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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第21章 春風にのって

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04 キラキラのターク。~君、前より輝いてるよ~

 場所:王都

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 収容所を後にした私達は、新しい石像が設置されたという、大聖堂前の広場に向かってたいた。



「石像はポルールのやつだけで十分なんだがな」


「ポルールの石像はちょっと、大きすぎますよね」


「イーヴ先生の指示であぁなったようだ」


「セヒマラ雪山にも作ると言ってましたよ」


「んん? あそこはクラスタルの領土なんだがな……。イーヴ先生の英雄好きにも困ったものだ。だが、王都の広場には、既に中央に巨大なフィルマン様の石像があるからな。そこまで悪目立ちすることはないだろう」



 広場の入り口で馬車を降りると、そこにはマリルさんとカミルさんがいた。二人の背後には、エロイーズさんとコルニスさんも居る。


 四人は私達を見るなり、何やら少し、慌てた様子で詰め寄って来た。



「ターク様、ごきげんよう」


「久々だね。不死身じゃなくなった気分はどう?」


「あぁ、まぁちょっと疲れやすくはなったな。だが、よく眠れるから、気分は悪くない」


「シュベールと契約したらしいじゃないか。浮気にはならなかったの?」


「ん? あぁ。したというより、一方的にされたんだがな……。ヒールは使えなくなってしまった。風の微精霊には嫌われたようだ」


「やっぱり、イーヴ先生のようにはいかないね」


「剣技は今まで通り発動できるんですのね?」


「そうだな」


「なんだか肌艶もいいね。不死身の時より輝いてるみたいだよ?」


「そうか……? と言うかお前ら、邪魔だぞ。……なんなんだ? たいして興味もないくせに」



 ターク様の前に立ち、何やら色々話しかけて、彼の歩みを妨害しているように見えるカミルさん達。



「ごめんごめん。あれみたら、ターク、ショック受けるんじゃないかと思って」


「は……?」



 四人が苦笑いしながら道を空けると、フィルマンさんの石像の周辺に、クラスタル城で戦った、私達皆の石像が点在しているのが見えた。


 フィルマンさんのとなりには、ふんぞり返って笑っている、ガルベルさんの石像が新設されている。肩には黒猫姿の、ライルもしっかり乗っていた。


 両手を高く掲げたマリルさんの像のとなりには、盾を突き出したエロイーズさんの石像が、マリルさんを守るように立てられていた。


 二人の信頼関係が伝わって来る、見事な配置だ。


 鉄壁を再現した石壁は、炎の燃え上がる様子まで、彫刻でよく再現されている。


 その周辺には、隕石を模した石のオブジェが沢山置かれていた。


 もう、石像というより、情景全てを表現しようとしているようだ。


 エロイーズさんが、大きな盾をガチャガチャいわせながら、瞳を輝かせ、興奮した様子で叫んでいる。



「あぁー! 何度見ても感動します! あの日、あんなに近くでマリル様のメテオが見られたことは、一生の思い出です! もう、いつ死んでも、悔いはありません!」


「エロイーズったら、大袈裟ですわ。だけど、もう一度聞いてあげてもよろしくてよ」



 マリルさんは得意げな顔でエロイーズさんに返事をしている。


 あの日の彼女の頑張りは、私も後世に語り継ぎたい。



 少し右手に目をやると、魔法で風を起こした瞬間なのか、おかっぱの前髪が上がり、イケメンな顔が露わになったコルニスさんの像が、カミルさんの像を抱えていた。


 コルニスさんの背中には、天使のような羽が生えている。


 これは彼が、城壁の上へジャンプしようとする瞬間を表現しているようだ。


 と言っても、イーヴさんはその場にいなかったので、全部聞いた話で想像して作ったらしい。


 二人の石像の前で、カミルさんは少し、納得がいかないという顔をしていた。



「なんか僕の石像パッとしないよね?」


「そんな事ないですよ? カミル隊長は、沢山のクラスタル国民を救いましたからね、かっこよかったです。自分は、惚れ直しました」


「うーん。でも、どうしてコルニスがメインみたいになってるの? 隊長は僕なのに」


「多分、イーヴ騎士団長の中で、カミル隊長を守ってる人が英雄だからですよ」


「なるほど。ちょっと納得」


「隊長の事は、これからも自分が守り続けます!」


「いいね。頼りにしてるよ、僕の英雄!」



 またさらっとプロポーズみたいなことを言っているコルニスさん。カミルさんに伝わっているのかは、微妙なところだけれど、二人は前より、随分仲がよさそうだ。



 さらに右手を見ると、そこには大きな口を開けて歌を歌う、私の石像が立っていた。左手はお腹に、右手は高く掲げてリズムをとっているように見える。


 その肩には楽しそうに両手を上げている、可愛いヤーゾルが乗っていた。


 私の石像の周辺には、大小のキノコのモニュメントが置かれており、子供達が登っては飛び降りて遊んでいる。


 キノコの笠の模様まで、細かく聞き込み調査をしたらしく、これはかなりの再現度だ。



 そして、ターク様の像は、非常にカッコ良く腰を落とし、両手で大剣を構えていた。


 だけど、その像は、巨大なキノコのモニュメントの上に立っていたのだ。


 しかも、彼の像だけが、全身金色に光り輝き、魔道具で盛大にライトアップされていたのだった。



「な、なんだこれは」


「すごい目立ち方ですね……」


「ターク! 金の像は気に入ったか?」



 唖然としながら金ピカの像を見上げたターク様の横に、得意げな顔で現れたイーヴさん。


 ファシリアさんは、青ざめたターク様を見て愉快そうに笑っている。


 ターク様は、「せめてキノコからおろしてください」と、懸命にイーヴさんにお願いしたのだった。



 王都の広場に新しく作られた石像を見に来た宮子達。皆の様子がおかしいと思ったら、そこにはちょっと目立ちすぎているターク様の金ピカの像が……笑 コルニスのプロポーズ、伝わってほしいですね。


 次回から3話連続で、ファトムとネドゥの番外編をお届けします。語りはネドゥになります。本編はその後まだもう少し続きます。


 次回、第二一章第五話 [番外編]ファトムとネドゥ1~熱くてイカツイ堅物~をお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[良い点] せめてキノコからおろしてください! 切実〜(´;ω;`)アイタタ みんなが世界の英雄になりましたね! 喜ばしいことです(*´Д`*)♡
[一言] おお! 英雄達の石像なのですね! これは凄いなぁჱ̒⸝⸝•̀֊•́⸝⸝) ぜひ!見たい!!!(大声)w まあ、俺が一番見たいのは…ヤーゾル……だやーw あと…作者様の石像⸜(〃 〃) ⸝ …
[良い点] ヤーゾルまで石像にされてて面白かったヤー。宮子の石像がキノコまみれで子供人気というのも面白かったですヤー。そして、カッコよくしようとしても、されようとしても、カッコ付かない主人公ターク様は…
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