表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第3章 突然の訪問者達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/247

05 訪ねて来たカミルさん2~ターク様は眠れない?~[挿絵あり]

 場所:タークの屋敷(書斎)

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



「ありがとう。それにしても今日は、この間よりさらに調子よさそうだね」



 ターク様にケガを治してもらったカミルさんは、ターク様にぐいっと顔を近づけた。そのまま興味深そうに、あらゆる角度から彼を眺めまわしている。


 長年の付きあいでも、今日のターク様はよほど珍しく見えるようだ。


「あぁ、昨晩はよく眠れたからな」と、ターク様が言うと、カミルさんはますます驚いた顔をした。



「へぇ……? もしかして、長年の不眠症がようやく治ったの?」


「え? 不眠症?」



 カミルさんの発言に驚いて、ターク様が答える前に、思わず声をあげてしまう私。



 ――いつも(そく)寝落ちでぐっすりのターク様が、不眠症?



 キョトンとしている私に、カミルさんが答えてくれた。



「知らなかった? 昔からだよ。自分が眩しくて眠れないんだって」


「え! そうなんですか!?」


「それにさ、なんだかむずむずくすぐったいだろ? タークの光って」


「えぇ……? ターク様ご本人もくすぐったいんですか?」


「そうみたいだよ。しかもあんまり疲れないから眠るのに向いてないよね」


「そうなんですか。たいへんなんですね……」



 そう答えながら、私の心はおどろきに震えていた。



 ――確かに、ターク様のありがたい癒しの光に包まれると、私もなかなか寝付けないけれど……。


 ――でもあれは、とても優しくて気持ちのいい感覚でもあって……。


 ――それなのに、まさかその光を放っている本人が不眠症だなんて。



 ターク様の人知れぬ苦労を思い、なんだか心が痛くなる私。



「それで、治ったの? 不眠症は」



 カミルさんはまたターク様にグッと顔を近づけると、もう一度問いただすように質問した。



「いや、治ってはいない……」


「なんだ、そうなの? まったく、加護なのに不眠になるなんておかしな話だよね」



 カミルさんがそう言うと、ターク様は怒ったように腕組みをして、ふいっと横を向いた。



「なんなんだ今日は。皆勝手に人の話で盛りあがって……。癒しの加護を悪く言うな」


「そんなつもりはないさ。きみがあの戦いを終わらせるには、その力が必要だ。きみはこんなところにいるべきじゃないよ。早く戦地に戻って、その力を発揮してきてよ」


「またそれか」



 戦地に戻れと言われたターク様は、すっかり機嫌が悪くなってしまったようだった。


 だけど、カミルさんは少しも動じる様子がない。



「なんにしても眠れてよかったよね。寝不足のきみは見ていられない。でも、どうして急に眠れるようになったんだい?」



 カミルさんにそう尋ねられたターク様は、ピクリと眉を動かして、「……さぁな」とはぐらかした。


 だけど彼女は、「なになに? これはなにかありそうだね?」と、好奇心に輝く瞳でターク様の顔をしつこく覗き込む。


 彼女は面倒なことを喋りたくないターク様にとって、相当手ごわい相手のようだ。



「カミル、用が済んだならさっさと仕事に戻れ。私は急いでるんだ。さっきから、突然の来客ばかりで予定が大幅に遅れている」



 カミルさんへの対応に困ったターク様は、()()()()()()()を全開にして、彼女をじっと睨んだ。さすがのカミルさんも、これには一瞬口を閉じる。



「悪い悪い。実は、今日はもうひとつ頼みがあってきたんだ。まだポルールに戻る気がないなら、森の調査に少し協力して欲しいんだ。最近獣や魔物たちが凶暴化していてね。戦力不足のところに、僕の隊の治癒魔法師がポルールに駆り出されちゃってさ……」


「あぁ、それなら、さっきフィルマン様にも頼まれたな。いいだろう。用が済んだらそちらに回る」


「ありがとう。それじゃぁ僕たちは、アーシラの森の入り口付近にいるから。またあとで!」




 カミルさんの姿が見えなくなると、ターク様は「注文の多いヤツだ」と小さくぼやいた。


 仲がいいのか悪いのかわからない二人だけれど、長い付きあいでお互いによく知った関係のようだ。


 だけど、彼女が本当にターク様に望んでいるのはきっと、ケガの治療でも、森の魔物討伐なんかでもなく。ポルールで起こっているという、戦いの終結、ただそれだけなのだろう。



 ――なるほど、空気がピリピリしているわけだわ。



 私はようやく納得した。戦地に(おもむ)き、戦いを終わらせてくれるはずのターク様が、街でゴイムの世話なんてしているのだ。私への視線が冷たいのも当然だ。


 こんなに期待されながら、どうしてターク様は、戦地から戻って来たのだろうか。



 ――もし私が、ターク様の邪魔になってるんだとしたらどうしよう。



 忙しそうに屋敷の修理を手配するターク様を眺めながら、私はそんなことを考えていた。


挿絵(By みてみん)

 ターク様の不眠症は、癒しの光が原因だと言いはじめるカミルさん。ですが、いつもすぐ寝てしまうターク様が不眠症だということが、(にわ)かには信じられない宮子です。


 常に身体から出ている癒しの光で不眠になるなんて、本当なら不憫ですよね。


 次回、宮子は護衛を付けてもらい、はじめてターク様の部屋を出ます。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
カミルさんかっこいいですねー! フィルマンさんはチャーミングで豪快な方! この魅力的なキャラクターの数々も花車さんの作品の素敵な魅力だなとかんじました! フィルマンさんやカミルさんと、ターク様と縁の…
[良い点] なるほど、タイトル回収ですね! 自分がまぶしすぎて寝られないとは……ターク様も不憫です。 しかしここにきて宮子の存在がグッと重要度を増しましたね! これはますます続きが楽しみです!
[良い点] ターク様はそういう理由で不眠症だったのですね。 滑稽な原因ですが、とても辛すぎることで同情いたします。 色々対策は試したのでしょうが、きっと駄目だったのでしょう。 眠れるようになったのは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ