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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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少年の記憶

 辺りは完全な闇に閉ざされ、自分の体すらまともに見えないのに、子供の姿だけやたらはっきりと見えているのは何とも不思議な感覚だ。


 普通なら恐怖でパニックに陥りそうな状況ではあるが、それでも冷静にいられるのは見れば見るほどレオン王子に似た子供がいるのと、彼から敵意が感じられないからだった。


 ここが夢の中なのかどうかはまだ未確定だが、このまま座して待つわけにもいかないので、俺は勇気を出してこちらを見たまま黙っている子供に話しかける。


「ねえ、そろそろ俺の質問に応えてもらってもいいかな?」

『…………』

「俺は浩一っていうんだ。よかったら名前を教えてくれないか?」

『…………』

「…………ダメか」


 さっきから何度か話しかけているのだが、子供はこちらを見たまま何も応えてくれない。


 君は一体だれなのか?


 レオン王子なのか?


 ここに俺を連れてきたのは何のため?


 色々と聞きたいことがあるのだが、こうも無反応だと、どうしたらいいかわからない。

 話しかけるのが駄目ならせめて触れないかと前へ移動しようとするが、足をいくら動かしても少年と距離を詰めることができない。


 クソッ、一刻も早くレオン王子を助けなければいけないのに……、


「このままじゃ世界が……」


 逸る気持ちを必死に抑えながら、俺は尚も微動だにしない少年に話しかける。


「なあ、君はレオン王子なんだろ?」

『…………』

「教えてくれ、俺はどうしたらいい?」

『…………』

「早くしないと皆が……フリージア様たちが死んでしまうんだぞ!」

『フリ……ジア?』


 おっ、反応があった。

 顔を上げた少年には顔がなかったが、それに臆することなく呼びかける。


「そう、フリージア様。レオン、君の妹だ。彼女を助けるためにも力を貸してほしい」

『フリージア……助け……る』

「そうだよ。覚えているだろう。フリージア様はレオン、君の大切な妹だ!」


 ここが勝負どころだと、一気に畳みかける。


「そういえばさっき俺に助けてって言ってたよね? 俺はレオンを助けに来たんだ。何かできることがあるなら遠慮なく言ってくれ!」

『助け……る…………僕を?』

「そうだよ、俺は浩一。レオン、君の親友だ!」

『コーイチ……親友……』


 少年……いや、子供の姿をしたレオン王子は何度も『親友』という言葉を繰り返す。

 やはりレオン王子にとって、親友という言葉は特別な意味を持つのだろう。


 目のない顔でこちらを見て来るレオン王子に、俺は手を差し出す。


「レオン、お願いだ。フリージア様を助けるためにも、親友の俺を信じてくれ!」

『親友……』


 再度の親友という呼びかけに、レオン王子はよろよろと近付いてきて、震える手で俺が差し出した手を握る。


「――っ!?」


 驚くほど冷たいレオン王子の手が触れると、彼の姿が突如として掻き消える。



「えっ?」


 何処に行った? と周囲を探していると、


『どうして……どうして、仲良くできないの』


 背後から声が聞こえて振り返ると、漆黒の闇の中に何処かの部屋が浮かび上がる。

 石造りの部屋の奥、ギコギコと揺れるロッキングチェアに座る老婆の前で、跪く子供のレオン王子の姿が見えた。


『ねえ、ばあや。どうして……父上とおじさんは仲良くできないの?』

『それはとても難しい質問ですね』


 こっちのレオン王子にはしっかりと顔があり、目に涙を浮かべる彼に椅子に座る微笑を浮かべた老婆……クラーラ様が優しく諭すように話しかける。


『お二人とも、この国の未来を一生懸命に考え、どうしたら皆が幸せになれるかを必死に考えているから、衝突してしまうんです』

『違うよ! 僕は父上とおじさんの二人に仲良くなってもらいたいの!』

『ホッホッ、そうですな。なら、レオン王子がお二人の架け橋になって下され』

『僕が?』

『そうです。この国の王は、最も強い者がなるしきたり、ならレオン王子が誰よりも強くなって、お二人に仲良くするようにお願いするのです』

『うん、わかった。僕、きっと強くなる』


 レオン王子は元気よく頷くと、クラーラ様にお礼を言って部屋の外へと飛び出していった。



 どうやら俺が見ているのは、レオン王子の記憶のようだった。


 クラーラ様に決意の表明をしたレオン王子は、皆が認めるような立派な王になるべく、日々過酷な特訓をしていく。

 掲げた目標を遂行するため、必死に努力を重ねてレオン王子はみるみる力をつけていく。


 だが、そんなレオン王子にもある悩みがあった。

 それは王の証である獣化、先祖返りをして能力を飛躍的に上げる特殊能力を、いくら努力してもレオン王子は取得することができなかったのだ。


 頭打ちになりつつある自分の才能に苦悩する日々が続いていたある日、レオン王子は叔父であるハバル大臣に呼び出されたところである転機が訪れる。


『おう、来たか』

『おじさん……』

『フッ、伸び悩んでいるようだな。だが、安心しろ。この俺がお前を強くしてやる』


 そう言ってハバル大臣は、レオン王子を屋敷の地下へと招き、そこで彼にあるものを見せる。


『レオン、お前に世界を変える術を教えてやろう』


 そう言ってハバル大臣が指差す先には、ガラス張りの狭い部屋が見え、室内に五体のゴブリンが蠢いていた。

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