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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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接近を阻む風

 ソラが感じたという甘いにおいを辿って、ロキは風を切って颯爽と駆ける。


 最短距離を駆け抜けたいところだったが、目的地までは黒い竜巻を大きく迂回する必要があるので、なるべく風の影響を受けない位置を陣取って進む。


 だが、それでも身体に受ける風は強く……、


「おわっ!?」

「コーイチさん!」


 突如として吹いた強風に体が浮きかけるが、間一髪でソラが手を伸ばして支えてくれる。


「大丈夫ですか?」

「あ、ああ、ありがとう」


 俺はソラに礼を言いながら、流れてきた汗を拭う。

 油断していたとはいえ、まさか風に攫われそうになるとは思わなかった。


「とにかく、風にも気を付けないといけないね」

「はい、もしもの時は、私がしっかり支えますから」

「……うん、お願いね」


 今しがた情けない姿をさらしてしまった手前、本当は俺がソラのことを守りたいんだけどね……と言いたい気持ちをグッと堪えて、俺はロキの背中にしっかり掴まる。


「わんわん!」


 俺たちが背中に張り付くと同時に、ロキから「敵だよ!」と声がかけられる。


「コーイチさん、虫が!」

「ああ、見えている」


 顔を上げると、俺たちを先回りしていたのか、前方に新たな虫人が二体、強風に煽られながらも迫って来るのが見えた。


「コーイチさん、どうしましょう」

「そう……だな」


 前述のとおり既に投げナイフはない。

 搦め手のアイテムもこの強風では役に立ちそうにないので、戦うなら腰のナイフだけが頼りだ。


 だが、いくらソラが支えてくれるとはいえ、ロキの背に乗ったまま戦えるのか?


 ナイフの入った鞘をそっと撫でながら息を飲むと、


「わんわん!」

「ロキ?」


 ロキから「任せて!」と元気な声が飛んでくる。


「任せてって……あの虫人をか?」

「わん、わんわん!」


 俺の問いかけに、ロキは「いい案があるんだ」と言って鼻をスピスピと得意気に鳴らす。

 自分から主張することが少ないロキがここまで言うということは、本当にいい案が浮かんだのだろう。


「わかった!」


 俺は大きく頷くと、ロキの頭を撫でながら話しかける。


「この場はロキに任せた。思いっきりやってやれ!」

「わん!」


 ロキは嬉しそうに頷くと、さらに速度を上げる。


 俺とソラは目を合わせて頷き合うと、ロキの邪魔にならないように身を伏せる。


「アオオオオオオオオオオオオオオオオォォォン!」


 戦えることを喜ぶようにロキは遠吠えを上げると、二体の虫人へと肉薄する。


「ギャッ!」


 高速で迫るロキに、虫人たちは四本のうでを勢いよく振り下ろすが、巨大狼は難なく回避してくるりと反転する。


「わっふう!」


 虫人たちにお尻を向けたロキは「せ~の!」と掛け声をかけ、後ろ脚を勢いよく振り上げる。


「ギギャッ!」

「ギャアギャア!」


 まるで馬が背後に立った気に入らない者を蹴り飛ばすように、ロキの後ろ脚で蹴られた虫人たちは、悲鳴を上げながら大きく吹き飛ばされる。


「うおっ!?」


 ロキの背中から振り落とされないように、必死に黒い毛を掴みながら蹴り飛ばされた虫人たちを見る。


 ロキの凄まじい脚力で吹き飛ばされた虫人たちの先には、轟々と音を立てて渦巻いている黒い竜巻が見える。


「あっ……」


 小さく声が漏れると同時に、二体の虫人が黒い竜巻に呑みこまれる。

 黒い竜巻に呑まれた虫人たちは高速で回転しながら上へ上へ、天高く舞い上がるのが見える。


 やがて一番上にまで達したのか、竜巻の先から虫人たちが吐き捨てられたように飛び出し、錐もみ状態になって落ちてくる。

 次の瞬間、二体の虫人が成す術なく地面に激しく叩きつけられる。


「……ギッ……ギッ」

「ギャッ…………ァッ」


 落下した虫人たちは竜巻の中で激しく攪拌されたからか、手足があらぬ方向に曲がり、体中から紫色の血が噴き出していた。

 息も絶え絶えといった様子の虫人は、ビクビクと痙攣するが立ち上がる様子はない。


「わふっ?」

「あっ、うん……そうだね」


 ロキの「ねっ、いい案でしょ?」という言葉に、俺は呆然と頷く。

 確かにこれなら虫が何処に寄生していようとも、問答無用で倒せるかもしれない。


 だが、もしあの中に巻き込まれるのが虫人でなく自分だったらと考えると……背中に冷たいものが走るのを自覚する。

 竜巻を抜けるためには、何が何でもヴォルフシーカーを使えるようにならなければならないようだ。


 予想以上に凄まじい竜巻の威力を目の当たりにした俺は、ロキに「気を付けて進んでね」と釘を刺しておいて目的地を目指した。



 その後も度々やって来る落雷を避けながら進み、ソラが違和感を覚えたという場所までやって来た。

 そこは何もない平原が広がっているだけで、これといって何か特別なものがあったり、特定の敵がいる様子はない。


 ただ、


「何だろう……確かに甘いにおいがする」


 鼻をスンスン鳴らしてみると、確かにスイカのような甘いにおいがするような気がする。


「ソラの言う通りだったけど、何処からにおってくるんだ?」

「あっ、コーイチさん。あれです!」


 すると、何かに気付いたソラが俺の肩越しから手を伸ばして上空を指差す。


「空に何かいます。とても大きな……何かが……?」

「えっ?」


 そう言われてソラが指差す先を目を凝らしてみると、遥か上空に透明の巨大な何かが飛んでいるのが見えた。

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