表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第21章 春風にのって

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

244/247

09 ただいま帰りました!~達也、これどういうつもり?~

 場所:日本

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 ターク様と一緒に、達也の部屋を出た私、小鳥遊宮子は、となりで何度も咳払いしているターク様の背中を押し、懐かしい我が家の門をくぐった。



「お母さん、ただいま、帰りました! 宮子です」



 お母さんの声で、「はい」と返事のあったインターフォンに話しかけると、玄関のドアが開き、お父さんが飛び出してきた。


 ビシッとしたスーツ姿で、側面を刈り上げたちょっとワイルドな短髪、鍛えられた体つきは逞しくて、相変わらずなかなかの存在感だけれど、前より少し痩せただろうか。



「宮子、本当に、戻ったのか……?」


「お父さん……! 心配かけてごめんなさい」


「あぁ……! なんて奇跡だ」



 体を震わせ涙を流すお父さんの後ろから、お母さんも飛び出してきた。


 茶色く染めた髪は緩くまとめられ、しっかりお化粧もしているけれど、おどろきに目を丸くしたその顔は、相変わらず、私にそっくりだ。



「宮子! 待ってたわよ!」


「お母さん……。会いたかったよ~!」



 私を抱きしめたお母さんの上から、お父さんまで抱きついてきて、私は二人にむぎゅむぎゅと潰されながら、わんわんと声をあげて泣いた。



      △



「達也、宮子を連れ帰ってくれて、本当にありがとう」



 しばらく玄関先で再開の涙を流し合った後、お父さんは、背筋をピンと伸ばしたまま、黙って立っていたターク様に話しかけた。



「あの、僕は、その、タツヤではなくて……」



 達也と勘違いされていたことに気付き、焦ったように目を見開いたターク様を見て、お父さんが「え……?」と、不思議そうな顔をしている。



「えっ? て、達也から聞いてるよね? ターク様が、達也と同じ顔だってこと……」



「うん!?」「なんだって!?」



 お父さんとお母さんが二人並んで、口をパクパクさせている。


 ターク様はそれを見て、少し顔を引きつらせながら、「はは……」と乾いた声を漏らした。



 ――何これ、達也、どういうつもり?



「と、とにかく、家の中に入ろう!」



 固まっているお父さんとお母さんを家の中に押し込み、ターク様の背中も押して、私達はリビングに移動した。


 家の中は何も変わった様子がなく、異世界に行ったあの日のままみたいだった。


 ソファーテーブルを挟んで両親と向き合って座ると、ターク様の姿勢が、いつも以上にピンと正された。



「おどろいたわ。本当にそっくりね。お母さん、達也君のイタズラかと思ったわよ」


「うーむ、これは俄には信じられないな……」



 ただでさえ緊張しているターク様の顔をまじまじと見ながら、何度もそんなことを言う二人。


 確かに、今日のターク様は、達也のジャケットを着込んでいるし、二人の見分け方を知らない両親には、達也にしか見えないだろう。



 ――だけど達也、説明しといてくれるって、言ってたよね?



 そう思いながら、改めて両親に目をやると、お父さんはいつもよりいいスーツを着ているし、お母さんも上品なワンピースを来て、まるでちょっといいレストランにでも行くみたいな格好だ。


 きっとこれは、結婚の報告があると、達也に言われたからだろう。



 ――そこまで言っておいて、どうして大事な説明が抜けてるの?



 不思議に思って首を傾げていると、お母さんがケーキとコーラを出してきて、私達の前に並べはじめた。



「お、お母さん、どうして今、コーラなの?」


「え? だって、ターク様は、ケーキとコーラが大好物でいらっしゃるのよね?」


「それ、達也の嘘だから! 異世界にコーラとかないよ! それに、ターク様はあんまり、甘いものは……」


「えぇ? 本当に?」



 また、大きな声でおどろくお母さんに、ターク様が気まずそうな顔をする。


 そんな中お父さんが、改まった顔でターク様に話しかけた。



「えっとぉ、ターク様は、向こうの? 異世界? では王子様でいらっしゃるとか……」


「お父さん! それも嘘だわ!」


「えぇ!?」



 達也の適当すぎる説明に、私まで思わず、大きな声を出してしまう。


 ターク様は出されたコーラを恐る恐る口に含むと、「クフッ」と、小さくむせてから、表情を整え口を開いた。



「あの、僕は……ベルガノンで剣士をしている、ターク・メルローズです。今日は、お時間をとっていただき、ありがとうございます」


「け、剣士さん……?」


「はい、王国の騎士団に所属してますが、平時は自分の治めるメルローズ領で領主をしています。王子ではなく、伯爵です。どうか、気軽にタークと呼んでください」


「領主で伯爵……?」「騎士団……」


「もう! 達也ったら、どうして嘘しか教えてないの!?」



 私に「君の幸せを祈る」、なんて言っておいて、これでは、私とターク様を困らせて遊んでいるとしか思えない。


 何か大変なことがあっても、すぐにニコニコのフワフワに戻ってしまう達也は、幼馴染の私ですら、何を考えているのか分かりにくい。


 一見いつも通りだからと、油断してはいけないのだった。


 私達は仕方なく、出来るだけやんわりと、私達の正しい物語を両親に話して聞かせた。


 不死身のターク様にケガを治してもらった事、達也がターク様の中にいた事、皆のために歌を歌った事、仲間たちとポルールを奪還した事……。


 それから、私が異世界に残りたがったために、一度だけなら開けるという異世界ゲートの使用を断り、達也も異世界に残ったという話をすると、お父さんは少し、不機嫌になってしまった。



「宮子、ターク君が好きなのは分かるが、お父さんや、お母さんが、心配してるだろうとは思わなかったのか? 帰る方法があるのに、帰らなかったなんて……」


「もちろん、思ったよ。だけど、もう二度とターク様に会えなくなると思ったら、どうしても、帰れなくて……」


「将来有望な達也の受験も邪魔したんだぞ?」


「分かってるけど……」


「宮子が、そんなに我儘な子だったなんて、父さん、知らなかったな」


「ご、ごめんなさい」



 私が俯いて黙り込むと、ターク様が「すみません。ミヤコを引き止めたのは僕です……」と、私をフォローしてくれた。


 だけど、お父さんは怖い顔で腕組みをしている。



「ふむ。とりあえず続きを聞こうか。それで、何がどうなったって?」


「そ、それでね……」



 なんだかピリピリしてしまった空気の中、私達は話の続きをはじめた。



 久々に両親との再会を果たした宮子。両親は達也から事情を説明されているはずでしたが、達也は何故か、嘘の情報を吹き込んでいるようです。


 両親に馴れ初めを説明し始めた宮子ですが、お父さんが怒り始めてしまいました。二人は結婚を認めてもらえるのでしょうか。


 次回、第二一章第十話 我儘な二人。~心配かけてごめんなさい~をお楽しみに!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[良い点] そうか、、達也は受験を棒に振ったわけですね。 達也ならそれでも乗り越えそうですけれど、イタズラがすぎる!(((o(*゜▽゜*)o)))笑笑 笑っちゃいました♡
[一言] これは、、、 ですが。異世界というのは置いといて。 自分達の話は自分達が誠意を持って話すのがやはり一番伝わると思いますよねw どうか上手く行きますように(ㅅ´ ˘ `)! 花車様!今日もお疲…
[良い点] 事情が特殊すぎるとはいえ、現実世界は現実世界で常識というものがあるので、お父様のお叱りはごもっともですね。若い衆がハメ外し過ぎだーぐらいに見えるのではないかと。ギャップがとても面白かったで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ