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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第18章 新たな大願

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05 大願を叶え隊。~集結した六人の魔道士~

 場所:ポルール

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 ――ターク様、行っちゃった……。



 突然、ガルベルさんに抱えられ、飛び去ってしまったターク様の消えた方向を、私、小鳥遊宮子は、ポカンとして眺めていた。



「だ、大丈夫だ。ミヤコ君。ガルベル様だけでは少し不安だが、フィルマン様が一緒なんだからな。何も問題は起きないはずだ」


「は、はい……」



 私の不安げな顔を見て、緑の風を纏いながら、私のとなりに降り立ったイーヴさん。私を安心させようと、声をかけてくれている。


 だけど、フィルマンさんは、ターク様のお屋敷を破壊しながら、キノコを届けに来たお爺ちゃんだ。何も問題が起きないなんて、とても考えにくかった。



 ――むしろ、余計だめなんじゃ……?


 ――まさか、本格的な戦争が始まるなんてことは……無いよね……?



 水の国と呼ばれるベルガノンは、大陸の南に突き出した半島のような形をしている。


 そして、北西にはクラスタル、北東にはオトラーと、大きな二つの国と隣接しており、度々侵略戦争を仕掛けられてきた。


 それでも懸命に応戦し、なんとか持ち堪えてきたのがベルガノンだ。


 かなり不安ではあるけれど、その戦いに毎度大いに貢献してきた二人が向かったのだから、信じて待つしか無いだろう。



 ――ターク様が戻るまで、精霊さん達の話を聞いてみたいな。


 ――何か役に立つ情報が聞けるかも知れないし、達也の居場所もわかるかも知れないわ。


 ――アクレアさんやゾルドレさんに会えないかな?



 そう思った私だけれど、ルカラの平原や湖には、それなりに魔物が出るらしい。


 巨大な魔獣とかではなく、街から出ればどこにでもいるような魔物だけれど、泥団子しか飛ばせない私には、やはり危険だ。


 私は仕方なく、研究室の方へ引き返した。



      △



 坑道の入り口に戻ってみると、兵士達による厳戒態勢が強化されていた。ネドゥが入ったカプセルや、精霊狩り達の檻が、坑道から運び出されようとしているところだ。


 慌ただしく駆け回る兵士たちの様子を、興味深そうに眺めているマリルさん。彼女の側にはエロイーズさんが、キリリとした顔つきで立っている。


 マリルさんは真っ赤なドレスの上に、暖かそうなモコモコのケープを羽織っている。こんな寒い街の人混みの中にいても、本当に華やかだ。


 ポルールで一緒に戦った頃に比べると少し背が伸びたのか、前よりどことなく、大人っぽくなった気がする。


 レムスルドラでは大活躍だったと、ターク様が言っていた。彼女は今も、英雄の誇りにかけ、努力を惜しまず頑張っているようだ。


 私が彼女の立ち姿の、華やかさと凛々しさに見惚れていると、彼女はポツリと口を開いた。



「ミヤコさん。ターク様、連れていかれてしまいましたわね」


「そ、そうなんです。ターク様は、精霊狩り達を捕まえて、ファトムさんのために、セリスさんを見つけてあげたかったみたいなんですけど……。なんだか急に、それどころじゃなくなってしまいました……」



 ターク様がガルベルさんに連れ去られる様子を、見ていたらしいマリルさん。


 私がぽろりと愚痴をこぼすと、彼女は少し眉尻を下げて言った。



「あいかわらず、ターク様はおやさしいですわね。いつだって誰かのために行動して。ご自分のことは、二の次ですわ」


「本当に……」



 私達がそんな話をしていると、坑道から運び出されたファトムさんの入った檻が、マリルさんの横を通った。


 ファトムさんは運ばれながら、「そ、そこの赤いお嬢さん!」と、マリルさんに向かって叫んでいる。


 シワシワになった顔を、鉄格子に擦り付け、涙を流している彼。マリルさんが少しポカンとしながらファトムさんに目をやると、彼は必死に声を上げた。



「お嬢さん! あなたの燃え上がる鉄壁、レムスルドラで見て、感動しましたぁ! 私の投げ出した炎から街を救ったあなたの姿は、本当に清らかで、正しく、美しかった! あなたは私の英雄です! お願いだぁ! 氷の精霊セリスを、助けてくださーい!」



「お願いだぁー! お嬢さぁーん」と叫ぶファトムさんの声を残し、檻は兵士達に運ばれ、ゲートを越えていく。



「まぁ……。悪い気はしませんわね」



 マリルさんは小さな声でそう言うと、くるっと私に向き直った。両手で私の手を取り、可愛らしい顔で真剣な表情を作る。



「ミヤコさん、さっきのお話、よろしくてよ。ターク様の大願、今回もわたくし達で、叶えて差し上げましょう」


「え?」


「精霊狩りを捕まえて、セリスを助ける……そうですわよね?」



 彼女の綺麗な薄灰色の瞳に、決意がみなぎっているのを感じる。風に吹かれて揺れる赤いツインテールが、まるで燃えているようだった。


 だけど、突然の申し出に、少し戸惑ってしまった私。


 マリルさんの協力はもちろん嬉しい。だけど、何もできない私が、そんな大それたことに手を出していいのだろうか。


 精霊狩りも然ることながら、セリスさんを買ったコレクターは、何だか恐ろしい人のようだ。



「あの、嬉しいんですけど私、もう、魔力の回復とかできなくて……。あまり、マリルさんのお役に立てないんですけど……」



 困った顔でそう言った私に、マリルさんはグイッと迫ってきた。その隣から、エロイーズさんも、やる気にあふれた瞳で迫って来る。



「ミヤコさん。大切なのは、叶えたいと願う、気持ちですわ!」


「マリル様の言う通りです! お二人の護衛は私にお任せください!」


「は、はいっ!」



 マリルさんとエロイーズさんの勢いに押され、私は思わず大きな声で返事をしてしまった。


 その瞬間、誰かが突然、後ろから私の肩に抱きついてきた。おどろいて振り返ると、それはなんとカミルさんだった。


 そのとなりにはコルニスさんと、ミレーヌも立っている。



「わー! 面白そう。僕も行くよ。監視する予定だった人、連れ去られちゃったしね」


「カミル隊長が行くなら、自分もついていきます!」


「私も行きます!」


「え? ミレーヌまで?」


「えぇ。ミヤコについて行けば、タツヤさんに会える気がするんです」


「ふふ。決まりですわね」



 皆がどんどん参加を表明し、わいわいと人数が増えていく。



「まぁアジトも分かってることだし、まずは精霊狩りを捕まえよう! そうすれば今度こそ、セリスの居場所を聞き出せるかもしれないよ」



 突然現れた割には、しっかりと状況がつかめている様子のカミルさん。



 ――このメンバーなら本当に、精霊狩りをやっつけられたりして……?


 ――何より、治癒魔法使える人が、二人もいるのは安心!



 私が瞳を輝かせると、マリルさんがキリリとした顔で叫んだ。



「わたくし達のパーティー名は、大願を叶え隊ですわ!」



 ――ダ、ダサい!



 こうして、女子五名にコルニスさんを合わせた合計六名で、私達はクラスタルの南西の村、グラスを目指すこととなった。



 ターク様の願いを知り、精霊狩り退治に行こうと言い出したマリル。その場で突然結成された「大願を叶え隊」は、精霊狩りのアジトがあるというクラスタルの小さな村、グラスを目指します。


次回、第十八章第六話 エディアって何者?~プクプク可愛いアクレアさん~をお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ひぃー最後にダサイと言われてしまいましたね_:(´ཀ`」 ∠):おいたわしや……。 久しぶりの女の子パーティーですね! マリルさんはどんどんカッコよくなっていきますし、エロイーズさんは鼻高…
[一言] ガルベル様に連れていかれたのはターク様だったか!でもみやこはマリル様たちと「大願を叶え隊」を結成されたようで笑 続き楽しみますね*˙︶˙*)ノ
[良い点] だ、ださい(笑)でもとても面白い展開でした。若い人たちみんなでわいわいやる感じが微笑ましくて良かったです。ファトムからの懇願もまさかでしたね。そう繋がるとは(笑) [一言] ガルベル様とフ…
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