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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第7章 私はどうかしている

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03 ややこしい関係。~達也の要求は勝手すぎる~

 場所:王都(訓練所)

 語り:ターク・メルローズ

 *************



 マリルの屋敷からの帰り、私は王都にある訓練所に寄っていた。気分が塞いで真っ直ぐ帰る気分になれなかったのだ。


 ――どうして怒らせた? なんて言えばよかったんだ……?


 自分に質問を繰り返していると、時おりタツヤが相槌を打ったり、ごちゃごちゃ話しかけたりしてくる。



『最後の責めるみたいなのは良くなかったよね』


 ――うるさい、黙ってろ。



 私はタツヤの声が聞こえないように、ブンブンと剣を振り回した。


 私だって、マリルを怒らせる気はなかった。彼女は高飛車で怒りっぽいお嬢様ではあるが、長い年月、私を一途に思い、どんな時も励まし側にいてくれた、大切な婚約者なのだ。


 伯爵家の一人息子で、不死身の大剣士でもある私に、相応しい自分でいる為にと、努力を惜しまず、魔術を勉強する姿にはとても好感が持てるし、小さくて可愛らしい所も嫌いではない。



 ――そういえば、前にもマリルがミアにやきもちを焼いて泣いたことがあったな。



 まだマリルと出会って間もない頃、私が彼女にミアの話ばかりしたために、彼女が怒って私にファイアーボールを投げつけたことがあった。


 当時既に不死身だった私は、服が燃えたぐらいで、特にケガもしなかったが、彼女は自分の仕出かしたことに驚いて泣いてしまった。


 あれから私は、彼女の前でミアの話はしないようにと気をつけてきた。


 私は確かに、長い間ミアに心を寄せていたし、マリルもそれに気がついていた。


 しかしそれは、マリルと過ごすうちに、次第に愛や恋というより、戦いを終わらせ、ゴイムを解放すると言う、志しのようなものに変わっていったのだ。


 私の心に、マリルとの結婚への迷いはない。ポルールの戦いが終わり、マリルが卒業すれば、すぐにでも結婚するつもりだ。


 だからこそ、ミヤコのことで、マリルに嫌な思いをさせるつもりはなかったし、うまくマリルの気持ちを安心させて帰ってくるつもりだった。



 ――どうしたらいいんだ……。


『彼女すごく怒ってたね』



 ただでさえ混乱しているのに、いちいちタツヤが相槌を打ってくるのが、余計に私を苛立たせる。


 カミルと精霊の集会所に行った日から、タツヤの出現頻度は格段に上がってしまった。なんだかとても煩しい。



 ――お前、なぜ私の中にいる?


『……』


 ――都合が悪いとだんまりか?


『思い出さない方が良いこともあるよ』


 ――なんなんだ。私は何を忘れているんだ?


『……』


 ――いつも勝手に人の心の声を聞いていて、気が向いた時だけダメ出ししに出てくるな。嫌なやつだ……。


『聞こえてるよ』



 ここ数日は、心の中のタツヤと、こんなふうに会話ができてしまう。


 しかし、厄介なのはそれだけではなかった。タツヤの感情が大きく動くと、その感情の揺れが、あふれるように私に伝わってくるのだが、その頻度や大きさが前より上がっているのだ。


 ミヤコの一挙一動に過剰に反応するタツヤの感情の波が、頻繁に私の心を揺り動かしてしまうのは、正直言ってすごく困る。何度も言うが、私はマリルを裏切るつもりはないのだ。



『君、思ったよりマリルちゃんを大切に思ってるんだね』


 ――当然だ。フィアンセだぞ。


『なら、僕のみやちゃんを気安く触るのはやめてよね。昨日だって、抱き寄せる必要はなかったよね?』


 ――いや、あれは私のせいじゃないぞ。お前がソワソワするからだ。


『そうかなぁ』


 ――ミヤコを泣かせるなと言うなら、慰め方にまで文句を言うな。と言うか、お前、なぜそうやって、ミヤコを自分のものみたいに言うんだ? ミヤコにふられたんじゃないのか?


『え、どうして!? 僕はまだふられてないよ』


 ――ミヤコはお前の告白に、返事はしてないと言っていたぞ。そんなの、ふられたのと同じだろ。


『全然違うよ。僕とみやちゃんは、お互い大切な存在過ぎるだけなんだ』


 ――ふん、とにかく、私はマリルと結婚する。邪魔はするなよ。


『まぁ……そんなつもりはないけど』



 タツヤの要求は、とても勝手なものだ。今まで私の感情を揺さぶって、ミヤコを守らせて来たくせに、私がミヤコに触ると怒る。


 やさしくしろと言うくせに、やさしくし過ぎても怒る。冷たくするともっと怒る。いったいどうしろというのか。


 タツヤがごちゃごちゃうるさくて、気持ちを落ち着けたくても、一人になることすら出来ない。


 私はまた、闇雲に黒い大剣を振り回した。



ターク様の心の声を勝手に聞いては、ごちゃごちゃと話しかけてくる達也に、ターク様はうんざりしてしまいます。大切な婚約者がいると言うのに、達也の宮子への恋心に揺り動かされてしまうターク様。達也の勝手すぎる要望に困り果てているようです。


次回、ターク様はカミルの思わせぶりな発言でさらに混乱してしまいます。


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うーむ、宮子と達也に振り回され、婚約者との仲がこじれているターク様も気の毒なんですよね。 とにかくマリル嬢に対して思っている気持ちはちゃんと伝えてあげた方がいいんじゃないかと思います! ……これでタ…
[良い点] そんなに宮子に無暗に近づいてほしくないなら達也も、ターク様に適切な距離感を保つ方法などアドバイスなりしてあげればいいのですけれどね。 ターク様があまりにも心身ともに追い詰められすぎて参って…
[一言] 花車様こんにちは、 ターク様とタツヤの関係。 これはどうにもならない状況。 早くお互い個人になれるといいですね(๑•̀ㅁ•́ฅ✨
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