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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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親友がいるから……

 診療所を出た俺たちは、ラヴァンダさんも加えて三人で広場へと向かう。


「……あれ?」


 広場の近くまで来たところで、俺はある異変に気付く。


「ねえ、シド。確か今日だけの宴会を開いているって話だったよね?」

「ん? ああ、そう聞いたけど何かあるのか?」

「いや、それにしてはやけに静かじゃない?」


 もう広場は目と鼻の先なのに、誰かが騒いでいる気配は疎か、話し声すら聞こえてこない。


「もしかして、宴はもう終わったのかな?」

「ええ、終わりましたよ」


 前方から俺の疑問に答える声が聞こえ、人影が現れる「。


「浩一君、ようやく起きたんですね」

「泰三か!?」


 俺は歩いてきた泰三と、互いの健闘を労うようにハイタッチを交わす。

 ああ……こうして喋らなくても、何となく通じ合える仲がいるってことはいいな。


「……どうしました?」


 思わず涙ぐむ俺を、泰三が心配そうに覗き込んでくる。


「もしかして、レオン王子のことですか?」

「あ、ああ……すまない」

「いえ、浩一君にとっては辛い別れだったと聞きました」


 既にソラから話を聞いたのか、泰三も顔を伏せる。


「僕は直接面識はありませんが、浩一君が大変仲良くしていると聞きました……親友と呼ぶ仲だったのか?」

「ああ、第一印象は最悪だったけど、色々あって仲良くなってさ……」


 話しているうちに込み上げてくるものがあり、俺は流れてきた涙を拭う。


「年齢差はあったけど、あいつもお前と同じようにかけがえのない親友だったよ」

「そうですか……なら尚のこと話してみたかったですね」

「ああ、きっと泰三のことだから、最初はめちゃくちゃ嫌な奴だと思うぜ」

「フフッ、それってまるで誰かみたいですね」


 俺たちは同じ人物を想像して、顔を見合わせて笑う。



「ハハッ、ありがとう……ちょっと元気出た」


 やはり親友っていいな。なんて思いながら話を本題に戻す。


「ところで宴は終わったって聞いたけど、皆もう寝たのか?」

「いえ、まだそこまで夜は更けていませんから……ただ」

「ただ?」

「単純な話です。皆、宴で楽しむ雰囲気なんかじゃなかったってことです」


 そう言って泰三は、これまでの大まかな経緯を話す。


 確かにシドの言う通り、最初は世界を救うことで来たことを祝う宴会が開かれた。


 だが、それはソラが召喚した外部の人間をもてなす為に開かれた催しであり、彼等が去った後は、特に示し合わせた様子もなく宴は静かに終わり、それぞれが大切な人、国を失った悲しみに浸るように喪に服しているという。


「ただ、皆が無理していることはセシリオ王にはお見通しみたいだったようです。彼は別れ際に、すぐに救援物資を送ると言っていましたから」

「そうか、セシリオが……」


 確かに人の機微を読むのが得意なセシリオ王なら、獣人たちの真意を見抜いたとしてもおかしくない。


「それなら少なくとも、生き残った人が飢えに苦しむ心配はなさそうだな」

「ええ、そちらは問題ないでしょう……ただ、心の方はどうでしょう?」

「そう……だな」


 特にカナート王国の人たちは、家族、友人以外にも失ったものがあまりにも多い。

 その中でも特に多くのものを失ったものが多いフリージア様は心から心配だ。


「まあ、姫さんたちならそんなに心配しなくていいだろうよ」


 俺の心を見透かしたように、シドがニヤリと笑う。


「これからは獣人とエルフが手と手を取り合ってやってくみたいだからよ。二人の姫さんもお前たちみたいに親友になって、互いに支え合っていくだろうよ」


 シドの指摘に、俺と泰三は再び顔を見合わせて笑う。

 親友という存在の偉大さを知っている俺たちからすれば、これ以上に安心できる材料はない。


 既にフリージア様にはフィーロ様だけでなく、ソラも付きっきりで面倒を見てくれているとのことなので、彼女たちに会うのは明日以降でいいだろう。


 一つ問題が解決したところで、俺はもう一つの問題を解決すべく泰三に尋ねる。


「なあ、泰三。ミーファを見なかったか?」

「ミーファちゃんですか? そういえば見てないですね」


 そう言って泰三は、広場の方へ目を向ける。


「宴が開かれているときは、皆と一緒にご飯を食べているのは見ました。後は、どうやら誰かを探しているみたいでしたね」

「誰かを?」

「ええ、誰を探しているかを聞きたかったのですが……生憎とミーファちゃんは僕に心を開いてくれていないので」

「まあ、ミーファの人見知り度合いは凄いからな」


 ニーナちゃんとの出会いがあったことで、ミーファも同い年ぐらいの子には初対面でも少しは話せるようになったが、まだまだ大人相手にはそう簡単には心を開いてくれないようだ。


「でも、ミーファちゃんは大きなめちゃくちゃ強い黒猫と一緒でしたので、人攫いとかの心配しなくてもいいと思いますよ」

「そうみたいだね」


 心配しなくていいと言われても、何処に行ったかわからないのだから、安心はできない。


「う~ん、どうしたものか」


 ミーファの居場所を知っていそうな人は誰かいないかを考えていると、


「ぷぷっ」


 前方から茶色い毛玉が俺の腕の中に飛んできて、すっぽりと収まる。


「ぷっ、ぷぷぅ」

「ああ、うどんも無事でよかった」


 撫でられて嬉しそうなうどんに、ミーファの居場所を聞いてみる。


「なあ、うどん。ミーファが何処にいるのか知らないか?」

「ぷぅぷぅ」

「えっ、知ってるの? どこにいるか教えてもらっていい?」

「ぷぅ」


 うどんは「いいよ」と言って俺の手から降りると、ミーファがいるという場所に向けて駆け出した。

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