表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第17章 闇に浸されて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

198/247

09 フィルマンさんの武勇伝。~話半分に聞けよ~

 場所:フィルマンの屋敷

 語り:小鳥遊宮子

 *************



「がっはっは! ターク、もっとしっかりたべれ!」



 ガルベルさん達が飛び去った後、私とターク様はそのまま、フィルマンさんが用意してくれた食事をいただいていた。


 あれからもう、三時間は経つだろうか。ターク様は、すっかり表情を無くした顔で、ずっときのこをもぐもぐしている。


 早く眠らせてあげたいけれど、フィルマンさんは、胃袋に底がないらしい。お付きの人たちがせっせと運んでくる料理を、次々に平らげながらずっと楽しそうに話しをしていた。


 ターク様はもう、それを遮る元気もないようだ。


 だけど、フィルマンさんのお話は、やっぱりとても興味深かった。


 ターク様の子供の頃の話はもちろん、この国の歴史や、煌びやかな貴族達の話、森の不思議な植物の話に、イーヴさんの恋愛遍歴まで、他では聞けないような話ばかりだ。


 眠いのも忘れ、懸命に話に聞き入っては、大きめの相槌を打つ私を、フィルマンさんはとても気に入ってくれているようだった。



「わぁ?! そんなにすごかったんですか?」


「そうじゃよ? わし、一人で半分はやっつけたんじゃないかのぉ」



 フィルマンさんが今話してくれているのは、三十三年前、東の帝国オトラーが、ベルガノンに攻め入ってきた時、それを阻止し、敵軍を壊滅させたと言う、彼の武勇伝だ。


 銀色の大剣を振り回して戦った彼は、実は私と同じ、土属性の魔法を使うらしい。


 ポルールで戦う彼を見た時、ズシーン、ズシーンと大地が大きく揺れているように感じたのは、土属性魔法が発動していたようだ。



「わぁ、フィルマンさんって、地震が起こせるんですか?」


「そうじゃよ。わしの地震魔法グランアースはのぉ、本気を出せば半径千メートルは誰も立っておれんわ!」


「千メートル!?」


「それに、でっかい岩も投げ飛ばせるでのぉ、あの時はそれで、敵の基地をぶっ壊してやったんじゃ。まぁ、大体重さ千トンの岩を千個は落としてやったのぉ」


「千トン!? すごいです! フィルマンさん!」


「がっはっは! わしの手にかかれば、オトラーなんぞ、虫ケラ同然じゃ!」


 大きな口を開け、フィルマンさんが豪快に笑うと、耳に手で蓋をしたくなるくらいの大音量だ。


 六十歳をすぎてもこれだけのパワーがあるのだから、きっと若い頃は、もっとすごかったに違いない。


 私がものすごく感心していると、ターク様が耳元で「話半分に聞けよ」と囁いた。どうやらフィルマンさんの話には、少なからず、誇張があるようだ。


 それでも、楽しそうに話すフィルマンさんを見ていると、聞いている私も、一緒に冒険しているみたいにワクワクした。




「そう言えばオトラーでは、ガルベルさんも、すごく活躍されたんですよね?」



 歴史の本で、オトラーでのガルベルさんの活躍を知っていた私。ほんの数日とは言え、彼女の弟子になった今、彼女の輝かしい功績は、なんだか少し誇らしく感じた。



「あーそうじゃの。あの頃のガルベルは闇魔法しか使えんかったが、千人の弟子を連れておっての。なかなかに恐ろしかったのぉ」


「わぁ、若いうちから、そんなにお弟子さんがいたんですね。びっくりです。だけどガルベルさんって、どうして急に、全属性の魔法が使えるようになったんですか?」


「あれはなぁ。全属性の力を持つ、白の大精霊エディアの祝福じゃよ。ガルベルは訪ねてきたエディアに願いを聞かれて、美貌をねだったんじゃ。そしたらの、百年若さを保てるだけの、祝福をくれたんじゃと」


 フィルマンさんが言うには、ガルベルさんはオトラーとの戦いの後、全属性の力を持った精霊に出会い、祝福と呼ばれる力をもらったらしい。


 大精霊に祝福をもらうと、自分を愛していない微精霊達でも、大精霊の権限で従わせることができると言う。


 百年分もらったという祝福を消費すれば、強大な魔法を発動できるというガルベルさん。だけど、美貌をできるだけ長く維持したい彼女は、強い魔法を使いたがらず、その力を温存しているらしい。



「あ、これナイショじゃった。しまったしまった」



 フィルマンさんはひとしきり喋った後、そんなことを言いながら口を手で押さえた。



「こわいこわい。余計なことを言うと殺されるわい。あやつが祝福を使うと、尋常じゃないでの」



 眉根を寄せて身震いするフィルマンさん。こんな大きな人が、ブルブル震えてしまうほど、本気を出したガルベルさんは怖いようだ。


 そういえば、私がメルローズに降らせた電撃剣を防いでくれた彼女のシールドは、祝福の力によるものだったのかもしれない。



 ――ガルベルさん、温存していた大切な力を使って、メルローズの街を助けてくれたんですね。なんだかんだでやさしいわ。


 ――それにしても、なんだかすごいこと聞いちゃった……。


 ――百年変わらず、ターク様と一緒に居られるなら、私も白の大精霊に会ってみたいな!



 もし、私に、ターク様と同じだけの寿命があれば……。ついついそんなことを考えた私。


 果てしなく続く時間を思うと目眩がしそうだけれど、ターク様を置いて先に死んでしまうよりはずっといい、そんな気がした。



睡眠不足のまま、フィルマンさんの終わらない昔話に付き合わされる宮子とターク様。宮子は楽しいようですが、ターク様はそろそろ限界です。


ガルベルの秘密を知った宮子は、彼女に感謝するとともに、自分も今のまま長生き出来たらと願うのでした。


次回、第十七章第十話 我儘な願い。~優しくされると辛いです~をお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~





カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[良い点] 変わらぬ姿でターク様と一緒にいられたら、これ以上幸せなことはないですよね。 ターク様だって、そのほうがきっと幸せ。 展開楽しみにしています!
[一言] 花車様おはようございます! みやこはフィルマン様の話本当に楽しそうに聞いてましたね! まあターク様のツッコミがありますが笑 でもみやこもこんな話を聞かされたら楽しくなりますものね! そしてガ…
[良い点] 少し素に戻っている宮子を見て少し安心しました。フィルマン様の法螺なんだかほんとなんだか分からない話がとても面白かったです。ガルベル様の秘密も凄いんだけれどしょうもなくて笑えました。 [一言…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ