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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第三章 砂漠に架ける想い

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VSイビルバッド

 ソラとミーファ、そしてうどんを城へと預けたシドは、ロキと一緒にエリモス王国の城門を抜ける。

 メリルたちは既にクリミナルバッドの討伐に出発しており、シドたちは先遣隊より数十分遅れての出発となっていた。



「悪いなロキ、今回はお前にも頑張ってもらうぞ」

「わん!」


 シドに頭を撫でられたロキは「任せて!」と主人の期待に応えるように吠える。

 街の中では魔物ではないことをアピールするための服も今は着ておらず、万全の状態でこの場に臨んでいた。


 やる気満々といった様子で、忙しなくクルクル回るロキを見て、シドは気になったことを尋ねる。


「ところでロキ、お前はイビルバッドを倒した経験があるそうだな」

「わふっ?」

「ああ、いや、いい……わかってる。あたしの話が通じないのは十分理解している」


 それができるのは、浩一とミーファだけの特権だというのは重々理解しているが、何となく会話が成り立つときもあるので、シドは一縷の望みを託してジェスチャーを交えながらロキに尋ねる。


「その……だな。イビルバッドは空を飛んでいるだろう? その空飛ぶ魔物を、お前は……どうやって倒したんだ?」

「わ、わふぅ……」


 手をパタパタさせたり、何度もジャンプしたりするシドを見て、ロキは困ったように顔を伏せる。

 その様子から、話が全く通じていないことに気付いたシドは、同じく肩を落としてロキに再度問う。


「やっぱりあたしの話、わからないか?」

「キュ~ン」

「そう……か」


 がっくりと肩を落とすロキを見て、最後は「わからない」と言っていることを理解したシドは、黒い狼と同じように肩を落とす。


「何だろうな……戦っている時は、上手く意思疎通できるような気がするのに、どうして普段はこう上手くいかないのかな?」

「わんわん」


 まるで「全くだ」と同意するように鳴くロキを見て、シドは何とも言えない顔になる。


(こいつ……本当にあたしの言ってること、わからないんだよな?)


 そう疑いたくなるほど、ロキは時々正確に人の思考を読んでくるから、シドとしてはもう少しこの狼と上手くコミュニケーションをとりたいと思っていた。



 だが、


「ああっ、もう、やめやめ!」


 小難しく考えるのは自分の性に合わないと、シドは頭をガリガリと掻いて嘆息する。


「あたしたちの間に、難しい話なんて必要ないよな」


 シドはお座りをしているロキに近付くと、自分の顔より大きな彼女の顔を両手で包み込んでニヤリと笑ってみせる。


「いつも通り、あたしは自分勝手に戦うから、お前はあたしの全力でサポートしてくれ。いいな?」

「わん!」


 その問いかけに、ロキは「任せて」と元気よく吠える。


「いい子だ」


 言葉は通じなくてもロキが了承したことを汲み取ったシドは、巨大狼の頭を愛情を籠めてわしゃわしゃと撫でてやった。




 シドとロキが城門で戯れていた頃、彼女たちより先に出ていたメリルたちは、いよいよ魔物たちと相対していた。


「いいかお前たち、先ずはあの突出している奴から狩るぞ」


 そう言ってメリルが指差す先は、斥候なのか、一匹だけ突出して向かってくるイビルバッドだった。


「恐れることはない。お前たちは十分に修練を積んだ戦士たちだ!」


 メリルが全員を鼓舞するように叫ぶと、兵士たちは「応っ!」という鬨の声で応える。

 強敵の出現を前にしても十分な士気が保てていることに満足したメリルは、大きく頷いて腰から剣を引き抜いて天へと掲げる。


「弓隊、構え」


 メリルの叫び声と共に、弓兵たちが一斉にやを弓へと(つが)える。


 それと同時に、先頭を行くイビルバッドがメリルたちに気付いたのか「キィー、キィー」と耳障りな叫び声を上げて突撃してくる。


「まだだ……まだ撃つなよ…………………………」


 真っ直ぐこちらに突っ込んでくるイビルバッドを前に、メリルは部下たちが早まらないように自制を呼びかける。



 そうしてイビルバッドを弓の射程圏内へと呼びこみ、十分な威力が確保できる距離まで迫ったところで、


「撃てえええええええええええぇぇっ!」


 叫ぶと同時に剣を振り下ろす。

 同時に、弓兵たちが一斉にイビルバッドに向けて矢を放つ。


 そうして百を超える矢が、一斉にイビルバッドへと飛ぶが、


「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェッ!」


 イビルバッドが耳を劈くような叫び声を上げたかと思うと、飛んできた矢が、まるで見えない壁にでも阻まれたかのように弾かれ、あらぬ方向へと飛んでいき、一部は跳ね返ってメリルたちへと降り注ぐ。


「な、何だと!?」


 これでイビルバッドを倒せるとは到底思っていなかったが、まさか傷一つ付けられないどころか、攻撃そのものを反射されるとは思わなかった。

 しかも、自分たちが放った矢が返って来るとは思わなかったので、一部の兵士たちが混乱したのか、悲鳴のような声も上がっていた。



「お前たち、落ち着け! 次が来るぞ。ファランクス隊、前へ!」


 すぐにでもイビルバッドによる突撃が来ると察したメリルは、槍と大盾を持った重装歩兵たちに向かって叫ぶ。


「盾を一か所に固めて守りを強固にするんだ。他の者はファランクス隊が攻撃を受け止めると同時に、一斉に攻撃を仕掛けるぞ!」


 メリルが素早く指示を出すと、訓練された兵士たちはすぐさま命令を実行に移すために動き始める。


「よしっ!」


 この状況でも冷静に動けている部下たちに満足したメリルは、自分も攻撃に加わるべく剣を手に前に出る。


 まだ一際デカい一匹に加え、三匹ものイビルバッドと相対せねばならないのだ。

 最初の一匹目で手こずることなんて許されない。だから最初の一撃で一匹目を仕留める。


 そう心に決めながらメリルが駆けていると、調度最前線に位置したファランクス隊にイビルバッドが突っ込む姿が映る。


 特に厳しい訓練を受けている重装歩兵たちなら、イビルバッドによる攻撃を受け止めてみせる。



 そう思っていたが、


「うわあああああああああああああぁぁ!」

「ぐがあああああああぁぁ!」

「ば、馬鹿なああああああああああああぁぁ!」


 メリルの目に飛び込んできたのは、イビルバッドの突撃を受けてあえなく吹き飛ぶファランクス隊の姿だった。

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