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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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爆破!爆発!!大爆発!!!

「くぅ……」


 爆風によって大きく吹き飛ばされた俺であったが、生憎と直撃を受けたわけじゃないので、難なく巨大な蝶の翅の上に着地する。


「あ、危なかった」


 熱風を身に受けながらも、自分がさっきまでいた場所を見やる。


「……あれ?」


 あれほどの爆発だったから、てっきり翅にまで被害が及んでいるのかと思ったが、爆心地どころか、その真下にも爆発の余韻どころか、黒く焦げている様子もない。

 まさか、翅に防火対策が施されているのか? と思って火炎瓶を投げた先を見やるが、そこにはまだどうにか燃えている小さな炎と、必死に消火活動をしている芋虫たちの姿が見える。


 ということはつまり、翅の弱点が火なのは変わりないが、あの爆発で翅に被害が出るようなことはないということだ。


「流石にそんなにおいしい話はない……か」


 これでもし翅に被害が出ていたら、調停者の瞳(ルーラーズアイ)の力で自爆させようと思ったのだが、どうやらそう甘くはないようだ。


 さらに、


「おわっ!?」


 消火活動が終わったのか、一部の芋虫たちの糸が再び飛んできて、俺は慌てて回避行動に移る。


「……っとと、どうする?」


 思わず腰のポーチに入った最後の火炎瓶へと手を伸ばしかけたが、これを使ったところで状況が変わるわけではないと思い直す。

 この一撃は、何としても有効打として使わなければならない。


「チッ!」


 そうこうしている間に再び赤い軌跡と一緒に鱗粉がパラパラと降って来るのが見えたので、俺は慌てて安全な場所まで退避する。


 再びの爆発に顔をしかめながら、次に備えるために鱗粉の出所を探そうと首を巡らせる。


 上から降って来るのだから、折れ曲がった翅の上部から降って来るものだと思ったが、不気味な黒い瞳と視線が合うだけで、見る限り鱗粉が降って来る様子はない。


 確か、鱗粉は蝶の翅の表面に付いているものだと思ったが、足を擦ってみても鱗粉が付く様子はない。


「……どうなってるんだ?」


 普通に考えてあの鱗粉が爆発しているのだと思ったのだが、もしかして違うのか?


 色々と志向を巡らせていると、俺の視界の隅に三度赤い軌跡と共にキラキラと光る鱗粉が映る。


「ヤバッ!?」


 これまでの二度で、爆発の範囲は理解している。

 鱗粉の範囲から逃げながら赤い軌跡が降って来る先を見やると、あの黒い巨大な瞳がある。


 やはり、あの爆発はあの瞳が原因だった?


 そう思っていると、黒い瞳の瞼が落ちて来て目を閉じる。

 一体何を? といくつもの疑問が頭に浮かぶが、黒い瞳から伸びる脅威を示す赤い軌跡が消える様子はない。


 安全な場所まで退避したところで振り返ると同時に、巨大な瞳がカッ! と大きく見開き、鱗粉があった場所で爆発が起きる。


「クッ!」


 熱風をまともに受けながら、やはり爆発の原因は黒い瞳にあることを確認する。

 鱗粉の秘密はまだわからないが、少なくとも爆発する瞬間を見極めることはできそうだ。


 やはりあの黒い瞳を、最優先でどうにかする必要があるな。


 そんなことを思っていると、再び巨大な瞼が開いて巨大な瞳がこちらを捉えてくる。


「だったら……」


 次の爆発が来ることを予期した俺は、消火活動を終えた様子の芋虫たちの中へと突っ込んでいく。

 途中、芋虫たちから次々と糸が飛んでくるが、決して早くない攻撃、しかも調停者の瞳によって攻撃の予測が見えているので当たることはない。


「よっほっ……よし、ここなら」


 多くの芋虫たちの近くまで辿り着いたところで、再び黒い瞳から赤い軌跡が伸びて来て、何処からともなく鱗粉が現れる。


「おいおい、マジかよ」


 周囲に芋虫たちがいるのに、構わず爆発させるつもりなのか?


 爆発の範囲を確認して俺は慌てて逃げ出すと、危険を察知した様子の芋虫たちも慌てて逃げようとする。

 だが、長い脚がなく、地面を這うしかできない芋虫たちの歩みは遅い。

 次の瞬間、四度目の爆発が起きて範囲内にいた芋虫たちが爆風によって吹き飛ぶのが見える。


「あの芋虫は、お前の子供じゃないのかよ!」


 子供を盾にしようという卑劣な作戦を取っておいてなんだが、まったく容赦のない巨大な蝶の判断に思わず文句が漏れる。


 しかし、そんな苦情が奴に届くはずもなく、無機質な黒い瞳が俺を睨んでくる。


「クソッ、なんとかしないと……」


 このままではジリ貧だと思いながら、黒い瞳への対象法を考えていると、不意打ちのように大きな爆発音が聞こえてくる。


「――っ!?」


 全く予期してなかったタイミングでの爆発に、俺は思わずその場で身を固くする。



「怪我は……ない」


 てっきり赤い軌跡を見落として爆発に巻き込まれたかと思ったが、そういうわけじゃないようだ。


「それに今の爆発は……」


 俺のすぐ近くではなく、結構離れた場所から聞こえた。


 まさか、反対側でも始まったのか?


 そう思っていると、


「キャアアアアアアアアアアアアアアアァァッ!」

「ソラ!?」


 絹を切裂くような悲鳴が聞こえ、俺は顔を上げて声のした方へと目を向ける。


 あのロキがそう簡単にやられるはずがない。

 だから間違いであってほしい。


 そう願う俺の目に、爆風によって大きく吹き飛ばされるソラとロキの姿が見えた。

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