表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第18章 新たな大願

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

212/247

09 小池を目指して2~取り残された歌姫~

 場所:ルカラの森

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 ルカラの森を、北の小池を目指して進む私達。


 魔物や氷のツタに邪魔され、思うように進めないでいると、次第に辺りに、霧が立ち込めはじめた。



「方向が分からなくなりそうですわ。コルニスさん、小池は確かにあっちなんですの?」


「もうすぐのはずですけど、馬が嫌がって北に行こうとしないですね」


「さっきから何か、妙な気配がするもんね」



 馬車を引いていたニ頭の馬が、何かに怯えるように動かなくなってしまい、私達は霧の中で立ち往生していた。


 馬の周りに集まった私達。皆で顔を見合わせていると、カミルさんがキリリとして言った。



「じゃぁ、僕が偵察に行くよ」


「え? 待ってください、隊長! 自分もいきますから!」



「すぐ戻るから、馬車の見張りよろしく!」と言い残し、走り出したカミルさんを追いかけて、コルニスさんも走り出す。


 二人はあっという間に霧に紛れ、姿が見えなくなってしまった。



「大丈夫かしら」



 マリルさんがそうつぶやいた次の瞬間、空気を切り裂くような鋭い音がして、馬車の後方から、大量の氷塊が飛んできた。


 先がケンケンに尖っていて、当たったらただじゃ済まないやつだ。


 さっきまでとはレベルの違う攻撃に、息を呑んで立ちすくむ私。


 だけど、「シャイニングシールド!」と、叫んだエロイーズさんの盾から、大きな光のシールドが出現し、飛んできた氷塊を見事に防いだ。



 ――やっぱり、カッコいいー!



 私が目をハートにしてエロイーズさんを眺めていると、また同じ方向から、氷塊が飛んできた。



「さっきから、いったい誰ですの!? 私の炎の恐ろしさを思い知らせて差し上げますわ! いくわよ、エロイーズ」


「はい! マリル様!」


「ミヤコさん、ミレーヌさん。馬車は頼みましたわよ!」


「「え!? あ、はい!」」



 見えない相手からのしつこい攻撃に腹が立ってしまったのか、マリルさんはぷりぷりしながら、エロイーズさんを連れ、カミルさん達とは反対の方向へ行ってしまった。


 二人で取り残され、ミレーヌと顔を見合わせる。ミレーヌは強いけど、こんな霧の中ではやっぱり不安だ。



「ま、魔物がきたら、どうしよう!」


「大丈夫よ、ミヤコ! 私が追い返してあげるから!」


「でも、周りがますます真っ白だよ、ミレーヌ……」


「落ちつくのよ。大丈夫、私、中級の魔法もいくつか使えるから……」



 すっかり怯えてしまった私を励まそうと、私の肩に手をかけようとしたミレーヌが、「きゃぁ!」と叫び声をあげ、霧の中に消えていく。


 それは本当に、一瞬の出来事だった。



「ミレーヌ!? どこいったの!? 大丈夫?」



 気がつくと、氷の檻ようなこの場所に、馬車と私だけが取り残されていた。


 どこかから魔物の、低い唸り声が響いている。


 足がガタガタと震えはじめて、私はその場にしゃがみ込んだ。



 ――いやだ。今の何!? すごく怖い!


 ――だけど、私がなんとか馬車を守らないと、この中には皆んなの大切な荷物が……。



 焦りつつも、とりあえず、自分と馬車の周りを豆のツルで囲むことにした私。


 本当は腰が抜けてしまいそうだったけれど、馬車をつかんでなんとか立ち上がった。


 静かで真っ白な森の中、たった一人、上擦った声で、「心の種」の歌を歌う。



「なんだか 辛く 苦しくて……


 叫び出したい そんな時……」


 ――あわぁ、寂しい!



 少し勢い不足ながらも、ヒョロヒョロと豆が生えはじめ、ホッとして顔をあげると、十メートル程先の霧の中に、大きな何かが、動いているのが見えた。



 ――あわわ。何かいる! 大きい! どうしよう! う、歌わなきゃ!


「なんだかっ。なんだか 辛くてぇっ苦しっく……あわぁぁ!」



 私が焦りに変な声をあげると、霧の中の何かがピクッと反応した。


 ズシン、ズシンと音を立てながら、ゆっくりとこちらに向かって歩き、だんだんとその姿が明らかになってくる。



 ――ひぁぁ! 歌ったせいで気付かれた!?



 筋肉質で巨大な体はくすんだ黄色。頭には貧相な苔色の髪と一本のツノ。


 これは間違いなく、図鑑で見た、オーガだ。


 オーガは私と目が合うと、大きな舌でベロっと口の周りを舐めまわし、嬉しそうにニヤニヤと笑った。


 豆で足止め出来ればと思ったけれど、口がもつれて歌えない。



 ――ダメだっ。一人じゃ怖すぎるよ!



 ポルールで私を守ってくれた、ターク様やエロイーズさんの姿が脳裏に浮かび、青薔薇の歌姫は、周りの人に守られていてこそだったということに、改めて気づく。


 声を出すことも出来ないまま立ちすくみ、口をぱくぱくさせるばかりの私に、オーガはゆっくりと、冷やかすように近づいてきた。



 森の中で馬が動かなくなり、立ち往生する「大願を叶え隊」。二人、また二人とその場を離れてしまい、気が付くと一人ぼっちになってしまった宮子にオーガが狙いを定めます。


 次回、第十八章第十話 凍りついた小池と闇の騎士。~君がいる、世界を守る~をお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[良い点] 実はとんでもなく優しいオーガでありますように! と祈るばかりです(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) みんな散り散りにされ、嫌な予感はしますけれど……(;_;) 頑張れ宮子ー!
[一言] うわぁ! とうとう一人になってしまったみやこ! どうするんだーーーー(A;´・ω・)アセアセ 俺がいこうか!?w 続き楽しみにしております⸜(* ॑ ॑* )⸝
[良い点] みんながものの見事に陽動に引っかかっていく単細胞ぶりが素敵です。謀に弱い面子ですねぇ。そこが平時は可愛いのですがシリアスな戦闘場面、守られる宮子にとっては致命的で、視点人物をダレにするかの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ