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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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全員出撃!!

 レオン王子の援護もあり、安全圏まで退避することに成功した俺は、担いでいたソラを下ろして肩で大きく息を吐く。


「はぁ……どうにか助かった」

「す、すみません。重かったですよね」

「何言ってんのさ! ソラが謝る必要なんてないし、むしろ感謝しかないよ!」


 恐縮するソラに、俺は激しくかぶりを振って彼女の手を取る。


「あの時、ソラが来てくれなかったら本当に終わってたよ。それよりさっきはどうしたの? いつの間にあんな力を?」

「あ、あれは……その、変な話ですけど、この場所に来てから凄い調子がいいんです」


 ソラは控え目に膨らんだ胸に手を当てると、ホッと艶っぽいため息を吐く。


「いつもは胸の辺りに重りが入っているような感じがして、ちょっとしたことで息苦しくなるのですが、今はその重しが嘘のようになくなって背中に羽が生えたように軽いんです」

「それって……」


 何となく理由が思いついた俺は、周りを見渡しながら思いついたことを話す。


「狭間の世界に来たから、混沌なる者の影響を受けなくなったんじゃない?」


 出会った時のソラがずっと不調だった理由は、母親のレド様から引き継いだ召喚魔法の力の内、混沌なる者を封じるための力を、自分の意思に関係なく搾取され続けていたからだ。


 それはエルフから魔法技術を教わって力を制御できるようになっても変わらず、奪われる量こそ減っても、常に力の消費を強いられるのは変わらないはずだ。


「だけど、この世界では混沌なる者との関係が断ち切られてるのだとしたら? そう考えると、ソラの不調が全くない理由の説明になると思うんだけど……」

「そう……かも。いえ、そうだと思います」


 ソラは小さく何度も頷くと、顔を上げて真っ直ぐこちらを見る。


「コーイチさん、今の私ならお力になれると……いえ、一緒に戦わせてください」

「えっ、でも……」

「お願いします。私も、皆と一緒に戦いたいんです」


 そう言って俺の手を取ったソラは、巨人に囚われているレオン王子へと視線を送る。


「あんな状態になっても戦っているレオン様を見たら、このままおとなしく待っているだけなんてできないです。だから私にもレオン様を助ける手伝いをさせて下さい!」

「ソラ……」


 ソラに必死の表情で懇願されても。俺は素直に頷くことはできないでいた。


 俺を助けてくれた胆力や、巨人の腕を蹴り飛ばした威力を見ても、確かにソラの実力はかなり高い。


 だが、実際の戦いは、運動神経が高いだけじゃ……単に戦闘能力が高いだけでは生き残ることはとても難しい。

 特に相手と対峙した時に感じるプレッシャーと死に対する恐怖は格別で、幾度となく経験しても、いまだに足が震えないように耐えるだけで必死だ。


 俺としては、誰よりも優しいソラには戦いなんて野蛮なことはやってほしくないが、彼女のただ待っているだけは嫌だという気持ちも痛いほどわかる。


「コーイチさん、お願いします!」

「う、うん、でもだね……」


 結論が出ず、煮え切らない態度を取っていると、


『いいじゃん。ソラにも戦ってもらおうよ』


 ロキが顔を近付けてきて、硬い表情のままのソラの顔をペロリと舐める。


『今のソラならそう簡単にやられないだろうし、いざとなったらボクたちが助ければ問題ないでしょ?』

「助けるってそう簡単に……」

『できるよ。それにあの人を助けるには、ソラの協力が絶対に必要だよ』

「レオンを?」

『うん、そうだよ』


 ロキは大きく頷くと、こちらを見てニヤリと笑う。


『ソラとコーイチ、二人で力を合わせれば間違いなくあの人を助け出せるよ』


 そう前置きして、ロキはある作戦を俺たちに話す。



 レオン王子を助けられる。


 ロキに可能性を提示された俺は、救出作戦へソラの参戦を許可することにした。

 ソラの熱意に負けたというのもあったが、ロキの言葉が事実であれば、彼女がいるといないとでは作戦の成功率に大きく差が出るからだった。


「ふぅ……」


 緊張をほぐすように大きく息を吐いた俺は、こちらに来ようとジタバタともがいている巨人を見る。


 内部でレオン王子が激しく抵抗しているからか、巨人の左半身は剝き出しの骨となっており、右半身も筋肉があるところとないところがある影響で、まともに動けていない。

 埋まって見えていない下半身は機能していないのか、それとも最初からないのか、立ち上がって歩いてこないのはありがたい。


 圧倒的な戦力差はあるが、こちらのタイミングで仕掛けられるのはありがたい。


「ソラ……」


 俺は万が一に備えて巨人からは視線を外さずに、隣で体をほぐしているソラに話しかける。


「わかってると思うけど、無茶だけはしちゃダメだからね」

「大丈夫です。それよりコーイチさんの方こそ気をつけて下さいね。危険なのは私より圧倒的にコーイチさんの方なんですから」

「そう……だね。でもこの無理は、通す価値はあると思うから精一杯頑張るよ」

「もう……」


 ソラは呆れたように小さく嘆息すると、手を伸ばしてロキの背を撫でる。


「ロキ、いざという時はあなただけが頼りなの。コーイチさんをお願いね」

『任せて。でも、ボクとコーイチが一緒なら無敵だから何も心配ないよ』

「そういうことじゃないんだけどな……」


 ソラはまだ納得いっていないようだが、俺としてはこの一戦を譲るわけにはいかない。


 レオン王子を混沌なる者から助け、誰も犠牲にせずに敵を倒して帰る。


 誰が何と言おうが、俺はハッピーエンドが好きなんだ。


「ふぅ……よしっ!」


 最後に両頬を叩いて気合を入れ直してからソラに笑いかける。


「いくよ、ソラ。準備はいい?」

「はい、いつでもどうぞ。作戦は完璧に覚えてますから」


 まるでシドのように犬歯を剥き出しにして笑うソラを見て、堪らず笑みを零して前を向く。


「行こう。皆でレオンを助けよう」

「はい!」

『大丈夫、ボクたちならやれるさ』


 全員で頷き合った俺たちは、ロキ考案のレオン王子救出作戦を実行すべく再び巨人へと向かう。

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