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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第6章 アーシラの森で

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09 試してみよう2~ターク様の尋問~

 場所:アーシラの森

 語り:小鳥遊宮子

 *************



「ミヤコ……タツヤって、どんな奴だ?」



 突然の予想外の質問に、私はポカンと口を開いた。



 ――達也の話!? 全然信じてなかったのに……?



 ターク様はいままで、私がする日本の話を、まったく信じる様子がなかった。


 達也の話なんてしても、「記憶がおかしくなっているんだな」と、言われてしまうだけだったのだ。



 ――これは一体、どういうこと?



 昨晩、急に日本の話をして、「冗談だ」とはぐらかしたターク様を思い出す。


 そう思うと、彼の様子がおかしかったのは、昨日からだったのかもしれない。



「話してくれ。お前が会いたがっている、私にそっくりの男って、いったい何者なんだ……?」



 驚く私に、ジリジリと迫ってくるターク様。



「どうして急にそんなことを聞くんですか……?」



 ものすごく眩しいけれど、彼の真剣な眼差しから、目を反らせない。



「いままで、お前の話に取りあってやらなくて、悪かったと思っているんだ」



 そう言って私の肩を掴むターク様。



 ――なんだかターク様、すごく切羽詰まってるような……?



 なんだなんだ? と思いながらも、私は達也のことをターク様に話した。



「え、えっと……。達也は……家がとなり同士で、子供のころからいつも一緒だったんです。フワフワしてやさしい男の子ですよ」


「フワフワ……?」


「あ、えっと……いつも私が快適に過ごせるように、気を使ってくれるというか……とにかくやさしくて」



 別人だとはわかっていても、達也と同じ顔の彼に、達也の説明をするのは変な気分だった。


 簡単に説明を済ませようとする私に、ターク様が「ほかには……?」と食いさがってくる。



「甘えるのが上手で……子犬みたいに可愛くって……」



 思わずそういった私に、ターク様が(にが)り切った顔をする。


 自分と同じ顔だという達也が、子犬みたいに可愛いだなんて言われて、気分がいい(はず)もない。



「あ、すごくモテモテでした! 学校で一番モテてましたよ!」



 慌てて付け足した私に、ターク様は不思議そうに首を傾げた。



「モテてたって……タツヤはお前の恋人じゃないのか?」


「ええっ……違いますよ」



 不意に、達也に告白されたことを思い出した私は、思わず顔が熱くなった。


 だけど、ターク様は達也と同じ顔なのだ。達也に告白されて断ったなんて言ったら、また気を悪くするかもしれない。



 ――あまり下手なことは言えないかも……。



 戸惑い目を泳がせる私に、ターク様は「納得がいかないな」という顔で腕組みをした。



「違うって、お前……泣くほど会いたがっていたじゃないか」


「いえ、達也は大切な幼なじみなので……その、恋人とか、そういうのでは……」


「なんだ、片想いか?」


「えぇ……っとぉ……」



 ターク様の答えがたい尋問は延々とつづき、私は甘酸っぱい思い出を、いろいろと聞き出されてしまった。



 ――もうやだ、なんかもう、恥ずかしい……。



 ターク様があまりに真剣で、かなりタジタジになってしまった私。


 そして最後には、達也が突然行方不明になってしまった、あの日の話になった。



「うーむ。タツヤがいなくなったのは、いつのころだ?」


「私がターク様のお屋敷に来た日の、だいたい一ヶ月前です」


「一ヶ月……」



 そう呟いたターク様が、なにか思い出したように黙り込む。



 ――どうしてターク様は、こんなに達也のことを知りたがるんだろう。私が日本から来たことを、ついに信じてくれたのかな……?



 もしかして……という期待が、私の胸をざわつかせている。ずっと言えなかった本音が、たまらず口から飛び出してきた。



「ターク様、私、日本にいた記憶がまやかしだなんて、どうしても思えないんです……」



 こんなことを言ったら、ターク様はまた、呆れた顔をするだろうか……。そう思いながら、恐る恐る彼の顔を見ると、彼は意外なほど、真面目な顔で私を見ていた。



「うーん……。お前はずっと、日本にいた。そうなんだな……?」



 自分に確認するように、そうつぶやくターク様。



「ターク様、信じてくれるんですか……? どうして急に……?」


「かなり古い記録で、詳細は不明だが、異世界の存在は確かに確認されている。お前たちが、なにかのはずみで飛ばされてきたとしても、おかしくはないのかもしれない……」


「お前たちって……もしかして、た、達也が、この世界に来てるんですか!?」



 おどろきのあまりターク様に詰め寄ると、彼は、その勢いにたじろぎながらも、はっきりと答えた。



「タツヤは、私のなかにいる」


「ターク様のなかに!?」



 目を見開いた私に、ターク様も驚いたように眉を上げた。


 彼が言うには、ターク様は私と出会った日、『宮子を守れ』という、不思議な声を聞いたらしい。



「なにかいるとは思っていたが、まさかそれが、タツヤだったとはな……」



 ずっと胸の内に、なにかの存在を感じていたというターク様。だけど、声が聞こえたのは一度きりで、ただの幻聴だと思うことにしていたようだ。



「タツヤは……私の心の中にいて、私の感情を勝手に突き動かしてしまう。だから……私は今、正直すごく、混乱しているのだ……」



 自分の中に感じていた異物感が、達也だと言うことに気付き、困惑していると言うターク様。


 だけど、達也が、ターク様の気持ちを勝手に動かしているなんて、そんなことが本当にあるのだろうか?



 ――ある……あるわ……! すごく心当たりがある気がする……!



 私が涙を流すたび、苦しそうに顔をゆがめていたターク様を思い出す。


 ターク様はそのあと、いつも急に優しくなっていた。


 それだけじゃない。ターク様が、やたらと私の心配をしてくれていたのも、あんなに強引に、私と一緒に眠っていたのだってそうだ。全部達也の仕業だと言われたら、普通に納得できてしまう。



 ――じゃぁ、時々甘い空気を出しながら、私の髪や頬に触れていたのも?


 ――いやだ。何だかすごく、申し訳ない……。



 婚約者のいるターク様に、タツヤがそんなことをさせていたのかと思うと、ひどく心がズキズキした。


 だけど、ターク様自身はまだ、このことについて、半信半疑な部分が大きいらしい。


 そもそも、自分は闇魔導師の精神攻撃を受けている最中で、幻術にかかっているだけかもしれないと言うのだ。


「そうなんですか?」と、私が聞き返すと、ターク様はまた、真剣な顔をした。



「ああ、だから試してみたいんだ」



 ターク様にがしっと肩を掴みなおされ、ビクッと顔をあげる私。



「試すってなにを……?」



 この場所のあまりに()え渡った空気と静けさに、なんだか背中が、ゾクリとした。



「タツヤってどんなやつだ?」と宮子を問い詰めたターク様は、ついに宮子が日本からきた事を信じたのでしょうか?


「タツヤは私のなかにいる」と言われ驚く宮子に、ターク様は試したいことがある様子です。


 次回、ターク様に強引にあることを試された宮子は大変なことに……。


 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
眩しいけど目が逸らせない宮子ちゃん。 それほど真剣なタークさまだったのですね。 そしてついに明かされた、達也くんの居場所。 一体何が起こるのか…めっちゃきになります!!! 精霊の力を借りて何かするのか…
[良い点] ターク様が恋バナらしきものに言及して衝撃です。 宮子の様子から恋人かと推測するのも、彼の新たな一面を見れた気がします。 しかし片思いなのかと微妙なところを察して聞いてくるのは、彼らしいなと…
[一言] 花車様こんにちは! そして続きを読ませていただきました! ターク様がついに行動開始! タツヤが心の中にいるターク様はどうするのか!? 楽しみにお待ちしておりますペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
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