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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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みんなの力を借りて

「ソラが……」

「ええ、そうです」


 ネロさんは大きく頷くと、自身に起きた事を話す。


「突如としてソラさんの声が聞こえたと思ったら、我々の前に扉が現れたのです」

「扉……ですか?」

「そうです。見たこともない不思議な扉でした」


 俺の時とは何だか違うなと思いながら、ネロさんの話の続きを聞く。


「続けて世界に破滅が訪れようとしているから、大切な家族の命が危ないから助けて欲しい、と。扉を開ければエルフの里まで飛べるけど、命の保証はできないから無理はする必要がないと言われました」

「……それでも、来てくれたんですね」

「他ならぬソラさんの……コーイチさんを救って欲しいという願いでしたからね」


 ラドロさんが隣にやって来て、ネロさんの話を引き継ぐ。


「あの時受けた恩を返せるのなら、たとえ火の中だろうと水の中だろうと躊躇うことなく参上しますよ」

「ラドロさん……」


 目を向けたラドロさんは照れたように笑うと、周囲を見渡す。


「僕たち以外にも喚ばれた者がいるようですが、きっと同じように迷うことなく扉を潜ったと思いますよ」

「そう……ですか」


 ラドロさんからこれまで出会った人たちが助太刀に来てくれた理由を聞いて、俺は思わず武者震いをする。


 限られた人数、限られた戦力で厳しい戦いを強いられると思っていたが、まさかグランドの街のクラベリナさんに自警団の人たちや、これまでの旅路で出会った人たちが助っ人として参戦してくれるとは夢にも思わなかった。


 これがレド様が言っていたとっておきの策というやつか。


 召喚魔法に必要なのは相手との深い繋がりであり、ソラは今までそれをレド様と関係がある俺としか繋がることができなかった。

 それがたった一晩、レド様から指南を受けたことで何かきっかけを掴むことができたのだとすれば、これほど喜ばしい成長はないと思った。


「さあ、コーイチさん」


 ソラの成長に感動しているに俺に、ラドロさんが手を伸ばしてくる。


「僕たちがコーイチさんたちを、混沌なる者のところまで連れて行きます」

「もうすぐソラさんも来ます。それまでに全ての敵を蹴散らしますよ」

「ええ、勿論です」


 ミーファたち帰らぬの森の動物たちもいるし、ここまで強力な戦力が揃ったのなら、迎え撃つどころか攻勢に出ることもできそうだ。


「ぷぅ」

「ぷぷぅ」


 さらに二羽のトントバーニィも俺の肩に乗って「いこう」と鼓舞してくれる。


「うん、いこう」


 二羽のトントバーニィを順番に撫でた俺は、ラドロさんの手を取って笑いかける。


「まずは残る二体のメガロスパイダーを倒しましょう」

「わかりました。僕と姉さんが前衛を務めますから、コーイチさんは止めをお願いします」

「急ぎますよ。少し嫌な予感がします」


 何か意味深なことを言って、ネロさんが先陣を切るように駆け出す。


「……何でしょう」

「わかりません。ただ、姉さんがそう言うからには何かあるはずです。急ぎましょう」

「わかりました」


 俺はラドロさんと頷き合うと、ネロさんに続いてまずは自警団の面々が戦っているメガロスパイダー目掛けて駆け出す。



「……さあ、いきますよ」


 先頭を走るネロさんは大きく跳ぶと、後方の自警団の人たちを一気に飛び越えて最前線へと躍り出る。


「あなたたち、退きなさい」


 メガロスパイダーの八本の足と吐き出す糸に苦戦している自警団の人たちを追い抜き、ネロさんは巨大な蜘蛛の右側の足を払う。

 たったの一蹴りでメガロスパイダーの四本の足を一気に払うと、巨大な蜘蛛の体制が大きく崩れる。


「ラドロ!」

「わかってます」


 ネロさんに名前を呼ばれたラドロさんは、足掻くメガロスパイダーの脚を掴むと、


「うおおおおおおおおおおおおおぉぉっ!」


 雄叫びを上げて、掴んだ足を力任せに引き千切る。


「ぷぅ」

「ぷぷっ」


 さらにそこへ、そうめんとしらたきが追撃を仕掛けてさらに二本の足を切り裂く。


「コーイチ!」

「わかってます!」


 ネロさんの声に、遅れてやって来た俺は自警団の間を抜けて前へと出る。


 ここまでお膳立てしてもらって、倒せませんでしたなんて許されない。


 シドたちみたいにカッコよく飛んで空中から攻めるなんてことはできないので、必死に足を動かしてメガロスパイダーの背中側へと回り、黒いシミが見えたところで、


「そこっ!」


 俺は掛け声と共にナイフを投擲する。

 投擲したナイフは真っ直ぐ黒いシミへと吸い込まれ、


「――ッ!?」


 メガロスパイダーは大きくのけ反ったかと思うと、そのまま力なく倒れる。


「……よしっ!」


 背中にナイフを生やしたメガロスパイダーが動かなくなったのを確認した俺は、小さくガッツポーズをして投擲した武器を回収する。


 これはかつてヴォーパルラビットを狩った時に気付いたことだが、黒いシミに対しては直接でなくても、武器の投擲でも貫くことができるということだ。

 ただ、これはその時手にしていたナイフでしか効果は発揮せず、他の武器ではできなかったので、バックスタブをするためにもナイフは複数本持っておきたい。


「よし、これで残るは……」

「いえ、もう終わりの用です」


 続けて最後のメガロスパイダーへ向かおうとすると、彼方を見ていたネロさんが前方を指差す。


「どうやらあの二人が、倒したようです」

「あの二人……」


 ネロさんが指差す先を見ると、仰向けに倒れているメガロスパイダーの前で、クラベリナさんにペコペコと頭を下げている泰三の姿が見えた。

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