表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第7章 私はどうかしている

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/247

07 ミヤコはどこだ!~ターク様、どうなさったんですの?~[挿絵あり]

 場所:マリルの屋敷

 語り:ターク・メルローズ

 *************



 森の魔物討伐に同行していた私、ターク・メルローズは、残った魔力で何人かのケガ人を治療してまわり、ようやく部屋に戻った。


 タツヤは私が出かけてばかりいると、「みやちゃんが心配だから、部屋に居させてよ」と、しばしば文句を言ってくる。


 魔物討伐も苦手らしく、とにかく帰りたがって困ってしまう。


 私だって本当は帰りたいが、のんびり休んでいると、焦りと不安が胸に押し寄せてくるのだ。


 それでも、最近はしっかり眠れているおかげで、まだ気持ちは楽な方だった。


 ミヤコが毎晩、私が眠るまで、ツボを押したり、歌を歌ったりしてくれるからだ。


 おかげで随分眠りやすくなり、魔力もある程度は回復出来て、私は非常に助かっていた。


 最初は「僕のみやちゃんに甘えないでくれる?」と、文句を言っていたタツヤも、私が眠れないと同じように辛いらしく、「早くみやちゃんの歌を聴いて寝ようよ」と言うようになった。


 私もそれは大賛成だ。


 彼女の美しい歌声は、私の頭の深いところまで心地よく震わせ、魔法のように心を落ち着かせてくれる。


 彼女はこんな理不尽な状況で、外にも出られず、酷い目にも遭っているのに、恨み言一つ言わず、私やマリルの心配ばかりしている。


 そんな彼女の温かな人柄が、優しい歌声に表れているようだ。私はすっかり、彼女の歌声に魅了されていた。


 しかし、帰ってみると、部屋にいるはずのミヤコの姿がない。


「ミヤコはどこだ?」


 私はウロウロと、部屋中を探し回った。嫌な予感で頭がクラクラする。タツヤがパニックを起こしたように喚いて、耳鳴りを起こしてくる。



「ミヤコはどうしたんだ!?」



 青ざめて声を荒げる私を見て、メイドのサーラが同じように青ざめた。



「ミヤコさんなら、迎えにいらした女性戦士さんとお出かけになられましたよ? ご主人様がお呼びになったのでは……?」


「女性戦士? 誰だそれは!」


「いつもマリル様についておられる、大きな盾を持った方です」


「あぁ、あの変な護衛か……」



 いつもマリルに付き従っている、女戦士には私にも見覚えがあった。本人は護衛と言っているが、マリルが好きで付きまとっているだけに見える妙なやつだ。


「大きな声を出してすまなかった」


 私はサーラにそう言って、急いで馬車を走らせ、マリルの屋敷に向かった。



      △



 ――まさか、勝手に連れ出すとは……。


 屋敷に着くと、辺りはすっかり暗くなっていた。入り口でマリルの執事のセバスチャンが驚いた顔で私を出迎える。



「ターク卿、こんな時間に如何なさいましたか?」


「セバスチャン、ミヤコが来ているだろう? 迎えに来た」


「はて? ミヤコさんはここにはいらっしゃってませんが……」


「そんなはずはない。ここの女戦士が迎えに来たと、メイドが言っていたぞ。マリルはどこだ? マリルと一緒じゃないのか?」


「マリル様ならお部屋でお休みです。お一人のはずですよ?」



 すっかり血の気が引いた顔の私を、セバスチャンは訝しげに見ている。どうやら本当にミヤコを見ていないようだ。



「……とにかく通せ」


「困ります。マリル様はもうお休みですから……」



 セバスチャンの制止を聞かず、私はマリルの部屋に駆け込んだ。


 突然扉を開けられたマリルは、驚いた様子も見せず、ゆっくりと私の方に顔を向けた。


 いつも通りの華やかなドレスを着こんでいて、休んでいた様子はない。



「あら、ターク様、こんな時間にどうなさったんですの?」


「マリル、ミヤコをどうした?」


「まぁ……。そんなに青ざめて、息を切らせて……」



 マリルは私に駆けよると、私の後ろに立って、やさしい手つきで背中をさすってくれた。私への怒りはもう治ったのだろうか。



「唐突に何をおっしゃるんですの? ミヤコさんはターク様のお部屋にいらっしゃるのでは?」


「居なくなったんだ。君から使いが来たと……」


「わたくし、使いなんてよこしていませんわ。ターク様、何か勘違いをされているのでは?」



 普段と変わりない、落ち着いた様子で話すマリル。



 ――そんなはずは……。だが、これ以上マリルを疑う訳にはいかない。


「そうか、すまなかったな。夜遅くに迷惑をかけた。また改めて来るよ」



 私はそう言って、いつものようにマリルの額にキスをすると、彼女の部屋を後にした。


挿絵(By みてみん)



パニックを起こす達也を頭に抱えながら、マリルの屋敷に駆けつけたターク様でしたが、あまりに落ち着いたマリルの態度を見て、無闇にマリルを疑うわけにはいかないと彼女の部屋を出てしまいます。ターク様は宮子を見つける事が出来るでしょうか?


次回、マリルの部屋を出たターク様はとある異変に気づきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
とぼけているのか、正気ではないのか、なんとなく今のマリル嬢には危うい雰囲気が感じられます。 あっさり帰ろうとするターク様にはハラハラしそうになりましたが、何かに気付けた様子ですね。
[良い点] 「僕のみやちゃんに甘えないでくれる?」と既に彼氏面とは、達也も中々に俺様ですね。 彼が心の中に居て愛しの宮子と接していれば、ターク様でなくとも付き合いづらいことでしょう。 出会いからも悪い…
[一言] 花車様おはようございます(* ᴗ͈ˬᴗ͈)” とうとうターク様が探しに行きましたね! 宮子は果たしてどうなっているのか!? 楽しみに拝読させていただきますね(* ᴗ͈ˬᴗ͈)”
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ