表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第17章 闇に浸されて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

199/247

10 我儘な願い。~優しくされると辛いです~

 場所:フィルマンの屋敷

 語り:小鳥遊宮子

 *************



 ――百年変わらず、ターク様と一緒に居られるなら、私も白の大精霊に会ってみたいな!



 この世界の人達とも、日本に住む人達とも、全く違う時間を生きる。


 そんな、簡単には考えられないような、突拍子もない願いが、突然自分の中に巻き起こった。


 願いは願いであるけれども、真剣に考えようとすると、やっぱり頭がクラクラする。



 ――ターク様はいつも、こんな気持ちなのかな?



 私がそんなことを考えていると、ターク様が、思い出したように顔を上げた。



「そう言えば、火の精霊ファトムが言ってました。白の大精霊が、力を投げ出したとかって……」


「そうらしいのぉ」


 ――えー! 投げ出しちゃったの? 残念!



 白の大精霊に会えたからと言って、そんなすごい力をぽんぽんもらえるわけもないけれど、勝手に色々妄想し、期待した私は、無駄にガッカリしてしまった。


 闇に堕ちた私には、分別というものがないらしい。



「フィルマン様は、誰からその話を聞いたんですか?」


「うーん。あれはもう十何年も前の話だがの。たまたま出会ったモルン山の精霊が、そんなようなことを言っておった。受け取った力が強大すぎて大変だ~とかなんとかの」


「ファトムもそんなことを言ってましたね」


「そのせいか、この辺りは、よく雷がおちるんじゃ」



 フィルマンさんの話を聞いて、ふーむと考えこんだターク様。白の大精霊は、自分の持っていた全属性の力を、方々の精霊達に投げ渡してしまったらしい。


 身に余る力というのは、本当に扱いに困るものだ。


 緑のあご髭をいじりながら、色々な話を聞かせてくれたフィルマンさんは、もう昼も近づいてきたという頃、すっかり満足した様子で、よいしょと立ち上がった。


 身長が三メートルもあるフィルマンさんが、室内で立ち上がると、いくら部屋が大きいと言っても、それはもうすごい迫力だ。


 お付きの人たちも慌てたように距離をとり、私はターク様に抱えられて後ろに下がった。



「さて、ガルベルに頼まれた用事をすまそうかの。しかし、あのゼーニジリアスが、ニジルド殿下だったなんてのぅ。殿下が小さい頃何度か会ったが、さっぱり気がつかんかったのぉ」


「僕もニジルド殿下の話は聞いてましたが、まさかでした」


「気が小さくて、物陰から出てこんようなやつじゃったでの。納得と言えば納得じゃ。しかし、流石にこっちで勝手に処罰して済む問題でもないのぉ」


「ノーデス王がどういうおつもりなのか、確認する必要がありますね」


「ノーデス王はベルガノンに友好的で、気のいい王じゃ。わしは何度も会食したことがあるがの。弟君の暴走には、気付いておらん可能性が高いじゃろうな」


「そうなんですかね」


「まぁ、この件はわしらに任せて、お前たちはここでゆっくりしておれ。まだまだミヤコと話したいでの。勝手に帰るんじゃないぞ」



 フィルマンさんはそう言うと、ズシンズシンと部屋を揺らして出ていった。



      △



「また目が覚めてしまったな」



 ターク様は客室に戻ると、大きなソファーに寝そべり、肘掛けに頭を乗せた。彼がこんなダラっとした姿勢を取るのは、疲れている時でも珍しい。自分の周りに飛び交う光が眩しいのか、払うように手を振っている。



「大丈夫ですか? ターク様」


「お前こそ、平気なのか?」


「私は、秘宝があれば平気みたいです」



 そう答えたものの、実のところ私は、まだまだ闇に侵されていた。


 昨晩に比べれば、かなり浄化されてはいるけれど、腰にぶら下げた精霊の秘宝が、私から出る闇のモヤを、シュウシュウと吸い込んでいるのを感じる。


 だけど秘宝は、あくまでも外に出たモヤを吸っているだけに思える。


 根本からこれを治すには、もう少し、ターク様の治療が必要なようだった。



「危うくお前を治す前に、連れて行かれてしまうところだった」


「ごめんなさい。ガルベルさんに無理ばかり言われるの、私のせいですよね」


「いや、あの人は元々あんな感じだ。お前が気にすることじゃない」


「だけど……」


「いいから、こっちへきて」



 ターク様はそう言うと、私の手を引き、ヒョイっと自分の上に乗せてしまった。


 体がピッタリくっついて、癒しの光に包まれる。


 彼の金色に光る長い指が、私の髪をなでていた。



 ――迷惑しかかけてないはずなのに、ターク様はどうして、変わらないんだろう。


 ――もう御恩も返しきれないし、我儘な望みばかり膨れ上がるし、どうしていいか分からない。


 ――ターク様がやさしすぎて、つらいわ……。



 彼にやさしく触れられるたび、モヤモヤしてしまう私の心。


 彼がお休みで、傍にいてくれるのが嬉しいのに、どうしても素直に笑顔が作れなかった。



 白の大精霊が既に力を失っていることを知り、ショックを受ける宮子。闇に堕ちた彼女には、「ああしたい、こうしたい」と、とりとめのない願望が沸き起こってくるようです。 


 次回、第十七章第十一話 こぼれ落ちる想い。~本当に贅沢だな~をお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[良い点] ひやあああああああー宮子おおおおおおー! ダメだよもっと甘えないと!(誰) せっかくいいくっつきかたしてるのにっ! 読者はそろそろ甘々成分が必要です。 エンプティマークが点滅し始めました。…
[一言] みやこは闇に落ちてるからあーして欲しいこーして欲しいって、なってるんですね! 俺も花車様の作品が読みたいもっと色々話したいとかってコメントしてるのは闇堕ちしてるからなのか(―''"―;) い…
[良い点] ここに来て随分と良い雰囲気でした。そして、ゼーニジリアスの処分や白の大精霊の近況などとても興味深かったです。自然とサクサク読めました。 [一言] 宮子の呪いはとてもしぶといですね。つくづく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ