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チートスキルで無双できない人に捧げる異世界生活~現実を捨ててやって来た異世界は、思ったより全然甘くはありませんでした~  作者: 柏木サトシ
第二部 第四章 暁に燃える森

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自動人形無双

 獣人、エルフの連合軍と、混沌なる者の分体から生み出された魔物たちの戦いで先陣を切るのは、思わぬ者たちだった。


「わ、わわっ、凄い!」


 興奮する泰三の視線の先で、エルフの魔法によって生み出された意思無き魔法生命体、自動人形(ゴーレム)が丸太の様に太い腕を振るってゴブリンの群れを吹き飛ばす姿だった。


「土の塊なのにあんな滑らかに……一体、どうなっているんだろう」

「おい、泰三。俺にも見せてくれ」

「あ、ああ、すみません。どうぞ……」


 そう言って泰三が半歩下がると、俺の目に空中に浮かんだ四角い窓が見えてくる。


 窓の先は、まるで緑色の絨毯かと見紛うほどの大量のゴブリンの群れ、そこに五体の自動人形たちが迫りくる緑の小人たちの波をものともせず、剛腕を振り回して無双していた。

 愛嬌のある見た目に反して、自動人形たちが腕を一振りする度にゴブリンたちが面白いほど吹き飛び、木や岩に叩きつけられて次々と倒されていく。


「……凄まじいな」

「はい、ちゃんと余計な攻撃を喰らわないように立ち回っているのは、流石としか言いようがありません」


 そう言って泰三が顔を上げて見やる先には、俺たちが見ている窓とは別の窓の前で両手を掲げているエルフたちだ。


 あそこにいるエルフたちは、魔法で自動人形を生み出した者たちで、遠くの光景を見ることができる魔法の窓を駆使して、土人形たちを遠隔操作しているのだ。


「しかし、こんな偵察に便利な魔法があるなんて……」


 こんな便利な魔法があると知っていれば、カナート王国での戦い方ももう少し有利に進めることができただろうし、犠牲者も少なくできたのではないだろうか。



「最初に言っておきますが、この魔法は何処でも使えるものではありませんのよ」


 窓をジッと見つめている俺に、この魔法を使った張本人、フィーロ様から声がかかる。


「残念ながらこの魔法は、森の結界の中でしか作用しませんの」

「そうなんですか?」

「ええ、もしこの魔法が自由に使えるのなら、お城に潜んでいた不届き者を見逃すはずがありませんもの」

「そう……ですね」


 悔しそうに顔を伏せるフィーロ様を見て、彼女もまた同じ気持ちであることを知り、頭に血が上っていた俺は冷静さを取り戻す。


 ゴブリンたちを怒涛の勢いで蹴散らしている自動人形たちも、この森の土でなければ生み出すことができず、活動範囲も限られるということだ。


 今回、初手で自動人形という命無き戦士を使うことにしたのは、際限があるかどうかわからない魔物たちとは違って、こっちは人数に限りがあるからだ。

 遠隔操作されている自動人形は当然ながら攻撃を受けても怯むことはないし、操作するエルフが俯瞰視点から見ているので効率よくゴブリンたちを蹂躙していく。


 一見すると無敵の強さを持っているように見える自動人形たちだが、実は攻撃を一撃繰り出す毎に体が僅かに削れており、一定以上削れると形を保てなくなって全壊してしまうという


 今回、俺たちが用意した自動人形は全部で五体、全ての土人形が全壊するまでどれぐらい敵を削れるかわからないが、いつ出番が来てもいいように準備はしておくべきだ。


 ただ、その前に打てる手は打っておきたい。

 特に魔物の数がこれまでの比じゃないぐらい多いので、戦力の拡充はしておきたいと思った。



「コーイチ」


 すると丁度よく、俺たちと別行動をしていたシドが現れて声をかけてくる。


「ちょっと探してみたが、面白そうな奴がいたぞ……どうする?」

「どうするって決まってるよ」


 シドの問いかけに、俺は彼女の目を見てしかと頷いてみせる。


「やれることは全部やるつもりだからね。すぐに行くから案内してもらっていい?」

「任せろ。移動されると面倒だから急ぐぞ」


 そう言って足早に駆け出すシドを見て、俺は泰三とフィーロ様に向き直る。


「それじゃあ、ちょっと行ってくるよ」

「うん、頑張って下さい」

「コーイチの作戦が上手くいけば、我々の大きな力になります……どうかご武運を」

「いってきます」


 手を上げてこの場を二人に任せた俺は、既に大分先を言っているシドを追いかけるため、足に力を籠めて一気に駆け出した。




 戦場から一旦離れて俺が向かう先は、かつてエルフの森に張った結界に弾かれて飛ばされた場所、通称『帰らぬの森』と呼ばれる場所だ。


 あの時、困っていた俺たちを迎えに来てくれたラヴァンダさんによると、この帰らぬの森に住み付いている生物は特別厄介な存在で、毒を持つ生物や、エルフ顔負けの魔法を使う動物までいるという話だ。


 エルフでも数十年に一度はこの森で死者を出すという危険な森ではあるが、幸か不幸かこの森の動物は魔物ではないということだ。

 そして動物であるなら、俺のアニマルテイムのスキルによって意思疎通が取れるかもしれないということだ。


 ここに来た理由は、帰らぬの森の動物を仲間にするためにスカウトしに来たのだ。


 エルフの森は木々に囲まれているのに明るく、降り注ぐ木漏れ日が安らぎと安心を与えてくれるのだが、対して帰らぬの森は、昼間なのに夜かと思う程薄暗く、ジメジメとした湿気が肌にまとわりつく感覚が不快で、気のせいか何だか息苦しいような気がする。


 歩いて数分でこんなにも世界が変わるものかと思いながら、俺はシドの後を追いかける。


 動物だけでなく、植物の中にも危険な存在がいるということで、なるべく音を立てないように移動して、藪の手前で止まり、しゃがんだシドの横に並ぶ。


「ふぅ……シド、それで見つけた奴って」

「ああ、あいつだ」


 そう言ってシドが指差す先には、ぐるぐるととぐろを巻くように伸びる不気味な植物があり、幹から伸びた太い枝の上で蹲る巨大な影がいた。

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