表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1006/1097

帰らぬの森に現れる王

「おいおい、こいつは……」


 ゴブリンの死体を見たシドは、頭の上の耳を忙しなく動かしながら周囲へ目を配る。


「どうなってるんだ。もう森の中に魔物たちが侵入しているじゃないか!」

「シド、落ち着いて」


 焦ってもと来た道を戻ろうとするシドの手を取り、俺はここについて説明する。


「ここはエルフの結界に触れたものが飛ばされる帰らぬの森だよ。だから、ここに魔物がいても別に不思議じゃない」

「じゃ、じゃあ、他にも魔物が……」

「うん、調べてみよう」


 俺はシドに周囲の警戒を任せると、目を閉じてアラウンドサーチを発動させる。


 以前はロキと一緒だったこと、すぐにラヴァンダさんが迎えに来てくれたのでこの森での滞在時間は殆どなかったので、索敵したことはない。


 果たして、この森では何が見えるのか……


 自分がここまで来た方角を意識の外に外しながら、脳内に広がる索敵の波に集中する。

 最初にポツポツと赤い光点が浮かんだと思ったら、その先に大量の赤い光点が見えたところで、俺は目を開けて大きく息を吐く。


「……いたか?」

「うん、いたね」


 俺は赤い光点が浮かんだ方向を指差しながら、森の奥を睨んでいるシドに尋ねる。


「どうする? 様子だけでも見ておく?」

「そうだな。う~ん……」


 シドはおとがいに手を当て、渋面を作って唸り声を上げる。

 即断即決をすることが多いシドにしては珍しいと思いながら、俺は再びアラウンドサーチを使ってみる。


 そうして再び赤い光点の様子を見たところで、


「……あれ?」


 あることに気付き、俺は目を開けてシドに見たことを報告する。


「シド、何だか様子がおかしい」

「何がだ?」

「この先の様子だよ。何故かわからないけど、こっちに来る気配がない」


 アラウンドサーチでは相手の姿は見えないが、どっちに向かって移動をしているかは見ることができる。

 だから移動方向を見極め、安全な場所を見極めようと思ったのだが、どういうわけか赤い光点が動いている様子はない。

 それどころか、赤い光点同士が重なっているのも確認できた。


 それはつまり、


「もう既に戦闘が始まっている?」

「かもしれない……」


 シドの疑問に、俺は顎を引いて小さく首肯する。


「そういえば……」


 さっきの黒猫が消えて行った方向も、アラウンドサーチで反応があった方角だった。

 ということは、もしかしたらあの先にはあの黒猫が語った王がいるかもしれない。


 王というのが何なのかはわからないが、黒猫と会話で来たのだから、その王とコミュニケーションを取ることはできるはずだ。


 となれば、俺たちがする行動は決まっている。


「シド、行ってみよう」

「コーイチ?」

「あの先にはきっと、俺たちの力になってくれる王がいるはずだ」

「王ってあの黒猫が言ってたやつか?」

「うん、王が誰だかわからないけど、魔物と戦ってくれるなら協力できるはずだ」

「そう……だな」


 俺の推察を聞いたシドは、黒猫が座っていた木の方を見て頷く。


「確かに王とやらの存在は気になるからな。様子を見ておくのも悪くないな」

「急ごう。魔物が優勢だったら、加勢してでも助けたい」

「……まあ、戦力は多いに越したことないからな」


 シドから了承を得た俺は、三度アラウンドサーチを使い、様子を見るのになるべく安全な場所を探って移動を開始した。



 途中、何度かアラウンドサーチを使って赤い光点の位置を確認しながら俺たち昼間でも暗い森の中を進む。


「あっ、コーイチ」


 その途中、先を行くシドが何かに気付いて足を止める。


「見てみろ。魔物たちの死骸だ」

「えっ、あれが?」


 シドが指差す先を見た俺は、思わず眉を顰める。

 そこにあったのはどす黒い紫色の池のみで、これまで散々見て来た魔物たちの死骸とはかけ離れたものだった。


「シド、あれが本当に魔物たちの死骸なの?」

「ああ、間違いない。あたしの鼻がそう言っている」


 シドは自分の鼻の頭を指差しながら、顔をしかめる。


「あれは間違いなく魔物だったものさ……信じられないかもしれんが、体全体が溶けて液体になったみたいだ」

「溶けた……って、どうやって?」

「そんなの知るかよ。ただ、この森にはその手のバケモノがいるってことだろ?」

「そ、そういえば、そんな生物がいるって聞いたような……」


 帰らぬの森には、エルフでも死んでしまうほどのかなり危険な生物がいるという話を思い出した俺は、周囲を見て背中に冷たいものが走るのを自覚する。


 森全体がかなり暗いので気付かなかったが、シドが指差した場所以外にも同じような魔物が溶けてできた黒い池がいくつも見て取れる。

 あの黒い池の一つ一つが、一匹の死骸からできているかどうかは不明だが、かなり広範囲に渡って池ができていることから、既にかなりの数の魔物が倒されていると思われた。


 こんな凄まじい力を目の当たりにすると、何としても森の生物たちの協力を取り付けたいと思う。



 そんなことを思っていると、前方から獣の咆哮が聞こえ、俺は顔を上げてシドと顔を見合わせる。


「……えっ?」


 その声を聞いた俺は、顔を上げてシドの方を見る。


「シド、今の声……聞こえた?」

「ああ、聞こえた」


 シドが頷いて顎で先を示すので、俺も頷いて彼女と一緒に駆け出す。


 もう迷っている場合ではなかった。

 何故なら聞こえた獣の咆哮は、俺たちにとって馴染み深い声だったからだ。


 先に進むと黒い池以外にも形の残っている魔物の死骸が見えてくる。

 ゴブリン、バンディットウルフ、リザードマンにトロル……そしてイビルバッド。


 今まで見た魔物たちに加え、見たこともない魔物もいくつがいたが、その正体が何かを探っている場合ではない。


 俺たちが聞いた声は、本来なら絶対に聞こえるはずのない声だったからだ。


 逸る気持ちを抑え、必死に足を動かして足場の悪い森の中を進む。

 不自然に倒れた木を潜り、二体目のイビルバッドの死体を乗り越えた先で、


「アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォン!」


 声高々に突撃を命じるロキと、


「みんな、がんばれええええええええええええええぇぇ!」


 ロキの背に乗り、うどんを胸に抱いて必死に応援の声を張り上げるミーファがいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ