミナスシステムは、召喚魔法開発のために残らず提供してしまいました』

「えっ?」

『そして私の観測が間違っていなければ、エルフに提供したルミナスシステムは、一年前の自由騎士の召喚で残らず使用され、召喚魔法自体も活動を止めたようです』

「そ、そんなまさか……」

『ええ、そのまさかです』


 愕然とする俺の目を真っ直ぐ見つめながら、ライハ師匠は淡々とある事実を告げる。


『残念ながらコーイチ、あなたたちが最後の自由騎士なのです』




 ライハ師匠から告げられた言葉は、俺に物凄く重くのしかかる一言だった。


「俺たちが……俺と泰三が最後の自由騎士?」

『一応、ルミナの本星に戻ることができれば、新たなルミナスシステムを作れるかもしれませんが……』

「そもそもルミナに戻る術がない?」


 俺が先んじて質問すると、ライハ師匠はゆっくりと頷く。


 予想していたことだが、エリモス王国の地下にあるという宇宙船、アーク・スペランサはイクスパニアに不時着した時点で航行機能の大半が故障し、飛ぶことすら叶わなくなってしまったという。

 さらに魔物からの追撃を回避するために宇宙船を地下深くに沈めてしまったので、掘り起こして修理することも不可能だという。


 そうでなくともノルン城にあった召喚魔法が活動停止したとのことなので、名実ともに俺たちが最後の自由騎士になってしまったということだ。


 一応、俺たちより先に召喚された自由騎士が残っている可能性もあるかもしれないが、ここまで行き残った自由騎士の噂すら聞いたことがないので、いるかどうかもわからない彼等を当てにするわけにもいかない。


 つまり、イクスパニアを脅かす混沌なる者を倒せるかどうかは、俺と泰三の活躍に懸かっていると言っても過言ではなくなってしまったようだ。



『…………怖いですか?』


 この世界の命運を一気に背負うことになった俺を危惧してか、ライハ師匠が俺の手を握りながら話しかけてくる。


『自分が最後の自由騎士と知り、この世界の命運を握るかもしれないと考えたら、怖くて堪りませんか?』

「それは……はい」


 ここでカッコつける意味なんてないので、俺は正直に答える。


「正直言ってめちゃくちゃ怖いです。俺は自分がいかに弱いかを認識していますから」

『そうですね。ハッキリ言ってコーイチは弱いですね。自由騎士のスキルがなければ、まだまだシドたちにとってただの足手纏いに過ぎません』

「うぐぅ……ま、まあ、そうですね」


 ライハ師匠の容赦ない一言に思わず項垂れそうになったが、それは重々承知していることだ。


 最近になって少しは活躍できるシチュエーションが何度かあったが、あくまで自由騎士のスキルありきの話で、俺個人の力だけで状況を打破するまでに至ったことはない。


「だからもっともっと努力して、いつかはシドの隣に立てるようになるつもりです」

『そう……ですか』


 俺の決意を聞いたライハ師匠は、微笑を浮かべて大きく頷くと、そのままこちらをジッと見つめてくる。


 ……何だろう。

 まるで母親のような優し気な視線を向けてくるライハ師匠に、俺は一抹の不安を覚えて思わず問いかける。


「あ、あの、ライハ師匠……どうしたのですか?」

『……いえ、何でもありませんよ』


 その一言で正気に戻ったのか、ライハ師匠はいつもの雰囲気へと戻ると、優し気な微笑を浮かべて俺にある提案をしてくる。


『ところでコーイチ、最強になりたいと思いませんか?』

「えっ?」

『あなたが望むのであれば、あなたを最強にしてみせますよ』


 そう言ってライハ師匠は、手を伸ばして俺の頬を優しく撫でる。


『どうです? 最強に興味はありませんか?』

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