表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第2章 退屈なゴイムとお疲れのターク

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/247

13 にげるなよ?~心配するのは無駄ですか?~[挿絵あり]

 場所:タークの屋敷

 語り:小鳥遊(たかなし)宮子

 *************



 私がバスルームから出ると、眠ったはずのターク様がベッドから消えていた。



 ――あれ? どこ行ったの?



 キョロキョロと探し回り、書斎に出てみると、彼はなんと、デスクに向かい、また仕事をはじめている。本当に、この人は仕事中毒なんじゃないだろうか。



「ターク様、ベッドに入ったはずなのに、どうして……?」


「ああ、留守の間に仕事がたまっていてな……」



 そう言う彼の顔はこわばって、いまにも魂が抜けそうに見えた。魔力が〇から三になったくらいでは、やっぱり元気になるはずもなかったようだ。



「どうしてこんな無理を……? 早くベッドに戻ってください」


「あぁ。そうだな。加護を与えてやるからお前もこい」



 ターク様はまるで、私がくるのを待っていたかのように立ちあがった。自分が先に寝てしまっては、私がベッドに入りにくいとでも思ったのだろうか。


 ――ターク様は何日も、フィルマンさんの隣で、寝苦しい思いをしてきたんだもの。きっと今日くらいは一人で寝たいはずだわ。


 そう思った私は、遠慮して彼の誘いを断った。



「私のことはいいので、ターク様はなにも気にせず、ゆっくり眠ってください。私はソファーで大丈夫ですので」



 けれど、彼はまるで、私の声が聞こえなかったかのように、無言で私のもとにやってきた。カチンコチンの無表情のまま、ヒョイッと私を抱き上げたかと思うと、ベッドルームに向かって歩きはじめる。



「ちょっと、ターク様、聞いてますか!?」


「うるさいな、お前は。加護を与えてやると言っているのに、なぜ抵抗するんだ。私に恩返ししたいなら、さっさと頭を治して所有者を思い出せ」


 ――えー!? 不機嫌!?



 ジタバタする私を、不愉快そうな顔をしながら運ぶターク様。


 ターク様は治療だと言うけれど、日本から飛ばされてきた自分に、この世界での記憶があるはずもない。


 加護を受けたからといって、所有者の記憶が戻るとは思えなかった。


 ケガが完治したいま、無理に私と一緒に寝る理由はないのだ。


 私が「でも……」と抵抗すると、ターク様は「なんなんだ」とさらに不機嫌な顔をした。



「一緒に眠れば、微量ではあるが、お前のあふれた魔力を吸収してやれるぞ」


「え、本当ですか?」


「そうだ。私に恩返ししたいと言うなら、ごちゃごちゃ言わずに大人しくとなりに寝ろ。そのほうがなにかと都合がいい」


 ――そんな微量の魔力欲しさに……?



 キョトンとしている私をベッドに下ろすと、ターク様はとなりに横になってニヤリと笑った。



 ――達也と同じ顔で、不気味に笑うのはやめてください!



 なんだかもう、逃げ出したい気持ちでいっぱいだったけれど、彼は逃がしてくれそうもない。



「いいから、もっとこっちへ来い」


「はひっ」



 遠慮がちに近づく私の腕をつかみ、ぐいっと自分のほうへ引き寄せるターク様。その手はあまりに冷え切っていた。



「こんなに冷たくなって……風邪ひきますよ?」


「私は不死身だぞ。風邪などひくわけがないだろ」


「だけど、ちょっと根を詰めすぎじゃないですか?」


「ふん、私にそんな心配は無用だ」



 強がりなのかなんなのか、あまり心配されるのは好きではない様子のターク様。



 ――本当に、無理してないのかな……?



 不死身の彼の体調を心配するのは、確かに無駄なことなのかもしれない。だけど、働き詰めのこの人を、気にかけずにいるのは難しかった。


 飛び交う彼の光に目を細めると、ターク様は自分の光を払うように、軽く手を振った。



「もしかして、私が眩しいのが嫌なのか? もう、そろそろ慣れただろ? 治療のためだ。我慢しろよ」



 なんだか不安そうに私を見詰める彼。彼がそんなことを気にするなんて、かなり意外だ。


 私は少し可笑しくなって、思わずクスッと笑った。



「なんだ……?」


「なんでもないです」



 ターク様は「ふん。逃げるなよ」と言うと、満足そうな笑顔を浮かべ、またあっという間に寝てしまった。



 ――ターク様の都合がいいならいっか……。



 私はまた、なかなか寝付けずにじっとしたまま夜をすごした。ターク様が明るいのには多少慣れたけれど、やっぱり日中なにもしていないので、なかなか眠りにくい。


 それに、彼の美しい寝顔を眺めるのは、一日の終わりの楽しみでもあったりして……。


 そんな私たちの様子を、ひとつの黒い影がのぞき見ていることに、このときの私は気付いていなかった。



 挿絵(By みてみん)

 ソファーで寝ようとする宮子を、不機嫌丸出しでベッドに押し込むターク様。


 ワークホリックな彼は、宮子の治療を急いでいるのでしょうか。「不死身の私に心配は無用だ」と言うけれど、宮子は心配せずにいられません。


 次回からは第三章です。目が覚めたターク様はご機嫌で朝食を食べます。


 挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[良い点] ツンデレっぽくも宮子を気遣うターク様。 しかしこの調子では他の女の子も、その毒牙にかけているのでは? 彼の心労も本人はいざ知らず、彼自身から来ている部分もあるのかも。 マリル筆頭にいつか…
[一言] さてさて、宮子とターク様は回復をされたのでしょうか!? 2章までやっときました! 3章からまた楽しみに拝読させていただきますね(*๓´˘`๓)
[良い点] 今日の挿絵も最高でした。 それにしても、ターク様ってば(>_<)!! 隙あらばベッドに押し込もうとして! ターク様ってば(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ もー!( *´艸`)クスクス
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ