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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第6章 アーシラの森で

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12 衝撃の後に。~達也、声が大きすぎるぞ~

 場所:タークの屋敷

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 森に出かけた日の夜、私は客室のバルコニーで外の空気を吸いながら、昼間の出来事を思い返していた。


 色々あったけれど、やっぱりターク様の中に達也が居たことが、一番の衝撃しょうげきだった気がする。


 ずっと会いたかった達也がこんなに近くに居て、ターク様の中から、私を守ろうとしてくれていたなんて、考えると嬉しくてたまらなかった。



 ――ずっと心細かったけれど、私は一人じゃなかったんだわ!


 ――ターク様には申し訳ないけれど、また達也と話したいな。



 さっき、達也から受け取ったプレゼントは、青い薔薇ばらの飾りがついた小さな髪飾りだった。それを見た私は、達也が選んだんだと一目で分かった。


 だって彼は、私の好みをよく知っていて、私を喜ばせるのが得意な人だから。


 私はさっきからずっと、手に持った髪飾かみかざりを眺めては一人でニマニマ笑っていた。



「ミヤコ、ここに居たのか」



 声が聞こえて振り返ると、私を見つけたターク様が、客室からバルコニーをのぞき込んでいた。



「それ、気に入ったのか?」



 そう言って、私のとなりに立ち、髪飾りを指さすターク様。



「すみません、達也に買わされたんですよね」


「いや、気にするな。私もお前に何か買いたいと思っていた……と思う……」



 ターク様はそう言って、少し自信がなさそうに顔色をくもらせた。



「分からないんですか? 自分の考えなのかどうか」


「あぁ。だが、その髪飾り、お前に似合いそうだ。青系あおけいだからな」



 やさしい顔ではにかんだように笑うターク様。私が好きな色を知っていたのは、達也だけじゃなかったようだ。


「ありがとうございます」と、私がお礼を言うと、笑っていたターク様が急に、つらそうに頭を押さえた。



「く……タツヤ、声が大きすぎるぞ」


「わ、達也が何か言ってるんですか?」


「あぁ、今日のことを、もう一度お前に謝れと言われているんだ……。分かったから……もう少し小さい声で話してくれ」



 そう言って私に向き直り「ごほん」と咳払せきばらいしたターク様は、「今日は……すまなかったな。私は少し、あせっていたようだ」と、決まりが悪そうに私を見た。



 ――そんなあやつられ方!?  達也、やめてあげて!



 達也に頭の中で騒がれると、抵抗ていこうできない様子のターク様。いつも苦しそうに胸や頭を押さえていたのも、達也のせいだったなんて、何だかすごく申し訳なく思う。



「も、もう、大丈夫です。びっくりしましたけど、私も知りたかったことなので」


「そうか……お前は、日本から飛んできて、自分にそっくりのゴイムの体に入り込んだようだな」


「そうみたいですね。全然気が付きませんでした」



 達也にそっくりなターク様に入り込んだ達也と、自分にそっくりなミレーヌに入り込んだ私。


 どうしてそうなったのかは分からないけれど、状況を考えると、何かそういう現象が起こっているようだった。



「その、ミレーヌは、お前に話しかけては来ないのか?」


「全然、反応はないんですけど、何かさっきから少し、存在を感じると言うか……気配がすると言うか……」


「あー。それだな……その段階の時はまだ良かった。こう大声で四六時中話しかけられるとたまらないぞ」



 頭を軽く横に振りながら、ため息混じりにそう言うターク様。



「だけど、私はミレーヌの身体をうばってしまってるみたいなので……なんだか申し訳なくて」


「ふむ……きっと、ミレーヌは自ら望んで静かにしてるんじゃないか? サキュラル以上の暴力ぼうりょくを受けていたゴイムだからな。すでに魔力タンクになりかけていたのかもしれないぞ」


「見えた記憶の中では、消えたいって願っていたみたいでした」


「消えたい……か。悲しい願いだな」



 そう言って、切なそうに目を伏せたターク様は、ふと、私の手ににぎられていた髪飾りに目をやった。



「それ、つけて見せてくれないか?」


「えっ! は、はい」



 ――ん? ターク様の希望? 達也に言わされてる?


 ――ややこしい二人!



 そう思いながらも、後ろに下ろしていた髪をまとめ、髪飾りを刺して見せると、ターク様は一歩後ろに下がり、まじまじと私の後ろ姿を眺めた。



 ――なんだか二人に見られてるみたいで二倍恥ずかしい!


「思った通り、よく似合うな」


「あ、ありがとうございます!」


「うーん、しかし、やっぱりあの青いドレスは買いたかったな」



 そう言って私の髪を触ろうとしたターク様は、突然「痛っ」と言ってその場にしゃがみ込んだ。



「だ、大丈夫ですか!?  どうしました?」


「く……ミヤコに触るなだと……?」


「達也、ターク様を苦しめるのはもうやめて……!」


「ぐぅ……前より痛みも強くなってるな」



 そう言ってふらふらと立ち上がり、「もう寝る……歌を頼む……」と、ベッドルームに向かうターク様。



 ――まさか、ターク様……達也のせいで調子が狂って、戦地から帰ってくることになったんじゃ……。



 そんな不安に少しもやもやしながら、私はすぐにターク様の後ろを追いかけた。



「はい! 了解です!」



達也がターク様の中に居ることを知って喜ぶ宮子ですが、ターク様は、達也の出力が上がった事で、ますます混乱しているようです。ターク様のやる事がターク様自身の考えなのか、達也の考えなのか、宮子にも本人にも分かりません。


次回、ゴイムの主人の元へ戻るのが怖くなってしまった様子の宮子を見てターク様はある行動に出ます。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
意識だけで手出しできない達也もつらいでしょうね。 それはそれとして、あまりターク様を困らせないであげてほしいですけど。 達也と宮子が、この世界の人の中に意識だけ入ってしまったというのは、ほぼ決まりと…
[良い点] 行方不明だった達也の発見という希望が見えて、宮子は胸のつかえが少し取れましたね。 青薔薇の髪飾りという素敵なプレゼントも、心を軽くしたことでしょう。 花言葉的にこの代物は、これからの展開の…
[一言] 達也もどんどんターク様の中で大きくなってきている様子ですね! これからが楽しみです(*´艸`)
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