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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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雪辱を果たす時

「な、何が……」


 一体どうなっているんだ。


 急いで加勢に行こうと全力で走って戻ってみれば、ノルン城以来のサイクロプスの姿が見え、さらにそいつをクラベリナさんが圧倒していた。


 ここからグランドの街まで、どれだけ離れていると思うのだ。


 泰三が出発してからすぐに出発したとすれば可能性はあるかもしれないが、こんなことになるなんて予想ができないのに、リムニ様を守るはずのクラベリナさんがグランドを離れるなんて考えられない。

 自分で何を言っているのか訳が分からないが、黒いマントに赤いビキニアーマーを来た戦士なんて他にいるはずもないので、俺はニヤリと不敵に笑っているクラベリナさんに話しかける。


「あ、あの、クラベリナさん……」

「ふむ、暫く見ない内にコーイチも男の顔になったが、再開のハグは暫し待て」

「ええっ!?」


 シドより大きいクラベリナさんの胸を見て思わず赤面する俺に、金髪の戦士は俺たちの背後を指差す。


「ほら、援軍が来たからまずは敵を蹂躙しようではないか」

「「えっ?」」


 その言葉に俺たちが揃って振り返ると、


「タイゾー、それにコーイチも久しぶりだな!」

「俺たちが来たからもう大丈夫だぞ!」

「一緒に世界を救おうぜ!」

「み、皆……」


 青と白の自警団の制服に身を包んだ戦士たちの登場を見て、泰三が目を大きく見開く。


「ど、どうして?」

「細かい話は後だ。今はあのデカい蜘蛛を倒すのが先決だぜ」

「は、はい!」


 その一言で何かを思い出した泰三は、俺の方を見て真顔になる。


「浩一君、ここにはサイクロプスだけじゃなく、メガロスパイダーもいます……それも三体も」

「そ、それって……」

「はい、僕たちにとって因縁深い敵です」


 泰三が頷くのを見て、俺はこの世界にきて初めて出会ったここ優しき人たち、テオさんとエイラさんのことを思い出す。


 死にもの狂いでノルン城を攻略した俺たちに優しく手を差し伸べてくれ、グランドへと向かう迷いの森を抜ける時に現れたメガロスパイダーによって二人は……、


「――っ!?」


 俺は思い浮かんだ当時の凄惨な光景を振り払うように強くかぶりを振ると、同じように苦悶の表情を浮かべている泰三と目を合わせる。


「泰三、やろう」

「はい」


 互いに頷き合った俺たちの想いは一つだ。


 あの時の雪辱を晴らす。


 ここでメガロスパイダーを倒したところで、テオさんとエイラさんが戻って来ることはない。

 だが、それでも俺たちにとってあの蜘蛛の魔物を倒すことは、何が何でも果たしておきたい悲願だった。


 現れたメガロスパイダーは全部で三体という話だ。

 今は獣人の戦士たちが他の魔物たちと一緒に抑えてくれおり、その内の一体は自警団の戦士たちが加勢に向かった。


 ならばここは……、


「泰三、俺たちで残る二体を倒すぞ」

「わかりました」


 素早くターゲットを定めた俺たちは、それぞれ別れて動き出す。


 過去に奴を倒したクラベリナさんに一体任せて、俺たちで協力して一体倒すことも考えたが、そこは男の意地というやつだ。


「浩一君、先にいきますね」


 槍を構えた泰三が頷くと、俺を置いて飛び出す。

 泰三の視線の先には、糸で捕らえた獣人の戦士を今にも捕食しようとするメガロスパイダーがいる。


「させません、はああぁぁぁ!」


 地面を強く蹴って大きく跳んだ泰三は、槍を大きく振りかぶると、


「ディメンションスラストスロー!」


 スキル名を叫びながら、愛用の槍を投擲する。

 空気を切り裂きながら飛んだ泰三の槍は、不気味な蜘蛛の身体を貫くかと思われたが、


「――っ!?」


 人より視界が広いからか、メガロスパイダーは八本の足をシャカシャカ動かしてその場から飛び退いて回避する。


「皆さん、今のうちに掴まった人の救出を!」


 叫びながら着地した泰三は、勝手に戻って来た槍をキャッチして逃げるメガロスパイダーへと肉薄していく。



「……よし」


 泰三の活躍を目にして勇気をもらった俺は、残るメガロスパイダーへと突撃する。

 正面切って戦うのは得意ではないが、今の俺には戦う術がある。


「俺だって、あの時とは違うんだ!」


 気合を入れ直した俺は、調停者の瞳(ルーラーズアイ)を発動しながらナイフを構える。


 三体目のメガロスパイダーは、他の二体と違って戦況を見守るように一歩引いた場所におり、俺は奴と一対一で向き合うことになる。


「さて……」


 メガロスパイダーがどのような戦い方をするかは、実を言うとあまり良く知らない。

 迷いの森の時は恐怖で震えることしかできず、また派手に立ち回るクラベリナさんに見惚れてメガロスパイダーにまで目がいかなかった。

 だから立ち回り方や有効手段なんて何にもわからないが、それは戦いながら学んでいけばいい。


 そう思っていたが、


「ククク、ニンゲン……シカモ、ジユウキシトハナ」

「……えっ?」


 いきなりメガロスパイダーの口から機械音声のような声が聞こえ、俺は眉を顰める。

 かつて牧場で対峙した人語を介す狼の魔物を思い出していると、目の前のメガロスパイダーに変化が起こる。


 蜘蛛の背中がバキバキと音を立てながら割れたかと思うと、中から何かが湧き出て来る。

 メガロスパイダーから出てきたヌラヌラと怪しく光る何かは、よく見ると人の形をしているように見えた。


「まさか……」


 髪の長い女性を背中から生やしたメガロスパイダーを見て、俺の脳裏にある名前が思い浮かぶ。


「こいつ……アラクネなのか?」

「ホウ、ワガナヲシッテイルトハ、オドロキダナ」


 俺の疑問に、美しい女性の姿となった魔物はニヤリと笑ってみせた。

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