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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第17章 闇に浸されて

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13 春の歌。~お客様は大切に!~

 場所:モルン山

 語り:小鳥遊宮子

 *************



「でい?……もしかして、シュベールは、持て余した力をお前に投げ出したのか? でい?」


「え、そう……なのか……?」



 カーラムさんの発言で、なんだか微妙な空気になった私達。


 私は話を逸らそうと、慌てて口を開いた。



「も、もしかして、カーラムさんは、闇の大精霊のノーラを探してたんですか?」


「でい? 違うんだでい。オラっちが探してるのは白の大精霊エディアなんだでい」



 十二年程前に、白の大精霊が投げ出した力を、受け取ったと言うカーラムさん。それまで殆ど微精霊に近い存在だった彼は、その力で随分大きくなったらしい。



「でーい! 大きくなったのはいいんだでい! だけど、十二年経ってもオラっち、この力にはまいってるんだでい。こうやって、ずっとバチバチしてねぇと、すぐに力が溜まりすぎてバッチバチだでい! そうなったら、山も街も、燃えっちまうんだでい」


「わぁ、大変なんですね」


「豆女、エディアを見かけたら、カーラムが探してるって伝えて欲しいんだでい」


「エディアさんには、残念ながら、会ったことがないんです。どんな精霊さんなんですか?」


「でいでい! オラっちには分からないんだでい! でも、魔力を全部投げ出したって話しだから、どっかで干っからびて、闇のモヤを放ってるんじゃないかと思ってるんだでい!」


「なるほど。もし、見かけたら伝えておきます」



 私がそう言うと、カーラムさんは、ニコニコしながら私を見上げた。



「でいでーい! 豆女! 意外といいやつなんだでい! 豆にはおどろいたが、歌は最高だったんだでい! あっちにみんな集まってるから、聞かせてやってほしいんだでい!」


「わぁ、ぜひ、歌わせてください」


「もしかして、精霊の集会所があるのか?」



 私達は、カーラムさんについて、精霊達が集まるという、広場を目指した。



      △



 しばらく歩くと現れたその場所は、小さな川が流れ、木漏れ日の差し込む、素敵な場所だった。


 二・三人の精霊達が、私達を遠巻きに見ている。アーシラの森の精霊の集会所みたいに、沢山の精霊がいるのかと思っていたけれど、意外と閑散としているようだ。



 ――まぁ、歌を聞いてくれるお客様は、少なくても大事にしなくちゃね。



 そんなことを思いながら広場に入ると、カーラムさんは大きな声で、私を精霊達に紹介しはじめた。



「でいでーい! みんな聞くんだでい! 歌が上手な豆女を連れてきたんだでい!」


「おい、カーラム。さっきから……ミヤコは豆女なんかじゃない。青薔薇の歌姫だぞ」


「でい? そんなの聞いたことないんだでい。どこが青薔薇だでい? 真っ黒なんだでい!」


「タ、ターク様。私、豆女で大丈夫です。むしろ、しっくりきます」


「はぁ?」



 なんだかとても不満そうなターク様。だけど、今の私に、その呼び名は荷が重すぎる。


 とにかく、今は歌いたい。この憂鬱な闇を吹き飛ばしてくれる、素敵な歌を!



「好きな歌、歌ってみていいですか?」


「あぁ。好きにしろ。何が起きても、責任は私が取る」



 ――え、そんな大袈裟な感じなんですか!?


 ――多分地味ですよ。



 そう思いながらも、私は、広場の真ん中まで進み出た。歌うのは、心が明るくなりそうな、春の歌がいい。


 中学生の頃から憧れていた、日本で大人気の、シンガーソングライターが歌っていた歌だ。



 ――携帯で何度も聞き込んで、シャワーを浴びながら、大熱唱したっけ。


 ――翌日、達也に「外まで聞こえてたよ」って言われて、すごく恥ずかしかったなぁ。



 そんなことを思いながら、私は大きな口を開け、その歌を歌った。



「フラワー 咲き乱れて 春


 やさしい光 頬照らす~


 素直な気持ちで 一歩踏み出そう


 あなたの 元へ~♪」



 私が歌いはじめると、遠巻きに見ていた精霊達が、フワフワと私の周りに集まりはじめた。二・三人だと思っていたけれど、姿を消していたのか、実はもっと居たらしく、どんどん人数が増えてくる。


 まだまだ寒い日が続く中、かなり気が早い春の歌だけど、精霊達は瞳を輝かせて聞き入ってくれていた。



「どんなに辛くても 一人じゃないから


 もらった力 やさしさに変えて


 笑顔の花咲かせよう~♪」



 歌い終わった頃には、なんと、二十人近い精霊達が、私の周りに集まっていた。



「なんて美しい声なの? 闇魔道士かと思ってだけど、本当に歌姫なのね!」


「素敵な歌をありがとう!」



 口々にそんなことを言いながら、拍手をしてくれる精霊達。魔法は何も起こらなかったけれど、これだけ喜んで貰えれば大満足だ。


 歌ったことで気分が紛れたのか、暗かった気持ちも随分すっきりしていた。



 ――ターク様は気に入ってくれたかな?



 ターク様を探して振り返ると、彼は私に顔を見せないまま抱きついて来た。



「やっぱり、お前の歌は最高だな」



 そう言った彼の身体が、真っ白になるくらい輝いている。あまりに明るくて、しっかり目を閉じても眩しいくらいだ。



「す、すごい輝きですね。ターク様……」


「あぁ。やるぞ」



 ターク様に顎をつつかれ、口を開けると、彼の光が流れ込んできた。眩しくて何も見えないし、ゾクゾクし過ぎて、とても立っていられない。



 ――ひぁ。激し……。



「でいでい! お前たち、いちゃつきすぎなんだでい!」


「きゃ。なんなの? 眩しくて、熱いわ」



 精霊達に見守られながら、私はすっかり、浄化されたのだった。



 カーラムに頼まれ、精霊の集会所で春の歌を歌った宮子。最初は少ないと思った精霊達でしたが、彼女の歌を聞きにたくさんの精霊が集まってくれました。おかげでターク様の光が強くなり、すっかり浄化された宮子でした。


 次回、第十七章第十四話 豆女はないだろ。~青いドレスと秘宝のダー君~をお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴチソウサマデシタ(●´ω`●)んふふ 読者にのっての、スペシャルサービス回だったでいっ♡
[一言] おお! ようやく、みやこは浄化されましたね! 良かったです(*๓´˘`๓) 花車様も今日もごゆるりとお過ごしくださいませ!
[良い点] 宮子、浄化、おめでとうございます。そして豆女。本当にしっくり来ますね。青薔薇のほうが確かに違和感あったかもです。歌を聞いてハイテンションになってしまった、ターク様も面白かったです。 [一言…
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