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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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残された力は……

「……いいじゃねぇか」


 俺の作戦を聞いたレオン王子が、拳を打ち鳴らしながら歯を見せて笑う。


「いいぜ、俺はその作戦に乗ったぜ」

「はい、私もいいと思います」


 そう言ってソラは、両手を広げて自然体で立つ。

 すると、ソラの周囲に光る玉がいくつも現れたかと思うと、ドーナツ状となって彼女の手足を包み込む。


「世界樹が近付いたからか、精霊たちの力も借りられますので、一番槍はお任せください」

「いいの?」

「はい、間違いなくレオン様より私の方が適任ですから。勝つための最善策を取るべきです」

「……わかった。ソラに任せるよ」

「お任せ下さい」


 ソラは微笑を浮かべると、精霊の力を使って滑るように移動を開始する。



「それじゃあ、俺も本気で行くぜ」


 レオン王子は一度大きく深呼吸をして両腕を頭の上でクロスさせる。


「フン!」


 気合の掛け声を上げながら両腕を引くと、全身の筋肉が膨れ上がり、全身を金色の体毛が覆う。

 顔つきも人の顔から百獣の王、ライオンを思わせる顔つきになる。

 シドとレオン王子、王族だけが使える獣人のとっておきの秘儀、獣化の力だった。


「……凄いな」


 黄金に輝くライオンの姿となったレオン王子は、自分の姿を見て「ほぅ」と深くため息を吐く。


「今まで何度もこの力を使ってきたけど、今日は段違いに力が溢れて来る」

「それも、混沌との関係が断たれたことと関係あるのかな?」

「かもな……というより、これが本来の王の力なのかもしれないな」


 調子を確かめるように二度、三度と跳躍したレオン王子は、犬歯を剥き出しにして獰猛に笑う。


「コーイチ……この勝負、勝つぞ」

「言われなくても、そのつもりだ」

「出し惜しみはなしだ。いざという時には奥の手を使うからな」

「ああ、任せた」


 互いの健闘を祈るように拳を合わせて、俺たちはそれぞれの位置へと移動する。



「さて……」


 ソラとレオン王子が世界樹に向かって歩き続ける巨人へと向かう様子を見守りながら、俺は同化しているロキに話しかける。


「ロキ、大丈夫か?」

『何が?』

「無理するなよ。さっき俺をかばって巨人の攻撃を受けた個所がかなり痛むだろ?」


 自分で巨人に殴られた脇腹を触ると、堪らず顔をしかめたくなるほどの痛みが走る。

 おそらく骨は折れていないと思うが、きっと服の下は内出血を起こして酷い有様になっているだろう。


 俺ですらこれだけ痛むのだから、庇ってくれたロキの痛みはこれの比じゃないはずだ。


「正直に話してくれ。後どれぐらい動ける?」

『…………』


 真剣な表情で尋ねると、ロキが辛そうに大きく息を吐く。


『コーイチと一緒になっているからか、痛みはそんなにないよ。だけど、体が上手く動かせなくなってる』

「やっぱり……」


 実を言うと、さっきから自分の体が随分と重くなったような気がする。

 正確には重くなったというより、ロキからの恩恵が薄くなったような気がして、さっきまでの力が出せなくなったという方が正しい。


 だけど、これまでずっとロキには無理をしてもらっている。

 いざという時にロキの力がなくなったからといって、何一つとして諦める気はない。


「ロキ、ここから先は俺一人の力で戦うから、休んでいてくれ」

『えっ、コーイチ?』

「別にロキの力が必要なくなったわけじゃないよ」


 不安そうに顔を近付けてきたロキの頭を優しく抱き締めると、優しく撫でながら話す。


「これからロキは、いざという時のために力を温存してほしいんだ」

『いざという時?』

「うん、もう知ってると思うけど、俺たちの役目は巨人にとどめを刺すことだ。だけど、あれだけの巨体、バックスタブのスキルで不意を突いても、そう簡単には倒しきれないはずだ」

『そこで、ボクの出番ってこと?』

「そういうこと、その時は必ず来るから手伝ってほしい」

『わかった』


 ロキは声に元気を取り戻すと、嬉しそうに頬擦りしてくる。


『その時が来たらボクの力全部あげる。だから絶対に奴を倒そうね』

「ああ、やろう」


 半透明なので、いつものフサフサの毛とは違う感覚のロキの頭を撫でまわしながら、俺は彼女の言葉に引っ掛かりを覚えていた。


 ボクの力を全部……か。


 俺たちの中で間違いなく最強のロキだが、彼女とて無敵ではない。

 話しぶりから下手な嘘を吐いている様子はなさそうなので、俺のように痛みはないのかもしれないが、それでも確実に深刻なダメージを負っているのは間違いない。


 巨人との戦闘に勝つのは当然だが、ロキのためにもなるべく早く決着をつけたいところだ。


「ロキ……絶対に勝って、皆で一緒に帰ろうな」

『うん、そしたら街の近くの丘の上で、皆でひなたぼっこしようよ』

「いいね、約束だ」

『うん、約束』


 ロキは俺の頬をペロリと舐めると、休むために俺の中へと消えていく。

 これでロキの力の恩恵を受けることはできなくなるが、それでも俺には自由騎士の力がある。


「…………ロキ、約束だからな」


 俺は再度確認するように呟くと、この約束は何が何でも守って見せると強く願いながら、一番槍を務めるソラに向けて作戦の開始する合図を送った。

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