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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第4章 タークの大願

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06 母の願い。~マリルは可愛い婚約者~

 場所:メルローズ本邸

 語り:ターク・メルローズ

 *************



 十四歳になったころ、私は母からマリルを婚約者として紹介され、ミアのことは忘れるようにと強く諭された。


 それは、私が父に反発する様子を、見かねてのことだった。


 母が用意した婚約者のマリルは、いつも豪華なドレスに身を包んだ、華やかな少女だった。


 彼女にしても突然の話だったはずだが、彼女ははじめから、私のことをずいぶんと気に入っているようだった。


 マリルは毎日のように屋敷にやってきては、私が思い悩む暇もないほどに、しつこく私につきまとった。



「ターク様! 今日もお菓子をお持ちしましたわ」


「マリル、毎日くるんだな」


「当然ですわ! ターク様のお話し相手は、この、マリル・フランと決まってますもの。ターク様に寂しい思いはさせませんわよ!」


「そ、そうか」


「今日のお菓子はアップルパイでしてよ。ほら、ターク様、あーん」


「い、いいよ、自分で食べるから」


「まぁ! 照れてますのね。可愛い!」



 母になにか頼まれたのか、ずいぶんと気合が入っている様子のマリル。三つも年下の彼女に、私は振り回されるばかりだったが、決して彼女を嫌ってはいなかった。


 私はマリルに言われるまま、一緒に本を読んだり、菓子を食べたりした。当時から休むことが下手だった私に、マリルは穏やかな休息時間を作ってくれた。


 彼女は可愛らしい顔立ちで頭もよく、自分への自信で満ち溢れている。


 そして、自分こそが、ターク・メルローズの婚約者にふさわしいと、自負しているようだった。



「ターク様、わたくし、先週お話した魔術試験で満点をいただきましたのよ。素晴らしい才能があるって、先生にも褒めていただきましたの」


「さすがだな。頑張ったじゃないか」


「うふふ、当然ですわ! わたくし、ターク様の婚約者ですもの」


「そ、そうだな」



 マリルはことあるごとに、「わたくしはあなたの婚約者ですから」と、誇らしげに話す。そんなマリルを見ているうちに、私はもう、違うとは言えないと思いはじめていた。



      △



 そんな日がつづいたある秋の日、王都の街の外れまで、買い物に出かけていた母が、魔物に襲われ急死した。


 そのころの王都は、ポルールの戦いの影響で、警備がかなり手薄になっていたのだ。



「僕がついていっていれば……」


「ターク様はなにも悪くありませんわ。悪いのはお母様を傷つけた魔物ですもの」



 悲しみに暮れ自分を責める私を、マリルは懸命に励ましてくれた。



 ――マリルとの婚約は、母さんの最後の願いだ。



 私は素直に、彼女が婚約者であることを受け入れることにした。


 心に秘めたミアへの想いはすぐには変わらなかったが、マリルはいつも、私のやるせない想いを紛らわせてくれた。



      △



 私たちは長い間一緒にすごし、あちこちに出かけ、たまにはケンカもした。



「ターク様! 早くいらしてください! わたくしのお友達を紹介いたしますわ」


「待ってくれマリル。毎週毎週、パーティーに呼び出すのはやめてほしいと言ったはずだぞ」


「まぁ! ターク様がいなくては始まりませんわ。ターク様を自慢するためのパーティーなんですもの」


「マリル……。勘弁してくれよ」


「嫌ですわ! ターク様はもうすぐ戦地に行ってしまわれるんですもの。いまのうちに、わたくしが婚約者だと、皆に釘をさしておかなくてはいけませんのよ」


「僕をとられる心配なら無用だよ。マリル」



 私はそう言って、彼女の額にキスをした。


 彼女は高飛車で傲慢(ごうまん)、強引で怒りっぽい。


 だが、気が付くと私は、彼女を幸せにしたいと願っていた。



      △



 私が部隊に入りポルールへ出向くと、マリルも本格的な魔術の勉強で忙しくなった。


 毎日のように二人の時間を作っていた私たちだったが、それからは頻繁に会うこともできなくなった。


 しかし、王都に帰ってみると、私たちは理想の恋人として、世間で知られるようになっていた。


 マリルの様子を見にいくと、彼女は友人たちと楽し気に会話している。



「ロード・メルローズと結婚できるなんて、本当に幸せね! ああ、うらやましいわ! 私の彼の領土が、メルローズ領の半分でもあれば……」


「ロード・メルローズは最高の恋人ね! あんなに美しく輝いて、戦いに行ってもケガの心配もないんですもの。戦地に行った私の彼は大丈夫かしら……」



 口々にそんなことを言う友人たちに、マリルは思いきり高飛車にこう言うのだった。



「あぁら、ターク様はいつだって最高に決まってますわ! わたくしの婚約者ですもの。当然ですわ!」

 お母様に用意された婚約者のマリルは、とても厄介な少女でしたが、ターク様は彼女に心を救われます。


 婚約を受け入れ、彼女を幸せにしたいと思うようになったターク様。高飛車にふるまうマリルさえ可愛く感じているようです。


 そんな彼女がいながら、宮子を部屋に置いているターク様。大丈夫でしょうか。


 次回は、一年前のお話です。戦地で頑張りすぎたターク様は、師匠のイーヴ先生に心配され、王都へ連れ帰られてしまいます。


 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] マリルはとても献身的で、それでいて努力家で好感が持てます。 陽性の高貴な振る舞いが、とても魅力的な少女です。 母を失い悲嘆にくれるターク様を、懸命に支えて…… なんといい子なのでしょうか…
[一言] 花車様こんにちは! なるほど、マリルとターク様の間柄はそんな過去があったのですね。 母親の願いもありターク様も、納得。 これからのターク様が、気になります! ありがとうございます(꒪˙꒳˙꒪…
[良い点] マリルさん、やっぱりいい人ですね。 ターク様、マリルさんのことはいい子だと思っているようですが、義務感から出発した想いであることが心配。 宮子もマリルさんも、ターク様に翻弄されないか心配で…
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