04 キラキラのターク。~君、前より輝いてるよ~
場所:王都
語り:小鳥遊宮子
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収容所を後にした私達は、新しい石像が設置されたという、大聖堂前の広場に向かってたいた。
「石像はポルールのやつだけで十分なんだがな」
「ポルールの石像はちょっと、大きすぎますよね」
「イーヴ先生の指示であぁなったようだ」
「セヒマラ雪山にも作ると言ってましたよ」
「んん? あそこはクラスタルの領土なんだがな……。イーヴ先生の英雄好きにも困ったものだ。だが、王都の広場には、既に中央に巨大なフィルマン様の石像があるからな。そこまで悪目立ちすることはないだろう」
広場の入り口で馬車を降りると、そこにはマリルさんとカミルさんがいた。二人の背後には、エロイーズさんとコルニスさんも居る。
四人は私達を見るなり、何やら少し、慌てた様子で詰め寄って来た。
「ターク様、ごきげんよう」
「久々だね。不死身じゃなくなった気分はどう?」
「あぁ、まぁちょっと疲れやすくはなったな。だが、よく眠れるから、気分は悪くない」
「シュベールと契約したらしいじゃないか。浮気にはならなかったの?」
「ん? あぁ。したというより、一方的にされたんだがな……。ヒールは使えなくなってしまった。風の微精霊には嫌われたようだ」
「やっぱり、イーヴ先生のようにはいかないね」
「剣技は今まで通り発動できるんですのね?」
「そうだな」
「なんだか肌艶もいいね。不死身の時より輝いてるみたいだよ?」
「そうか……? と言うかお前ら、邪魔だぞ。……なんなんだ? たいして興味もないくせに」
ターク様の前に立ち、何やら色々話しかけて、彼の歩みを妨害しているように見えるカミルさん達。
「ごめんごめん。あれみたら、ターク、ショック受けるんじゃないかと思って」
「は……?」
四人が苦笑いしながら道を空けると、フィルマンさんの石像の周辺に、クラスタル城で戦った、私達皆の石像が点在しているのが見えた。
フィルマンさんのとなりには、ふんぞり返って笑っている、ガルベルさんの石像が新設されている。肩には黒猫姿の、ライルもしっかり乗っていた。
両手を高く掲げたマリルさんの像のとなりには、盾を突き出したエロイーズさんの石像が、マリルさんを守るように立てられていた。
二人の信頼関係が伝わって来る、見事な配置だ。
鉄壁を再現した石壁は、炎の燃え上がる様子まで、彫刻でよく再現されている。
その周辺には、隕石を模した石のオブジェが沢山置かれていた。
もう、石像というより、情景全てを表現しようとしているようだ。
エロイーズさんが、大きな盾をガチャガチャいわせながら、瞳を輝かせ、興奮した様子で叫んでいる。
「あぁー! 何度見ても感動します! あの日、あんなに近くでマリル様のメテオが見られたことは、一生の思い出です! もう、いつ死んでも、悔いはありません!」
「エロイーズったら、大袈裟ですわ。だけど、もう一度聞いてあげてもよろしくてよ」
マリルさんは得意げな顔でエロイーズさんに返事をしている。
あの日の彼女の頑張りは、私も後世に語り継ぎたい。
少し右手に目をやると、魔法で風を起こした瞬間なのか、おかっぱの前髪が上がり、イケメンな顔が露わになったコルニスさんの像が、カミルさんの像を抱えていた。
コルニスさんの背中には、天使のような羽が生えている。
これは彼が、城壁の上へジャンプしようとする瞬間を表現しているようだ。
と言っても、イーヴさんはその場にいなかったので、全部聞いた話で想像して作ったらしい。
二人の石像の前で、カミルさんは少し、納得がいかないという顔をしていた。
「なんか僕の石像パッとしないよね?」
「そんな事ないですよ? カミル隊長は、沢山のクラスタル国民を救いましたからね、かっこよかったです。自分は、惚れ直しました」
「うーん。でも、どうしてコルニスがメインみたいになってるの? 隊長は僕なのに」
「多分、イーヴ騎士団長の中で、カミル隊長を守ってる人が英雄だからですよ」
「なるほど。ちょっと納得」
「隊長の事は、これからも自分が守り続けます!」
「いいね。頼りにしてるよ、僕の英雄!」
またさらっとプロポーズみたいなことを言っているコルニスさん。カミルさんに伝わっているのかは、微妙なところだけれど、二人は前より、随分仲がよさそうだ。
さらに右手を見ると、そこには大きな口を開けて歌を歌う、私の石像が立っていた。左手はお腹に、右手は高く掲げてリズムをとっているように見える。
その肩には楽しそうに両手を上げている、可愛いヤーゾルが乗っていた。
私の石像の周辺には、大小のキノコのモニュメントが置かれており、子供達が登っては飛び降りて遊んでいる。
キノコの笠の模様まで、細かく聞き込み調査をしたらしく、これはかなりの再現度だ。
そして、ターク様の像は、非常にカッコ良く腰を落とし、両手で大剣を構えていた。
だけど、その像は、巨大なキノコのモニュメントの上に立っていたのだ。
しかも、彼の像だけが、全身金色に光り輝き、魔道具で盛大にライトアップされていたのだった。
「な、なんだこれは」
「すごい目立ち方ですね……」
「ターク! 金の像は気に入ったか?」
唖然としながら金ピカの像を見上げたターク様の横に、得意げな顔で現れたイーヴさん。
ファシリアさんは、青ざめたターク様を見て愉快そうに笑っている。
ターク様は、「せめてキノコからおろしてください」と、懸命にイーヴさんにお願いしたのだった。
王都の広場に新しく作られた石像を見に来た宮子達。皆の様子がおかしいと思ったら、そこにはちょっと目立ちすぎているターク様の金ピカの像が……笑 コルニスのプロポーズ、伝わってほしいですね。
次回から3話連続で、ファトムとネドゥの番外編をお届けします。語りはネドゥになります。本編はその後まだもう少し続きます。
次回、第二一章第五話 [番外編]ファトムとネドゥ1~熱くてイカツイ堅物~をお楽しみに!




