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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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そして総力戦へ

「ど、どういうことだ」


 レオン王子から差し出された手を握りながら、彼に先ほどの言葉の意味を問う。


「バックスタブを使うなって何かあるのか?」

「そのバック……何とかは知らないけど、背後から襲いかかるやつのことならそうだ」


 レオン王子は自分の背中をトントンと叩いて、どうしてバックスタブを使ってはいけないか話す。


「俺も一度経験したからわかるが、コーイチに背後を取られると死が迫る感じがするんだ」

「死が……迫る?」

「ああ、感覚だけな。コーイチが何処にいるかは全然わからないけど、全身の細胞がヤバイと総毛立つんだよ」

「つまりあの巨人は、俺対策として背後に死を感じたら全力で後退してくるってことか?」

「そういうことだ。だから本当に最後の一撃以外では、そいつは使わない方がいいぜ」

「使わない方がいいって……」


 そんなこと言われても、他に有効な攻撃手段なんて思いつかない。


 先ほどやり取りで、俺とソラのなけなしのアイテムまで使ってしまったので、派手に搦め手を使うこともできない

 ここから先は巨人と真っ向勝負となるのだが、奴に止めを刺せる攻撃がバックスタブ以外にあるのだろうか?


 そんなこと……考えるまでもない。


「レオン、悪いけどその提案は受けられないよ」


 俺はかぶりを振って、自身の考えを話す。


「あの巨人を正攻法で倒すのは無理とは言わない。だけど、それでは遅すぎるだろ」


 戦闘に勝つのは当然だが、今回はそこに時間的制約もある。

 ちまちま悠長なことをしていたら、巨人が世界樹に辿り着いてしまう。


 こうしている間にも、世界樹が随分と大きく見えるようになった。

 あれだけ緑豊かだった森のあちこちから火の手が上がり、黒い煙が暁に染まったあ空へと吸い込まれていく。


 俺たち残された時間がどれぐらいあるのかはわからないが、世界樹だけじゃない。エルフの森を少しでも守るためにも、決着は早くつけるに越したことはない。


「だからこれまで通り、どうにかして俺が背後から止めを刺すよ」

「本気か?」


 鋭い目でこちらを睨んでくるレオン王子の目を、俺は真っ直ぐ見つめ返す。


「本気だ。他に有効な手立てを考える時間も惜しいし、皆にだけ体を張ってもらうわけにはいかないよ」

「そうか……」


 俺の本気度が伝わったのか、レオン王子は諦めたように嘆息してこちらに拳を突き出してくる。


「なら、俺がどうにか前に出て、可能な限り奴の注意を惹くから止めはコーイチに任せるぞ」

「ああ、任せろ」


 俺たちは拳を軽く合わせて笑い合う。


「私もお手伝いします」


 すると、ソラが間に入って俺たちの手に自分の手を重ねる。


「おそらく次が正念場になります。コーイチさんが自由に動けるように精一杯サポートしますから」

「俺もだけど、レオンのサポートもお願いね」

「はい、お任せ下さい」

「ヘヘッ、よろしく頼むぜ」


 俺たちは互いに笑みを浮かべて頷き合う。


 決意も新たに転がっていった巨人の方を見やると、香辛料による嫌がらせから立ち直った様子の奴が立ち上がるのが見える。


 せっかくあと一歩のところまで追いつめたが、また一からやり直しだ。

 だけど、勝つための情報は揃ったと思う。


 勝利のために後必要なのは……、


「よし、それじゃあ行こうぜ」


 思考を巡らせる俺の左右に、ソラとレオン王子が並んでくる。


「心配するな、俺たちが必殺の一撃をかませる隙を作ってやるから」

「コーイチさんは、どうか存分に力を振るって下さい」

「ああ、任せるよ」


 二人が巨人に向かっていくのを見送って、俺も移動を開始する。

 レオン王子たちとは違う方向に移動を開始すると、視界を取り戻した巨人が近付く二人ではなく、こちらへと視線を向けて来る。

 

これまでの戦いで、俺が一番脅威になると判断したようだ。


 レオン王子も言っていたが、一度でも俺を見失うと何処に行ったかわからなくなるそうなので、是が非でも視線を外したくないのだろう。


 だが、それはいくら何でも二人の獣人を舐めすぎじゃないだろうか?


「おらっ、よそ見してんじゃねぇぞ!」


 案の定、俺に気を取られて隙だらけの足元を、レオン王子に思いきり蹴り飛ばされて巨人は体制を崩される。

 そこへ精霊の力を借りたソラが加わり、巨人が二人の獣人たちの対応に追われることとなる。


「よし……」


 二人の活躍を見ながら俺は、巨人の死角への移動を開始する。

 その途中、


「ロキ……」


 俺と同化しているロキに話しかける。


「俺が考えていること、わかってるよな?」

『うん、わかるよ』


 姿こそ現さないが、心も繋がっているロキがテレパシーのように応えてくれる。


『大丈夫、きっと上手くいくよ。だから次の一撃でやっつけてやろう』

「ああ、やってやろう」


 俺たちは心の中で互いに頷き合うと、巨人と決着を着けるために動き出した。

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